「桜井……」
「この島で生きているのは幸桜が助けてくれたから。だから幸桜のために生きていこうって思ってた」
俯いたまま桜井はポツリポツリと語り始めた。こんな風に胸の内を語るのも初めてか。
出会ってからどれだけの言いたいことを我慢してきたんだろう。
そんな風にしてしまったのはきっとオレだ。
桜井はいつもオレの気持ちを聞いて優先してくれてた。でもオレからちゃんと桜井の気持ちを聞いたことがあっただろうか。
「ずっとロクでもない人生だったから助けてもらった新しい人生ではマトモに生きたいと思ってた。でも大事にしたいと思った人には嫌われる人生なのかな?」
桜井は自分の右手を強く握り込んでその拳を見つめている。
何を言っているんだ?
オレの頭が理解できないうちに桜井はどんどんと先を続ける。
「今、幸桜に拒否されて初めて気づいた。幸桜を守りたいっていう思いは俺の独りよがりだったんだって」
ちょっと待て。
オレがいつ桜井を拒否した?
もしかしてさっき恥ずかしさについ突き飛ばしてしまったから桜井は誤解しているのか?
「幸桜に『桜井』って呼ばれる度に必要とされてるんだと嬉しかった。でも、ここには他に高見沢くらいしか幸桜が頼れる人間がいないからそりゃ、嫌でも俺を呼ぶしかないよな」
高見沢は一生懸命だけど不器用だから頼りにならないことが多いし、って桜井……
それは72番に失礼じゃないか?
それにしても桜井はそんな風に思ってたのか。
オレが桜井を仕方なしに頼っていたと。
違うのに。
いつも側に居てくれる桜井をどんなに頼りに思っているのか、言わなくても伝わっていると思っていた。
こんなにも長い時間一緒にいるのに言葉にしなければ伝わらない思いがもどかしい。
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