「今なんて‥?てか、なんで悪魔が知って‥?」
驚きを隠せない俺に対して悪魔は「坂崎が言ってた」と返す。で、でも坂崎だってなんで急にそんな事‥
「アイツか?」
未だに視界を塞いでいる天使は墓標の方にチラッと目を移せば、何かがそこに居たようだ。そのアイツとは、俺の中で一人しか確信出来なかった。
もうずっと、何年も前の事だ‥。
「さ‥坂崎、本当に‥アイツなのか‥?」
悪魔の中にいる“坂崎”に聞いてみれば、悪魔が「アイツに間違いないって坂崎が言ってる」と返してきた。
そんな‥、なんでこんな場所に?
すると天使が「救って欲しくて桜井をここに呼んだのか」と呟いた。救って欲しい?俺に?出来るわけがない。
「どうする桜井?」
「どうって‥」
天使に聞かれ、俺は次の言葉に詰まった。救えるものなら救いたいに決まっている。けど、俺がまた墓の前に立ったら他の死者達に魂を持って逝かれてしまう。俺はもう死ねないから。高見沢と坂崎の隣から離れる事なんて‥。
でも、アイツが寂しがってる。少しでも一緒に時を過ごすべきか?
「ハァ‥。分かったよ桜井。俺と悪魔がお前の気持ちを伝えてやるからここで待っとけ」
「けど‥」
「安心しろ。成仏させてやるよ。“高見沢”と“坂崎”の魂の本体が“風の詩”の大地にあるんだ。二人に頼んだら安らかに眠れる場所へと移動させてくれるってよ」
「そんな事出来るのか?」
「言っとくが俺の中にいる“高見沢”や“坂崎”だって死者なんだぞ?お前には見えないかもしれんが、ずっと桜井の後ろに二人の幽体がおるんだからな」
「うそっ!?」
バッと振り返ってもやはりそこには誰もいない。俺に霊感があるわけでもないしな‥。見えなくて当たり前だ。
「というわけで、桜井‥アイツに何か言いたい事はあるか?」
悪魔に聞かれ、俺は「もう楽にしてくれって‥」と言いかけてると二人はピューッと凄い勢いで墓まで行ってしまった。俺の言葉って‥‥
でも、逢えない俺なんかより中にいる高見沢と坂崎がちゃんと伝えてくれるだろう。絶対に、
待つ事数分、天使と悪魔が戻ってきて笑顔で「もう大丈夫だぞ!」と言ってくれた。
--桜井‥
ありがとう‥--
なんだろう‥
今、一瞬だけどアイツの声が聞こえた気がする。風の流れにのって「ありがとう」って言ってたような‥
「今、“高見沢”と“坂崎”が“風の詩”の大地へとアイツを運んで行ったから安心しろ」
「だから暫く俺と天使の中には二人がいないけど、心配するな。ちゃんと帰ってきてくれるさ」
「分かった。二人にも御礼言わないとな‥」
ザアァ、と吹く柔らかい風がアイツを風の詩の大地に運んでくれる。安らかに眠れる。もう、苦しまなくて済むんだからな‥。良かった‥
振り向けば“悲しき墓標”がそこにあるが、俺にはその行為は許されなかった。また天使に視界を塞がれてしまうだけだ。
でも、今もあそこで彷徨っている魂達を救う事が出来ないだろうか?このままだなんて悲しすぎる。
チラリと二人に目をやれば悪魔が「救えない」と言い、首を横に振った。そして天使が続けるように説明をする。
「数が多すぎる‥。アイツを連れ出そうとした時もかなり手こずっていたからな。今の俺達や桜井がどうにか出来る相手じゃない」
「余計な情を持つと反感を買うから気をつけろ桜井。ああいう奴らほど厄介なものはない」
二人が言う通り、俺には何も出来ない。可哀想だと思ってしまう事さえダメなのか。そうだよな‥生きている俺にそんな事言われたら憎いに決まっている。
俺は静かに目を伏せ、手を合わせながらあの場所にいる魂達が一日でも早く成仏出来るよう祈った。
「‥よしっ!遅れた分を取り戻してまた歩くか!」
「たまにはちゃんとした宿に泊まりたいだろ?」
「うん。最近ずっと野宿だったから‥」
「なら早く行こう」
「高見沢と坂崎はどうすんのさ?」
「二人と俺と悪魔は繋がっているから何処に居てもちゃんと帰ってくるから心配するなと言ったろ」
あぁ‥そっか。それならそれで旅を続けられてる。
旅は素敵な出逢いもあれば危険な事だってある。それを覚悟で俺は旅人になるんだ。
風の詩の旅人になる為に‥。
*
この曲を小話にするのも抵抗ないと言えば嘘になる‥が、悪い方向へは行かないように努力はした
というより、この曲を聴くタイミングというか機会がないです。滅多に聴かないけど‥
実話と言えば実話。作り話と言えば作り話
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