FC!10
ブブブ、ブブブ、とテーブルの上で鳴るスマホをすぐさま手に取り液晶画面を確認してみる。
パッと見ると、そこに映し出されてる文字は「桜井賢」とハッキリと書かれてある。坂崎も早く電話に出てくれと言わんばかりの表情で俺を見つめていた。
あぁ、迷わず取るよ。
電話マークをタップして、向こうから聞こえてくる相手の声色を窺うように「どうした?」と恐る恐る問う。
「高見沢か?」
「あぁ。何か手掛かりは見つかってきたから電話を掛けてきた‥んだよな?」
「まぁ、手掛かりは見つかったな」
「ホントか!?」
思わず出てきてしまった大声で、傍に居た坂崎は片目をギュッと瞑りながら少しだけ迷惑そうにしていた。そ、そういえば今は深夜だ‥近所にも迷惑かけてしまわないよう気をつけなきゃな。
電話の向こうの相手も「バカ、声がデカイっ」と注意してくれる。
「すまん‥」
「気持ちは分かるけどよ、今は遅い時間なんだからな?」
「悪かったってば。だから早く教えてくれ!お前は何を見つけたっ?」
「それがさ‥今ナカノとドングリとシッポナと一緒に居るんだけど、」
「えっ?ドングリもシッポナも?」
ポロッと声に出してしまった二匹の名前に思わず坂崎が顔をしかめて「はっ?」とかなり低い声でこちらを睨む。いや、俺を睨んでも仕方ないだろ。
片手で坂崎を制すように小刻みに顔を振るが、コイツの気分はあまり良くはないみたい。
続きを話そうと桜井に「で?」と聞き返す。
「俺と今この子達がさ、猫の王様に会えたんだよ」
「猫の王様?」
「そうそう。野良猫達の間では知らない者は居ないらしい」
「へぇ‥」
「それでその王様がさ、このピアスの正体をどうにも知ってるらしいんだよ」
「でかした桜井!」
「いや待て、喜ぶのは早い。‥‥高見沢、今から俺たちの居る場所へ来てくれないか?」
「今から?」
「今すぐじゃないと坂崎が人間に戻る確率が低くなるんだとよ。だから今すぐ坂崎連れて来てくれ」
「わ、分かった‥今すぐ行く」
椅子から立ち上がり、パソコンの電源を切りながら出かける用意を始め、桜井とも会話を続けていると坂崎が「どうした?」なんて言いたそうな不安そうな顔を見せてる。
「どこに居る?」
「○○って場所らしいんだが‥ちょっと分かりにくい所にある。俺もこんなのがあったの知らなくてさ‥」
「カーナビでなんとかするよ。じゃあ分かりやすい場所とかにも立っててくれ」
「早めに来いよ?‥王様の機嫌が悪くならない内にな」
「そうだな。俺よりも一つお偉い方なんだろうし」
じゃ、と会話を終えると俺は不思議そうにしている坂崎を脇に抱えてサッサとこの家から出ようと廊下に繋がるドアを開けた瞬間、ドタタッと足許に何かが一斉に当たる感触がした。
思わずビックリして「うおっ?」と声を出しながら飛び跳ねかけたが、足許には見慣れた猫達が倒れ込んでるじゃないか。
うにゃにゃ、と鳴き声をあげながら倒れているのは‥
「タクヤ、マナ、ワカっ!?お前達なんで‥っ?」
そう驚きの声を上げたのは坂崎の方だった。
「いてて‥」
「ほら、部屋に戻った」
「嫌だよ!マナ、コウ達についてく!」
「ダメだっ」
「コウの事が心配なんだよ‥!もしサカザキさんに戻れなかったら‥」
「タクヤ‥」
「ワカも絶対、ぜーったいコウ達についてくもん!」
「あのなぁ‥」
あきれ返ってしまっている坂崎。それにしつこく反論しているのであろう猫達。そんな様子を見せつけられていると、俺と目がパチッと合ったマナが足にすり寄ってくるではないか。
お?俺にも坂崎を説得して欲しいって?
マナに続き、タクヤとワカも俺へとすり寄ってきてはニャアニャアと鳴いては頼み込んで‥きてるっぽい三匹。
坂崎は俺に対して「ダメだからな高見沢?」と伝えてきたが、俺は廊下を歩き出して猫達に「付いて来い」なんて言ってみせると坂崎は「えっ!?」と驚きを見せつける。
しかし猫達はタタターッとなんの迷いもなく俺の後ろへと付いて来てくれた。
「高見沢!」
「こんだけ心配してくれてるんだから連れてってやれよ」
「けどっ‥」
「お前の事、本当に大好きなんだな。この子達は」
「‥!」
脇に抱えたままだった坂崎にニヤッと不敵な笑みを見せつけると、彼は口をつぐんで恥ずかしそうにしながら黙ってしまった。人間の時じゃああり得ないからね~、こんな“コウちゃん”は。
家から出て、俺と四匹は俺の車で桜井の伝えた場所まで向かって行く。
「覚えておけよ、高見沢‥」
助手席でぽつんと座ってる彼の鳴き声がそんな風に言ったのは気のせいだと思いたい。
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