FC!5
夜の街を駆け出せば、それはもう体はビクビク震えてしまっている。
こんなにも情けなくていいのか俺は?
しかし、突然猫の姿になって街を彷徨いながらどこに居るのかも分からない猫二匹と、坂崎を元に戻す為の情報を集めなければならないこの状況。そりゃあ頭が困惑するのも仕方ない、と言い訳してみる。
ナカノに指示されるので、俺はその後ろから付いて行く。
時々車道を通る車が恐ろしい。物凄い音とスピードを出しながら俺を狙ってくる怪物のような存在に思えてくる。人間の時でさえ車には気を付けてないといけないのに、こんな小さな体じゃなんの抵抗も出来ずに吹き飛ばされて‥‥
ゾワゾワッと背筋を通った悪寒が不気味に感じた。
高所恐怖症な故に、家の塀の上を歩くのも怖い為結局は道を歩いて行くしかない。溝を通ったりもするけど。
ナカノに付いて行けば、大勢の猫達とも出会えた。見かけない猫だな、と威嚇されたり、優しくどうしたの?とあちらから尋ねてくれる猫、こっちが尋ねても無愛想にしてどっか行ってしまう猫、様々だった。
俺はただ黙って過ごしている。何か口を滑らすといけないので、極力黙っていた方がいいと言われたからね。
そんなナカノは俺の左耳に付いているピアスの存在を知っているか?と猫達に尋ねる。しかし、誰もこのピアスについて知ってる者は居なかった。
「そう‥。ありがとう」
「そういえばさっきも同じ質問されたよ。君みたいな飼われてる小綺麗な二匹にさ」
「その二匹はどこにっ?」
「多分、王の所じゃないかな?」
「王?」
俺とナカノは口を揃えてその単語を発した。
「うん。王なら何でも知ってると思うから、その方に会ってみれば?って言ったら行っちゃったよ」
「その王ってのは‥?」
「君達飼われてる猫には分からないよね。あの方は俺らみたいな野良猫の面倒を見てくれるとても優しくて賢い方なんだ」
「そ、その王が居る場所はどこですかっ?」
「この先をまっすぐ行くと大きな公園がある。そこの公園の森林に住んでいるよ。でも気を付けて。王の周りには優秀な護衛が付いているから」
「分かった。沢山教えてくれてありがとう」
「行こう、ナカノ」
「えぇ、すぐに行きましょう」
その猫の情報を頼りに、俺とナカノはすぐ様公園へと走り出す。ていうかここの近くにそんなデカい公園があったっけな?と疑問に思ったが、俺の知らない内に色んな物が作られているんだなと自分を納得させた。
しかしな‥その猫の王様とやらに会えるのだろうか?確かにそっちへ向かっていったドングリとシッポナとなら会える可能性は高まるけど。
「ねぇ、ナカノ」
「はい?」
「その猫の王様にはどうしたら警戒されずに近付けると思う?」
「きっと、その王は私達の事をすぐに受け入れてくれるわ」
「どうしてそう思う?」
「そのピアスですよ。王が知らない筈ない。人間から猫になれる代物なんて‥そうどこにでもある訳じゃないし。もし警戒されても、その時はサクライさんがその場でピアスを取り外せばいいのよ」
「信じて貰えるかな?」
「そのピアスを取り外してサクライさんが人間に戻れたらの話しですけど、ね」
ナカノの最後のセリフにゾッとしたのは言うまでもない。俺も坂崎みたいになっていない事を願うしか出来る事が他にない。
‥くそっ、今はそんなマイナスな考えは捨てるんだ。坂崎を助けるんだろ?だったら他の考えは捨てて、今に集中しろ。
自分に喝を入れ直し、首をブンブン振り払っているとナカノが「あの公園かしら?」と俺の方に顔を向けながら聞いてきた。慌ててパッと真っ直ぐそちらを確認すると、突如現れた大きな木々。
夜というせいもあり、うっそうと‥っていうレベルじゃなく、その先の森林は真っ暗ではないか。しかも結構広い。
ナカノが居る目の前なので「怖い」とも言い出せず、ただ黙ってジッと目の先にある森林を見つめるだけになってしまっていた。
ナカノも若干怯えてる風にも見えるが、自分を言い聞かせるように「行くわよ‥」と呟く。
勇敢な素晴らしい猫だ。
そうしたら俺だって怯えてちゃいけない。スウッと息を吸っては吐いた後、小声で「よし」と呟くとナカノと一緒に暗闇の中へと飲み込まれるように進んで行った。
ここに坂崎を元に戻す手掛かりが落ちていればいいのだけどな‥
どうか猫の王様がピアスについて知ってくれていますように、と心の中で願ってゆっくりとした歩調で歩く。
すると、パキッ‥と木の枝が踏み潰された音のような物が聞こえてきた。
ドクンッ‥‥
「なんだ‥?」
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