MPⅡ 思い出・その後編 - 14/20

二人の王子様

 

あの日‥

 

サカザキの誕生パーティーを行った日の事は二度と忘れない。

まさかあんな大事故になるとは思っていなかったさ。俺も、サカザキも、他のみんなも。

 

「サカザキはっ‥?サカザキがどこにも居ないぞ!?」

「コウノスケ様を捜せっ!」

 

きっと岩か何かに当たった船が壊れた時、俺とサカザキは乗客や城の者たち全員を救命ボートに乗せた事を確認した後に自分達も乗り込む筈だった。

先に行けと言ってくれたサカザキの言葉に甘え、俺はその時サカザキより先にボートへと乗り込んでしまったのだ。本当にこの時ほど後悔した事はなかった。

 

まだ船の上に居るサカザキに「早く降りて来い!」、そう叫ぼうとした途端にそれは起きた。

あろう事か、船が音を立てて崩れていくではないか。

 

「サカザキィィイイイッ!!」

 

その大声も虚しく、俺達は一旦引き上げる事になってしまう結果になり、捜索しようにも船が大破したせいでここは危険だと言われ、何も出来ない状態。

俺としては飛び込んででもサカザキを救いたかったが、周りが必死に止めてくるせいで結局は何も出来ずに終わってしまった。きっと、サカザキに続いて俺までもが居なくなるのはこの国にとっては危機的状況になるだろうから。

 

陸に連れて行かれるまで俺は周りに反対していたし、ずっと取り押さえられていたんだよね。その日も一日ずっとサカザキを救おう、助けよう、まだ間に合うと俺だけが言っていた気がする。

きっと周りは諦めていたのだろうけど、俺はもう二度と大切な人が海の事故で居なくなる‥という現実をどうしても避けたかった。

 

両親に続いて大事な親友までもが海の餌食に‥

 

だから海は嫌いなんだ。だから海に近付きたくなかったんだ。あの時俺がサカザキに海はやっぱり危険な場所なんだから、と伝えておけば良かった‥といくら後悔しても後の祭り。

哀しみに打ちひしがれていた俺であったが、次の瞬間‥外から何やら絶叫のようなものが聞こえてきた気がした。

 

「え?」とは思ったものの、この声は明らかにサカザキだった。

 

そう確信した俺は、その場に居た数人の使用人達を引き連れて浜辺の方へと走り出した。

すると、そこには浜辺で寝ているサカザキが本当に居たのだが、何故か石に頭をぶつけた形跡を残しながら血は流れ、気絶していたって所か。

思わず「血流れてんじゃん!?」とツッコミを入れてしまった俺だったけど、サカザキが無事だと知ったその時の感情は今にも爆発しそうなほど嬉しかった。

 

サカザキが生きてくれていた。夢じゃない、霊でもない。実体がそこにある。

 

俺はサカザキを抱えながら何度も「良かった‥」と呟いてたらしいのだが、あんまり覚えてないんだよね。

 

そして俺達はここから始まったと言っても過言ではない。

 

サカザキを助けてくれた人魚‥タカミザワの存在で、俺達の全てが変わっていったような気がした。

 

...

 

「タカミザワはさ、サカザキの事どう思う?」

「え?サカザキ?」

 

その日、岩部に座り込みながら俺とタカミザワはそこでボーッとしていた。

 

俺は足だけを海に入れ、タカミザワは尾ひれだけを海に浸けては海中でユラユラと、大きなサファイア色した尾が静かに揺れている。

隣に居るタカミザワは俺の質問に「サカザキかぁ‥」と呟きながら、暫く何かを考えてた。

 

彼と出会ってまだ半年も経たない頃の会話だったと思う。

お互いに何かを意識し始め、おかしな関係になりそうな事を色々と覚悟はしていたかも。

ようやくタカミザワが「サカザキはねぇ、」と喋り始めると、俺は彼の声に耳を傾けながら真剣に聞く事に専念する。

 

「女が好きで、遊んでばっかってイメージかなぁ」

「やっぱそうだよねぇ」

 

誰が見てもそういう返答しか返ってこない。まぁ、こんなもんか‥と思ってた矢先、タカミザワが「でもね‥」と言葉を紡げようとした。

 

「僕にはね、サカザキって本気で恋すれば凄くいい男になれるってのが分かるよ」

「本気で恋‥?」

「うん。アイツは遊んでばかりいるからあんまりいいイメージがないって思われがちだろうけど、僕には分かるよ。サカザキの男らしさ」

「そういうもんかね?」

「そういうもんだよ。僕の力はよーく当たるもんっ」

 

するとタカミザワはコテン、と俺の肩に頭を預けたかと思うと「もちろんサクライは言うまでもなく素敵だよ」とお世辞にはとても聞こえない台詞を伝えてくれた。

 

そうか。サカザキが本気で恋‥をね。

遊んでばっかだからその考えが今まで全く思い浮かばなかった。

 

「多分、俺もサカザキもお前が女だったら本気で恋してたと思う‥」

「‥もう、そういうのはいいって。気持ちだけで充分だよ」

「けど‥」

「知ってるよ。僕だってサクライの女になれたらどれだけいいんだろう、っていつも考えちゃう。だけど僕達は親友だもん。どんなに好きでも一線は超えないよ」

「‥そうだな」

 

どれだけタカミザワは我慢してたのか、って考えても今じゃもう分からない。

 

だけどアイツは俺とサカザキの間で揺れていたし、翻弄してしまっていたかもしれない。可哀想だけど、俺はタカミザワの願いを叶えてやれなかった。

 

でも、その答えを出したのはタカミザワ自身。

 

俺とサカザキはその後、この世でとても大切な人が出来るまで、タカミザワはいつまでも応援してくれていて、心の中では泣いていたのかもしれない。

 

あの時の最後の別れの涙と笑顔。

あれはタカミザワが俺達の事を見守ってくれる証しだったのかもな。

 

アイツには沢山辛い思いをさせてしまった。俺達がバカだったから二度もタカミザワの事に気付いてやれず、結局は彼を海の世界へと帰させなければならない選択しか出来なくさせてしまい、もう二度と会えないようになってしまった。

 

時々聞こえてくるタカミザワの声だけが、今の俺とサカザキの一つの支えでもある。

 

俺もタカミザワと出会ってから色んな事があったし、報われない恋もしてきた。だけど本気で好きになれた人だって今は隣に居る。

サカザキも今までモテてきた分、今の彼女は彼に見向きもせずに、俺ばかり見ていただけあって相当苦戦してたっぽいけどな。

 

だけど、今じゃその彼女はサカザキ一筋。

それに応えるかのようにサカザキもすっぱりと遊びをやめ、彼女だけを見つめてた時は、本当にタカミザワの言ってた事が当たった‥と内心驚いたけれども。

 

まぁ、こんなもんかな。

俺が紳士で男らしいって言われてる理由、少しは分かった?

 

王子になれた理由もやっと分かったよね。

 

王にはなれないけれど、俺はサカザキを見捨てたりするつもりは一切ない。彼の支えになる為に、俺がしっかりしなければならないからさ。

きっと、彼は俺の届かない所まで行ってしまうかもしれない。

 

だけど俺はサカザキと生き続ける。

 

サカザキが俺の事を親友と言ってくれる限り、俺は彼の一番の親友で居たいし、良き理解者でありたい。この気持ちは幼い頃からなに一つ変わってないもの。

 

だから‥

タカミザワ、俺とサカザキの事を見守っててくれよな。

 

その綺麗な海の中で。

 

 

ー言われなくても僕は二人を見守ってるよー

 

送信中です

×

※コメントは最大1000文字、10回まで送信できます

送信中です送信しました!