……気がついたら見たことのある部屋にいた。
「…ここは……」
マモン様の部屋か?
仕事をしていたはずなのにどうして?
記憶をたどればそういえば倒れたんだっけと思いあたる。
寝かされている大きくてフカフカなベッドはマモン様が人間の姿の時に使っている部屋のものだ。
なぜここにいるのか?倒れた後の事がよく分からない。
このまま寝ているのも、と思って起き上がろうとしてみれば左手が上手く動かせない。
見ればなぜか桜井がオレの手を握ったままベッドに顔を伏せて寝ていた。
「起きたのかい?」
マモン様の声がした。
いつの間にか桜井の後ろにマモン様が立っていらっしゃる。
寝たままも失礼だと起き上がろうとしたらマモン様にそのままでいい、と止められた。
「…ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「ホントだよ」
「……」
「坂崎が倒れてから丸二日、こいつは離れないし。仕事は滞るし」
マモン様は桜井を冷たい目で見下ろす。
…二日も寝てたのか。
「さっきまで起きてたんだけどね。ついに力尽きたみたいだよ」
桜井がずっと付いててくれたのか。
「罪人が近くに居るなんて不愉快だ。その男が起きたらさっさと連れて帰っておくれ」
マモン様は言うだけ言って姿を消してしまった。
桜井が起きたらって事は起きるまでは居てもいいって事か。無理に起こして帰れと言わないあたり、悪魔なのに優しいお方だ。
桜井の寝顔をこんな風に見るのは初めてかもしれない。
そうか。
いつも桜井はオレより先に起きてるしオレが部屋に入った後で自分の部屋に入る。
だから寝顔をちゃんと見たことがなかった。
今さらながらずっと見守っていてくれていたことに気づいた。
なぜかずっと苦しかった心がフッと軽くなった気がした。
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