Rtf18
「‥‥、」
移動し始めた奴隷たちは、出口にどんどん近付いてる。坂崎が迷いなく歩いて行く方向には、確実に外への扉が待っているからなぁ‥
フゥ、と溜め息をついた後に棚瀬が「どうしますか、アイツら出口に辿り着いちゃいますよ?」と分かりきった事を言ってくる。あぁ、そうだな。あそこまで辿り着けたなら、俺が迎え入れてやろうか。
そしてマイクに向かい、生き残りの一人に対して命令を送る。
「おい、聞こえてるか?」
「はい」
「出口付近まで来れるか?あんまり遠くの方まで行ってないよなお前?」
「行けますが‥」
「なら走ってすぐ行け」
「了解です」
それだけを伝えると、俺は椅子から立ち上がり棚瀬に向かって「行ってくる」と告げてみせる。すると棚瀬は、この部屋から出て行こうとする俺に振り返って「社長、危険ですよ!」と止めに入った。
「ま、俺が危険な状況になったらすぐ病院連れて行けるように準備しておけ」
「社長‥」
「そんな弱々しい声で呼ぶな、気持ち悪りぃ」
「いいですか、我々は貴方が必要なのですよ?‥死なれたりしても、というより死なせません。覚えておいて下さい」
「死なせねぇ‥か」
その棚瀬の言葉を聞き終えてから、俺は次こそこの部屋から出て行った。
あぁ、こんな事で死んでたまるもんか。アイツら‥特に右手と左手、あの二人だけは許しはしない。
。。。
「もう少しだ!あそこの空間がちゃんと見えてきたぞ!」
みんなの士気を高めさせ、俺は声をかけ続けては頑張る気力や喜びを全員に伝えさせていく。特にケガを負ってしまっている人たちに。諦めるな、まだ終わった訳じゃない。
ここまで来れたんだから、何とかいける!
扉に繋がる空間からの出口から、残り二十メートル程の距離。‥の所で、急に坂崎の目の色が変わり始めいきなり「走れるもんは走れッ!!」と言い出す。
「人の走る音が聞こえて来てる。きっと黒スーツだ!」
「マジか‥!?なんでこんな時に‥」
「大方ご主人様が呼び出したんだろう。ケガをしている者になるべく手を貸すんだ!まだ距離はあるだろうから焦るな、行け!」
坂崎の指示で、一斉に走り出すみんな。俺は坂崎と一旦立ち止まりながら、みんながここから離れていくのを待機しつつ、先頭から一番後ろへと回ってから全員の後を追いかけて行く。
ムダな争いはしたくない。
坂崎と一緒にみんなの背中を追いかける形になりながら走っていると、僅かに後ろの方から足音が聞こえてくるのが察知出来た。しかも速い‥!
坂崎がチラリと振り向きながら「急げ、高見沢!」と急かしてくる。んなこたぁ分かってるっつーの!
後ろから走ってくる足音に追いつかれないよう走って走って走りまくるだけだ。ハァ、ハァッ‥と次第に上がってくる息に、なまり切っている体力のせいで脇腹も痛みが伴ってくる。
長い鎖が邪魔で走り辛い上に、追いつかれて撃たれてしまうのではないかという恐怖。
負けるな‥。ここまで来たんだから俺たちは勝ってみせる!!
先に走って行った者がやっと今向こうの空間に出られた所だ。そして次々にそこから出て行くみんなではあったが、いきなりガダンッという音が響いてきた。
「な、なん‥っ!?」
「しまった!閉じ込められるぞ!!」
そう。今の音はさっき坂崎が言っていた通り、あの出口が鉄の板で塞がっていく所だった。まだ下り始めたばっかではあるが、ここから全力で走っても間に合うのかよコレ‥!?
だけど下りて来ようとする板を必死に支えてくれるみんなは、俺たちに向かって「急げ!」と叫んでいた。
少し先で走っていたケガを負ってる人たちも、なんとか全員ここから出て行ったのを確認した俺と坂崎は、お互いの顔を見やってコクンと頷く。
「間に合う筈だ!!」
「分かってる」
‥‥という所に後ろからドンッという発砲音が聞こえてきやがった。クソッ!今はテメェの相手してる暇なんてないんだよ!!
幸い銃弾が俺たちに当たる事はなかったが、黒スーツがすぐ近くまで迫って来ている証拠だ。
「チッ‥!先に行け高見沢!」
「ダメだ、お前を置いてはいけない!!」
「‥っ!」
俺の言葉を無視してきやがる坂崎は、唐突にバッと走る向きを変えてしまったではないか。思わず「えっ!?」と素で出てきてしまった声すら気にせず、坂崎は持っていたナイフを手にしながら「俺はいいから!」と、まるで捨てゼリフでも吐くような態度。
はぁ‥!?ふざけんなよお前!
「ダメだ坂崎っ!!」
「‥っうわ!?」
思わず坂崎に繋がっている鎖を引っ張り、俺はそのまま出口の方へとひた走る。
「おい‥!このままじゃ撃たれて二人共死ぬかもしれないんだぞ!?」
「ダメだ、走るんだよ!」
「俺はお前を自由にしたいんだ‥!ここで俺がアイツを足止めすれば、高見沢は確実に助かる!」
「ダメなんだよッ!!お前も連れてここから出るって決めたんだ!!」
「‥バカが」
そう言われようとも俺はお前とここから出てやる!
次から次に放たれる銃弾に恐怖しながら、いよいよ半分くらいまで下り切ってしまっている鉄の板。大勢の人が口々に「早くしろ、早く!!」と叫んでは俺たちを待っている。
それに応えなくちゃならねぇからよ‥っ。
あとちょっと‥、もうすぐだ!!
「行くぞ坂崎、滑り込むぞ!!」
「‥あぁッ」
もう半分以下まで下りて来てしまっている。でも飛び込めばギリギリ抜け出せる!!
「アァアアァアアアアッ!!」
。。。
かーごめ、かごめ
「‥さぁ、籠の中の鳥たち」
いーついーつ、出やる
夜明けの晩に
「鶴と亀が‥滑り込む」
間一髪、ズシャアッと板に挟まれるスレスレの所で二人はこちら側に辿り着いてしまった。
「ハァッ、ハァ‥!っ‥‥、ハァ‥。やった‥やったぞ!!」
「ハァ‥ハァ‥‥っん、‥‥なっ」
「ど、どうした坂崎‥?」
「‥‥ご、」
坂崎が俺を見てくる。
さぁて‥‥
「‥‥えっ?」
「後ろの正面、だぁー‥れ?」
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