コン、ココンッ
着替えが終わった頃を見計らったかのようにドアをノックしてくる音がした。
いつもの桜井の音とは違うそれに首を傾げていると返事も待たずに珍しく72番が顔を出す。
「ねぇ、船頭さ~ん」
ドアから半身だけを覗かせている。
部屋に入る気は無いらしい。
「あのね~ 俺の事、どう思ってるぅ?」
はぁ?
突然の質問に返事できないでいると72番は勝手に先を続けた。
「この前ぇ~船頭さんが倒れた時にね、このまま船頭さんが居なくなったらどうしよ~って思ったの。先が短い人生だけどぉ船頭さ~ん、俺のモノにならない?」
「はぁ?」
言ってる事は告白っぽいが言葉遣いがいつもの本心を隠す話し方だ。
何か企んでるのか?
嫌な予感しかしない。
はっきりと断ると72番はニヤッと笑った。
「だよね~。でも、女っ気の無い島でずっとガマンしてきたんだよぉ?もうすぐ死ぬなら最後に女抱いてから死にたいの~ だから覚悟しといて、ね?」
「誰がお前なんかに」
言い終わらないうちに諦めないから、と言いながら72番はドアを閉めてしまった。
誰が、お前なんかに。
もう一度呟いてみた時になぜか桜井の寂しげな瞳を思い出してしまった。
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