Roar to freedom(自由への咆哮) - 21/28

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後ろの正面、だぁー‥れ?

 

「なっ‥‥、」

 

なんで‥コイツが、ここに居るんだよ‥?

後ろを振り返れば、そこに立っていたのは俺たち全員の敵であるあの男じゃないか。

 

ガタンッと、下に下り切った鉄の板の音すら気にならないくらい、今ここに居る全員は固まってしまい、ただ一点あの男を見やるしかなかった。

 

どういう事だ。なんでアイツがこんな場所まで‥‥

 

そうか。俺たちをここから出させないようにする為、か。特に俺と坂崎。

俺たちが一番探し求めていたここから出る唯一の扉の前の方に立っていたアイツが、俺と坂崎を見ながらゆっくりと近付いてくる。

 

だ、ダメだ‥‥。俺たちはここから絶対に、出るんだ‥

 

しかし俺はあの男を目にするだけで震え上がってしまう身体。もう、条件反射並みにこんな事が起こるようになっちまってるな‥ったく。
怯えてる俺に対し、坂崎はすくっと立ち上がっては「ご主人様‥」と呟いた。

 

「よぉお前ら。‥よくぞここまで辿り着いてくれた。歓迎するよ」

「‥‥ご主人様‥、いや。桜井」

「‥‥。」

「俺は‥‥もうこんな暮らしは嫌だ」

「ふざけるな。テメェが俺に仕出かした罪を忘れた訳じゃねぇよな?」

 

俺たちとの距離があっという間に縮まった。

座り込んだままの俺に、この男は「俺たちの過去を知ってしまったな、左手」と声を掛けられてしまう。それだけでドクンと鳴る嫌な鼓動。‥吐きそうだ。

 

「あぁ、知ったさ。お前が坂崎にされた事も‥どうしてお前が俺たちをこんな目に遭わすのかも」

「そうだな。俺も全部モニターで観ていたからな」

 

鋭くキツい視線が俺を捉える。

ヤバい‥、怖いなやっぱ。

 

「どうしてこんなバカげた事をするのかよーく理解出来た‥。簡単に言えば、お前は腹いせの為にやってるだけなんだろ?」

「間違っちゃあいねぇな。テメェらみたいなどうしようもないクズ共をひっ捕らえてここに送り込む事が俺の一つの楽しみでもあるんだからよ」

「お前の方がクズじゃねぇか‥!」

「口答えしてもいいのか左手よ?」

「もうここまで来たんだ。何としてでもその扉を開けて出る。そして自由になる!」

 

そっかぁ‥と呟くアイツは、視線を俺から地面へと落としてしまった。

 

「‥人がこうして足掻いてもがいて必死に這い上がろうとしてくるのを見るのが堪らないくらい快感なんだから仕方ねーだろ」

「確かにお前の人生は報われたもんじゃねぇ。坂崎を許せない気持ちだって‥分かりたくはないが、何となく分かっちまう」

「へぇ。分かってくれるんだぁ?」

「‥っ!?」

 

パッとこちらにあげた顔が明らかに人の顔をしていないように見えてしまった。さっきの坂崎の表情も恐ろしかったが、やはりコイツの目の狂った感じはどう見てもおかしい。

 

どうしたらこんな表情を作れるんだよ。

しかし今のは、俺の発言がまずかったのか?分かる、だなんて言ってしまったのが地雷だったか‥?

 

そんな事を考えながら、ようやく俺も立ち上がってみせると、いきなり奴が「‥自由になりたいか?」と聞いてくる。なんだ、どういう意味だソレ?もう何もかもが疑わしい。

 

「当たり前だろ」

「だったら俺を殺してみろ」

「なっ‥」

「俺たちの過去を知ったお前がここから出られる方法は一つだけ。‥俺を殺す事だ」

「‥いいのか?そんな簡単な方法で」

「やってみろ」

 

奴の言葉に騙されているのか。それとも本心なのか。どれだ‥どっちだ。人を、アイツを‥信じるな。俺たちだって騙されてここに来てしまったんだ。人間不信になったのは何もお前だけじゃない。

グラグラと揺れる脳内に、霞んでくる目の前。

 

頑張れ、踏ん張るんだ俺。ここで何とかしなきゃ、もう一生出られないかもしれないんだぞ!?

小声で「坂崎‥」と彼の名前を呼びつける。

 

「今お前が持ってるナイフ‥俺に貸してくれ」

「‥声と手が震えてるぞ」

「いいから早くッ!!」

「‥‥。」

 

手渡された刃渡十二、三センチ程のナイフを握りしめると、周りで見ていたみんなが息を飲んだのが聞こえた。

みんな俺に賭けている。裏切るな、みんなの期待を背負っているんだ。

 

フゥー‥フゥーッ、と深く吸っては吐く息で心を整える。いいんだ。奴は俺たちに対して、どれっっだけの悪い事をしてきたんだと思ってる?

 

俺たちを苦しめた。沢山の死者を出してきた。大勢の人たちの自由を奪ったんだ!!

 

「‥結局お前は最後の最後まで人を殺せはしなかったじゃないか」

「だけど俺は‥っ、お前を殺す事をずっとずっと夢に見てきた‥!お前を殺してやりたかった!!」

 

俺の方も一歩ずつ奴の方に歩み寄って行く。

 

「いいねぇその目付き。この俺様を憎んでやまない目‥。そして最後まで希望の光を失わなかった目だ」

「あぁそうさ。俺はいつだって希望を捨てなかった‥!」

「だからお前は俺の左手になったんだ。その目に光をすぐ失う者ばかりだったもんでね。だからお前は面白かった」

「あーそうかい。俺は何一つとして面白くはなかったけどなぁ!」

 

ジリッ‥と詰め寄った奴との距離は、いつの間にか僅か二メートルにも満たないくらいまで来ていた。

 

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