FC!11
‥っと。坂崎と高見沢を待つしかないもんなぁ。
携帯をポケットにしまい込みながら、俺の足許近くに寄って来た王様が「ピアスの持ち主にやっと会える」と俺を見上げながら口にしてきた。
‥にしてもこの猫綺麗だなぁ。本当に野良猫なのか?二つの色の違う目が俺を捉えると、王様は「なにか?」なんて聞いてくる。
いや、別に何もないんだが‥
「王様はここから離れられない?」
「構わないが‥うちの護衛達がねぇ。だから普段はあまりここからは離れないようにしている」
「ふーん。じゃあ俺がこの森林抜けてピアスの持ち主を待ってるわ。多分十分か十五分くらいで来てくれると思うし‥」
「そうか。ではそれまで待とう」
物分かりがいい王様でこちらとしても助かる。「なぁ、王様」と彼を呼びかけると、王様は再びフッと俺の方へ顔を見上げる。
一々面倒くさそうだな‥。仕方ないから俺が腰を低く落とし、王様とちゃんと顔が合うようにしてみせた。
「悪いな、気を遣わせてしまって」
「気にするな。‥ところでよ王様、アンタはどうしてこんな場所に?野良猫達の中の王って‥どういった存在なんだ?この子達も元々は野良猫だったんだけどアンタの存在を知らないみたいだし」
「この子らは今飼われてるのだろう?」
「あぁ。ピアスの持ち主に飼われてる」
こんな話しをしていると、いつの間にやら周りにはナカノ達が集まってきており、ドングリが俺の膝の上へと登ってこようとしている。なのでドングリに手を貸して、この子を俺の膝の上に乗っけてみせた。
「人間に飼われれば私の存在は次第に消えゆくものだ。記憶には留めないようにしてある」
「どうして?」
「この場所を知られたくないからな。‥今貴方の膝の上に居る子や周りに居る子達、昔はきっと私の存在を知っていただろう」
「そうなのか‥」
「人間に飼われ、人間に慣れ、人間を好きになれたのなら私の存在は必要ない。私は身寄りのない子達の父親として生きていかねばならぬからな」
「みんなのお父さん‥って訳か」
「そうだな」
するとドングリが「ニャア」と鳴くので、何かを俺に伝えたかったらしい。困った顔で「ん?」と答えてみせると、王様が訳してくれた。
「まるでサカザキさんみたいだね、と言っておる」
「あぁ、そうだな。まるでお前達のお父さんみたいな存在だな」
ドングリの頭を優しく撫でると、ドングリはどことなく嬉しそうな雰囲気で俺に甘えてくるその仕草。可愛いなぁお前は。
しかし王様は「サカザキ‥」と一言呟く。
疑問に感じた俺が「坂崎がどうかしたか?ていうか知ってるの?」なんて冗談半分で尋ねてみるも、彼は「‥もしかしたらな」なんて予想していたのとは違う返事が返ってきてビックリしたのは言うまでもない。
「えっ!?なんで知ってるのさ!?」
「‥有名だからな」
「有名って‥坂崎が?」
「噂には聞いている。他の猫達も知らない方のが少ないのではないか?」
「へ、へぇ~‥。さすがは坂崎」
どっちかっていうと呆れてる、という感情のが強いのか。
「君達はその人間の魅力に取り憑かれたのだな」
「‥どうなんだろうね?始めは怖がってる猫達も多いって言ってたけど」
「それはそうであろう。しかし、その人間の元へ行く‥という事はよっぽど外の世界で辛い目に遭ってきてしまったのだろう」
「俺は何も知らないけどね‥。この子達とそう頻繁に会う訳でもないし。猫になって会話したのも今日が初めてなんだから」
「‥そうであろうな。ところでそろそろ時間ではないか?」
「ん?あっ、ほんとだ!悪りぃ、ちょっと行ってくる!」
「私はここで待っている」
腰を落とした王様と、腰を持ち上げた俺。膝の上に居たドングリを下へおろすと、ナカノもドングリもシッポナも走り出した俺の後ろへと引っ付いて来る。
ポケットに入れたままであったピアスを耳につけ、パッと光る白い輝きに包まれた後に再び現れた黒猫姿。
こっちの方が速く走れるからね。
俺を先頭にして走り出し、隣にやって来たドングリが「サカザキさんって有名なんだねっ」と嬉しそうに話しかけてくる。
「ま、あれだけ猫を飼ってればねぇ。猫から猫へとそりゃあ噂は回っても不思議じゃないよ」
「それにしても私達は元からあの王様の事を知っていたのかしら‥」
ナカノが走りながら隣で独り言のように呟くと、その隣で走ってたシッポナが「ぜんっぜん記憶にないよ」と自分自信に呆れ返ってる様子だった。
‥あの王様が猫達の記憶操作をしてるって意味なんだよな、きっと。
けど、記憶を消す必要があるのか?
王様に聞いてみなきゃ分からないから、とりあえず俺たちは坂崎を迎えに行くしかない。
走り出して見えて来た森林の出口。
そこでウロウロしてる人影がうっすら見えた。あれは‥高見沢かっ?
うん、そうだ。この匂いは高見沢だな。
あれ?匂いで判断してるとか、もう猫に慣れちまってるなこりゃ。
‥っと、その前に人間に戻らないと高見沢にバカにされる。
走っていたスピードを段々と落としつつピアスに手を掛け、俺は再び人間へと戻ってみせた。
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