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「正直に言えば帰りたい。だけど皆が救ってくれたこの命を無駄になんて出来ないし、そこで私が死んだら皆への最大の裏切りになってしまう。そんな事をしたら本当に堕天使にされかねないからな‥。人間になってしまった私に皆が与えてくれたこの羽根の力、これでサクライとサカザキ‥そしてこの町のみんなを守っていきたい。それが私の宿命ならば、私はその宿命を背負って生きよう。そ、‥それと‥サクライとサカザキと離れたくはなかったから‥人間でも悪くないなと思ってもいるのだ」
「 タカミザワ‥ 」
全部本心だった。
天界にも帰りたかったし、二人とも一緒に暮らしていきたい気持ちももちろんある。
へへ、と弱々しく笑ってみせるとサクライが私の頭を撫で「優しすぎ」と言ってくるので「そんな事はない」と返すが、柵の上に座っていたサカザキが「うぜぇー」と嫌みったらしく私に向かって言ってきた。
サクライは立ち上がると鳴らない“明日の鐘”の紐をグッと引っ張ってみせるも、相変わらずやる気なさそうに鐘の舌が内側を叩いている。
あの時は二人を助けるのに必死で、肝心な鐘の音を全く聴いていなかったしな‥。もし、この羽根に皆の力があるならば人間になってしまった私が鳴らす事が可能なのだろうか?
立ち上がった私は後ろへ倒れそうになった体をサクライが支えてくれて、彼が持っていた鐘の紐を私に手渡した。
「鳴るか?」
「さぁな。私もだが、僅かしか力が残ってはないし‥。天使とは言い難い存在だが‥皆がこの羽根にくれた力を頼りにするしかないな」
羽根を握り締め、私は“明日の鐘”を鳴らしてみせる。
すると綺麗な鐘の音が町中に響き渡っていったのだった‥
「‥‥鳴りやがったな」
「あぁ。やっぱりこの鐘はタカミザワにしか鳴らせない鐘なんだよ」
二人が呟くように私に言ってくる。嬉しそうに笑ってくれた姿を見ると、私も嬉しくなりもう一度“明日の鐘”を鳴らす。
「智天使の力を僅かに持った人間‥か。まぁ、それも悪くはないしあと一度天界へ戻れるなら私はだいぶ満足だぞ」
透き通るような鐘の音はいつまでもこの町に響いていた。
𓂃◌𓈒𓐍𓈒
あれから半年が経ち、リハビリをしたお陰で私の体もかなり自由に動くようになっていったが、傷跡の痛みが引く事はそれだけは決してなかった。
あの教会はと言うと町の人々が中を改装して使えるように直してくれたようで、今まで結婚式を挙げるなら隣の町に行ってわざわざそこで挙げていたらしい。この町にはあの呪われた教会しかなく、“明日の鐘”も鳴らなかったしで‥けれど壊す勇気もなくずっとあのまま建ち続けたとか。
この町‥いや、この世で唯一“明日の鐘”を鳴らせるのは私一人だけ。だからそれを活かし、私はこの教会で神父的なものをする事となった。
神父というものをよく知らなかった為、サクライとサカザキに教えて貰い見よう見まねで神父をする事となってしまった。
結婚式という晴れ舞台を私が仕切ってもいいのかと尋ねるが、みんなは大賛成らしく本物の天使の前なんかで幸せを誓うのだから、必ず幸せになると言ってきてくれたのだ。
誰も鳴らせない“明日の鐘”を結婚式に私が鳴らすと、その夫婦は本当に幸せに暮らせていけるという噂はこの町以外にも広がり、わざわざ遠方まで来ては結婚式を挙げてくれる人々が後を絶たなかった。
神父は何とも地味な格好だった為、もう少し派手に‥もう少し派手にを繰り返していたら「主役より目立ちすぎ」とサカザキに言われ、頭をハタかれた事もあるが、なぜかやめようとは思わない…が、花嫁より目立ち過ぎてもダメなので、そこそこにしておこう。
私が一人で式をやるのは危なっかしいとサクライにも言われ、結婚式がある日は自分達の仕事を休んでまで手伝いに来てくれるのだ。何かと失敗する私のせいで静寂に行われる結婚式が毎回笑いに包まれ、こんな楽しい結婚式はないと夫婦の知り合いでもない人々が、いつの間にかよく見に来るようになっていった。
そしてみんながここに来る理由は“明日の鐘”が鳴る所を見たがるのが一番の理由だと思う。
今日も笑いまみれな結婚式があり、私が“明日の鐘”を鳴らすと、よっぽど嬉しかったのか新婦は涙を流しながら鐘の音を聴いている様子。すると隣にいた新郎が彼女の唇にキスを落とし、周りにいたみんなが拍手をしたり口笛を吹いたりと一杯いっぱい祝って貰えたところだった。
私の横に立っているサクライとサカザキはその夫婦と、周りで賑わっているみんなの姿を眺めては優しく微笑みを向けてみせた。
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