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(‥そう、良かった。タカミザワって奴、命は助かったんだね)
「‥‥あぁ。腕のいい医者達がなんとか治してくれたから命は助かったけど‥」
「タカミザワが言うにはもう、翼は生えて来ないし、元には戻らないらしい」
(そっか‥)
あれから六日が過ぎ、手術をした次の日には目を覚ましたタカミザワではあったが殆ど動けない状態だった。ハセガワとタダスケの力をしてもやはり完全には治らなかったらしい。
俺とサクライが交代でタカミザワの面倒を見ていたけど、町のみんなが彼を心配してずっと傍にいてくれていた様子。
勿論タクローさんやセキグチさんにコウセツさんとか、他にもこの町のみんながタカミザワの所へとお見舞いに来てくれていたのだった。
しかしタカミザワは俺らが少し居なくなるだけで動かない体を無理やり動かし、忽然と消えてしまうんだよ。慌てた俺とサクライが町中を走り回ってはタカミザワの行方を捜していたが、やはり見当たらなくて不安で仕方なかった。
だけど一つだけ行ってない場所があったのを思い出す。
それは“明日の鐘”がある教会。
俺とサクライは急いで教会へと向かうと、やはりそこにタカミザワの姿があった。
“明日の鐘”の下で一人座り込みながらタカミザワはずっと空を眺めていた。翼がない体を動かすのはやっとのようで、中々バランスが取り辛いとか。
誰かの支えがないと歩けない癖に、たった一人でこんな場所まで来るなんて‥
その日はタカミザワの気が済むまで俺達は翼のない彼の背中を見守っていた。
それから毎日のようにタカミザワは俺達の目を盗んでは“明日の鐘”の下に座り、空を眺め続ける日々。
今日は俺とサクライがこの教会に棲む男の霊と話しをする為、最初からタカミザワをここに連れて来てから彼を一人“明日の鐘”の下に置いていき二人で教会の中へとやって来たのだ。
それで今に至る。
「悪かったな遅くなって。お前をちゃんと成仏させてやるよ」
「ごめんサカザキ、でも最後コイツに聞いていいか?」
(なんだ?)
「どうしてあの天使はあんな悪魔になってしまったんだ?」
(‥‥、あの天使は元々天界では悪さばかりして追放された奴なんだよ。そんな天使を堕天するべきだと感じた天界の者達が何かと理由をつけて彼女を空から落としてしまったんだ。その天使がこの町へ落とされて、天界の者達を憎んだ彼女は人間を味方に付けて復讐しようとしていたんだ。それに気付いた僕は一刻も早く彼女を止めに王へと知らせた。けれど彼女は王をも誘惑し、この国の全てを手に入れようとしていたんだ。けれど僕がどうにかして王へ真実を伝えたかったから彼女の居ない時を狙ってそれを伝えると、激怒した王は罰として彼女の象徴である羽根を奪い、この国から追放してくれたのさ。
だけど甘かったね。やっと終わったのかと思い、僕は安堵してこの教会にお祈りへ来た所を……彼女に襲われて僕の人生は呆気なく消えてなくなってしまったんだよ。全部自分が起こした出来事なのにどうして僕が死ななければならなかったんだ?だから僕は最後の力を振り絞り、彼女をこの手で殺したんだ。
僕と彼女の遺体は教会の地下に納められたけど二人してこの世に未練が強く残っていてね、こうして霊となって現れるようになってしまったんだよ。彼女は教会で式を挙げた者達の生気を奪い力を蓄え続けていたんだが、それに気付いた国や人々が彼女を鎮める為にと“明日の鐘”を作ったらしいんだ。“明日の鐘”とは人間でも悪霊でも妖怪でも鳴らないように出来た特殊な鐘。
だけど本物の天使が鳴らすと同じ力を持った者同士、共鳴しあい立ちどころに彼女が蘇ってしまうようになっていたらしい。天使なんかが落ちてくる筈がないと思ったから国はそういう細工を施して作ったんだろうね。
だって天使が地上に落ちてしまったら人間か妖怪へと変わり果ててしまうでしょ?だから安心しきっていたんだ‥。まさかタカミザワがそのままの姿で地上に落ちるとは計算外だったんだろう。
彼女も天使といっても殆ど堕天使に近かったからね‥。どうして彼女がタカミザワを落ちるよう仕向けたのかは分からないけど…そもそもその言葉に信憑性なんてものないものの、そのタカミザワって奴の姿を借りて天界の者達に復讐しようとしていたのは本当だと思う。だからサクライをここに引き寄せてタカミザワを殺し、自分が生き返るよう仕向けていたんだ。これが真相さ)
「……、」
「そんな……」
ずっと聞いていた俺とサクライは言葉を失った。
最初からタカミザワを殺すつもりでサクライに憑いていた事も、今まで伝えられてきた伝説が真っ赤な偽物だという事も。
「じゃあ‥なんでこんな伝説が真逆なものに‥?」
(天使が悪い事する筈がないと思った人々の思いが全てを曲げてしまったんだろう)
「そんな…ことが…」
そんな事があってはダメだ。
これからはちゃんとみんなに伝わるよう教えなきゃ…
そしてタカミザワが伝説なんて言われないよう、しっかり後世に残さないといけないんだと…ふと今そう思ってしまった。
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