FC! - 11/23

FC!9

このデカイ猫が王‥

もう既に俺を人間と見破っているし、この話ぶりならピアスの話題も通じるだろう。良かった‥王様だからやっぱり知ってたんだな。

出直し、という道を辿らなくて済むと分かっただけ心が軽くなれたのは言うまでもない。

「そのピアス、どこで手に入れたのだ?」

「さぁ?今の持ち主は俺じゃなくて、他の奴だからねぇ。でも、どこかの店で購入したとは言ってたっけな」

「やはり人間界に流出してしまっていのか‥。時に其方、そのピアスだけで人間には戻れるのか?」

「いや‥。俺は初めてこのピアスを着けて猫になったから‥」

「そうか。ではそのピアスと対をなすピアスを知っておるか?」

「もう一つのピアス‥?」

ナカノの方へ目をやるも、彼女だって知っている筈がなかった。もちろんドングリとシッポナも。二匹はキョトンとしながら難しそうな表情で俺を窺っている。

また王様へと向き直り、素直に首を振ってみせた。

「知らなかった。もう一つのピアスの存在は聞いた事もない」

「‥そうであろうな。そのピアスは私が所持しているのだから」

「貴方がっ?」

「あぁ」と短く返事が返してきた王様はクルリと背中を向けると、先程と変わらず木の陰から感じる複数の気配が一緒に王様に付いて行く。

チラリとこちらを向く王様は、「付いて来い」と一言付け足すので付いて行くしかない。

‥しかし、

「ちょっと人間に戻ってもいいか?」

「‥よかろう」

このまま俺一人だけが先に行っても意味がないよな。人間に戻れなくなっちまってる坂崎本人がここに居ないと王様に付いて行っても‥ねぇ。

人間に戻ろうとしている俺の隣でドングリが「もう人間に戻っちゃうの?」と寂しそうな顔を見せながら下から覗き込んでくる。か、可愛いじゃねーか。

「そりゃあね。君達のお父さんをここに呼ばないと」

「あ、そっか」

ちょっぴり寂しそうな雰囲気のドングリとシッポナではあるが、ナカノだけは「早くサカザキさんに伝えて」と促す。おう、今人間に戻るからもう少しの間待ってろよ。

左耳に着いているピアスを、この獣の手で器用に取り除いた瞬間、大きな白い光が俺を一瞬包んでくれる。

その光が収まり、瞑っていたままの目をそっと開けると‥‥

「よし。人間‥だよな」

自分の手や腕を眺め、頬に掌を持ってきては皮膚の感触を改めて確かめる。万が一って場合もあるんだからな、細かい部分まで確認しておいて損はないだろう。

左手には握られてある猫の形をしたピアス。

‥っと、ゆっくりしてる場合じゃない。早く高見沢に電話しなくちゃ。

さっきまで同じ目線だった猫達が今度は俺を見上げている。言葉は通じないけどお前達の気持ちならもう理解出来る‥だろう。

携帯を取り出せば、王様に向かって「会って貰いたい奴がいる」と伝えてみせる。すると王様は「今のピアスの持ち主か?」と尋ねてくる‥‥って、なんで人間のままなのに俺は猫の言葉が分かるんだ?

王様に尋ねられたにも関わらず、驚きの方が強かったせいか「へっ?」なんてトボけた声が漏れてしまったじゃないか。

不思議そうに、困惑している俺を見兼ねたのか王様は「深い事は考えるな」と面倒くさそうに告げてしまう。

「は、はい‥」

「呼ぶのであれば早くして欲しい。夜が明ける前までに全てを終わらせたい」

「夜明け‥までに?」

「其方の言うその人間が元に戻れなくなるのは困るであろう?時間が経てば経つ程力は強まっていき、人間に戻れなくなるぞ?」

「それはマズイね」

慌てて携帯をポケットの中から取り出し、電話帳から高見沢の名前を選んですぐさま電話を掛ける。

ワンコール。ツーコール‥

‥出てくれる、よな?

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