FC!14
「‥‥。」
広場の中央には一本の大木が佇んでいる。周りの木々とは比べ物にならないような大きさであり、今の猫の姿じゃ人間時に比べると圧倒されてしまうのは当たり前か。
トテトテ歩いて行くと、王様が「あそこにあるのが分かるか?」と振り返りざまに聞いてくる。
言われた通り、王様の目の先に俺も視線を移動させてみせると、大木の幹に削られた僅かな空間には何かがキラリと銀に光る物がそこにはある。ん?と疑問に感じる‥なんて事はもうないだろう。
後ろからは高見沢の声で「あっ、もしかしてあれピアス?」なんて口にしていた。
「あんな場所にあるとか他の人に取られるんじゃないのか王様?」
「いや、昼間の間なら目立たないしな。例え見つかったとしても私が追い返す」
「大勢で来られたらアンタらは無事でいられるのかよ?」
「私の優秀な護衛達を見くびるでないぞ」
「ふーん。その護衛達はまだ姿を現してはくれないぽいっけどねぇ」
「高見沢、その護衛達見たいのか?」
「ちょっとね」
高見沢と王様と桜井の会話が終わる前に俺は木の根元まで移動していくと、タタッと駆け寄ってくる足音と共に「コウ!」と名前を呼ばれつつ、周りにはみんなが集まってきてくれた。
隣に来たナカノが「これで人間に戻れるわね」と優しい笑顔で声をかけてくれる。うん、本当に‥良かった。
「コウ、僕達ちゃんと頑張ってここまで辿り着いたんだよっ!感謝してよねっ?」
「あぁ、お前達の働きがよーく伝わってくるよ。‥俺の為にありがとね。でも危険な真似はあんまり仕出かすんじゃないぞ?」
「はーい‥」
「シッポナもな?」
「ごめんなさい‥」
「‥ま、もう怒ってないからそんなに落ち込むなって。本当にありがとな」
傍に寄ってきたドングリとシッポナに、ちょんとおデコを軽く一度ずつひっつけては感謝の意を込めてみた。するとシッポナは照れ臭そうに「えへへ」と笑い、ドングリの方は「コウ大好きだよ!」と口にしながら鼻と鼻を引っ付け合ってはニパッと大きな笑顔を魅せてくれた。
くそっ‥、可愛い奴らめ。
「取り込み中悪いが、このお方を貸して貰えるか?」
「ご、ごめんなさい王様‥!」
「そう怯えるでない」
いきなり王様が横に立たれ、思わずビクッと体を跳ねらすシッポナとドングリはササッと高見沢と桜井の方へと走り出してしまった。それに続き、ナカノ達も二人の元へと戻れば王様と俺の空間だけ。
そうすると王様が、二人に「どちらかあのピアスを取っては頂けませぬか?」と頼み事をしてくるので、桜井の方が前へ出てきて木の隣までやって来た。
チラッと俺の目と合ったが、桜井は何も気にするでもなく小さく微笑むとピアスが飾られてある穴の中へと手を伸ばす。
「というより取ってもいいのかコレは?」
「構わない。そしてそのピアスをサカザキに付けてやって欲しい」
「あいよ」
ゴソッと桜井の手が穴から出てくると、指先に摘まれてあるのは俺の持っていた猫の形とは逆の人間を模ったピアス。予想は大体ついてはいたが、本当にこんな‥‥。ねぇ?
顔の前で一瞬だけ見つめていた桜井の横からは高見沢が「見せて見せてっ」と子供っぽさを見せつけながら彼の隣にやって来たではないか。
お、おい、せめてお前はうちの猫達の傍に居てくれよ‥
「なんかフツーのピアスだな」
「これが猫から人間になるピアスか」
「サカザキに付けてやってくれ」
「付ければ元に戻るんだな?」
「‥きっとな」
「きっとって‥。おい待ってくれ王様、戻らない可能性もあるって事だよな!?」
「そう焦るな。私の予想が当たっていればサカザキは人間に戻る」
「本当‥だよな?」
「信じてくれ」
ドクッ、と一度だけ大きな鼓動が伝わってきたが、相変わらず俺はといえば緊張感も焦りも動揺もないまま。桜井が焦っているのに俺がこんなにも落ち着いてるって‥
さっきも感じたが、これは王様が居るからだろう。信じてもいい存在なのは確かだ。
そして桜井がどこか不満そうな顔をしながらも、膝を曲げて俺の前で屈んでは「付けるぞサカザキ」と宣言する。
「うん」と答えるも、今は俺の体に触れていないからニャアと鳴いてるだけにしか聞こえないだろうけど。
チャリ、と耳許に金属の擦れるような音が聞こえた次の瞬間、俺の体は‥‥
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