「さ、くら…い……」
なんで?
ここにいるんだ?
今、オレはマモン様の部屋で…
そうだ。
オレは……
「あぁっ……イヤだっ!!」
桜井の向こう側に72番が見えた途端に今起きていたことを思い出して震えてきた。
怖い……
「幸桜?」
震えるオレの手をしっかりと握りしめていてくれる桜井の声と心配そうにオレを見る目を見たら自分の中の張り詰めていたものが一気に弾けとんだ。
「桜井、オレ…」
桜井にしがみついて情けなくも大泣きしてしまったオレに戸惑いながらも不器用に抱き締めてくれた優しい腕にさらに涙が止まらなくなる。
出会った頃もこうして泣いてしまったっけ。
桜井はあの頃から変わらずにオレを受け止めてくれる。
「高見沢、幸桜に何をした」
今までに聞いたこともないような桜井の低く響く声がする。
72番を見て反応した事に気づいていたのだろう。
「俺は、な~んにもしてないよぉ?」
桜井の恐ろしい雰囲気を感じていないわけでも無いだろうにいつもと変わらない軽い返事が聞こえる。
「桜井の声になんだろう~ってここに来たんだからぁ~」
落ち着いて考えれば72番がオレに何もしていないのは分かる。72番が来たのは桜井の後。そしてオレとの間に桜井がいる。この状況では72番だって何かできるはずはない。
だからあれも夢。
ただの夢であったはず。
ただしものすごくリアルだっただけ。
まだ夢の中の72番の手の……
忘れられない気持ち悪さが這い上がってくる。
72番の返事に桜井が苛立っているのが伝わってくる。
ちゃんと説明しなければと思うが強ばっている体からは上手く声がでない。
「幸桜、もう大丈夫だよ」
声がでない分、しがみつく力を強くすればオレの方へ意識を向けてくれた桜井は72番に向けていた殺気を一気に柔らかなものに変えた。
オレを落ち着ける事を優先してくれたらしい。
「……高見沢」
「はーい、ジャマ者は消えまーす」
72番の姿が視界から消えて桜井の腕の中で少しだけ安心することができた。
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