桜井がマモン様にオレの事を掛け合っている声が聞こえる。
止めさせたいのに全然言うことを聞かない体。
『寿命が近づくにつれて症状はひどくなっていく。今日のはそのはじまりだよ』
そうか。
オレの体はこうやって弱って行くのか。
コレが死ぬはずだった罪人の運命をねじ曲げてしまった代償……
段々と弱っていくなんて正直に言えば怖い。
兄が居なくなった後、壊れそうな心をマモン様に救ってもらい罪人とはいえ72番や桜井と過ごす日々を過ごして来た日々は普通の人生ではなかったが決して悪くはなかったとは思う。
だから後悔はしていない。
『できないなんて言ってないけど?このままでは悪化していくのはどうしようもないって言ったつもりだったんだけど?』
マモン様相手に桜井がなんとかしてくれようとしている。
その気持ちだけで嬉しいからムリをしてマモン様を怒らせないでほしい。
『……俺と高見沢の命を還せば船頭は苦しまないようになるのか』
マモン様の言葉遊びに焦れた桜井が直球勝負しているのが聞こえた。
『そうだと言ったらどうする?』
『それならば…』
桜井の答えなんて聞かなくても分かる。
そんなの許さない。
止めなくては。
ちょっとだけでいい。
動け!!
「幸桜!?」
震える腕を桜井の声のしている方に伸ばせば指先が桜井に当たったらしい。
気づいてくれた桜井がマモン様との話を中断してオレの手を握り返してくれた。
桜井の温もりに気が抜けそうになる自分の心にもう少し、と気合いをいれて握り返す。
「桜井…ダメ。ダメだから……」
ようやく絞り出した声に桜井が頷いたのを確認してオレはもう一度意識を手放した。
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