「……俺と高見沢の命を還せば船頭は苦しまないようになるのか」
こっちが訊けば 掴み所のない言葉で逃げる。
それを追いかければさらにかわされる。
だからと言ってこっちが引けば突っ込んでくる。
ホントにこいつムカつく。
イラつけばマモンの思うつぼにハマるのを承知で直球を投げてみた。
これ以上、幸桜の苦しみを長引かせたくない。
「そうだと言ったら?」
それならば答えはひとつ。
そんな事で良いのなら。
そう返事をしようとした時、背中にポンと何かが当たった感じがした。
振り返れば幸桜が一生懸命に俺に向かって手を伸ばしていた。
慌てて幸桜の手を取ると少し表情が和らいだ気がした。
「ダメ、だから。許さないから……勝手な事したら、絶対に…許さない」
でも、と言いかけた俺の言葉を遮って苦しそうにしながらも幸桜は続けた。
「約束、は…守れ……」
「約束?」
繰り返すと小さく頷いてずっと守るって言ったくせに。と呟いた。
あ……
幸桜はあんなに前の事を覚えていてくれたのか。
出会ったばかりの頃の約束を。
「また、桜井が…居なくなるなんて、イヤだ。……もう…ひとりには…なりたく、ない」
そこまで言われて気づいた。
ずっと自分を守ってくれていた兄貴を目の前で殺され、そしてひとり残された。
俺も幸桜を守ると約束した後、目の前で死にかけた。
側にいる人間が目の前で、なんて普通は何回も体験するもんじゃない。
「…分かった。約束は守るよ」
頷くとホッとしたように目を閉じた。
俺は幸桜がここにいろ、と言うのならお前を置いてどこにもいかない。
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