MPⅡ 思い出・その後編 - 4/20

人魚で際どいシリーズ

 

「ハァ、‥ハァ‥」

疲れた‥

「悪かった‥。もう、寝てていいよ」

 

愛しい人に声を掛ければ、俺はベッドから降りて散らかっていた衣服を拾い上げ、それに着替えてからベッドの中にいる彼女へと唇を落とした。

最後のキスは甘く優しく、貴方を包み込むようなそんな口付け。

 

それが終われば、向かう先はバスルームだった。さっき着た筈の乱れた服を乱暴に脱ぎ捨て、そのまま俺はシャワーを手に取りどれ位の熱さまで耐えられるか、限界を試す感覚かのように温度調節を赤が示す方へと捻った。

流れ出すのは熱過ぎるのではないかと言われるくらいのお湯が頭にザッと降り注がれる。一瞬その熱さにびっくりして体が跳ねてしまったが、その後は気にする事なくそのままシャワーを浴び続けていた。

 

「ちくしょう‥。俺は最低だ‥」

 

あの人に対しての行為が、とかではなく、頭にチラつく海の中にいるアイツの顔が‥離れない。

今回に限った事ではない。いつもいつも‥俺は終わった後に後悔している。どうしたら全てさっぱり諦めきれる?
ここ最近は確かにアイツの事を前程考えなくて済む感じは何と無く気付いてはいた。それは少し前、タカミザワが俺にキスしてきた事に関係があるのは絶対だ。

 

俺があの人の事を一番に考えるよう、タカミザワに抱いていたあの恋心にも似た感覚を忘れされるよう‥そんな俺の気持ちをアイツがコントロールしているかのように感じる。

俺だってあの人を一番に考えているさ。好きなんだから。もう、裏切られたくないから。一生懸命に愛して、その愛に応えてくれるような人だと俺は信じているから。

 

でも、でも‥どうしてもタカミザワの顔が頭を過る。

 

ここに居るのが女になったタカミザワならどれだけいいんだろう。そうしたら俺はこんな逃げるように部屋は出て行かなかった筈だ。

重ねているなんて‥似ても似つかないのに、どうしてもアイツの顔が出てくる。

 

まだ、諦めてない部分がある‥

こんなに申し訳なくなるなんて‥あってはならない事なのに。浮気なんかしていないし、別の誰かを抱いた訳ではない。しかし、この罪悪感にも似た感情の正体は、やはり俺がタカミザワに対してまだ求めているせいだ。

 

男のアイツに女になれなんて、そんな無理な要求‥それに、こんな思いをあの人に打ち明けられるなんて以ての外だ。全てを壊してまで女になったアイツを手に入れて、幸せにする自信は俺にはない。

サカザキなら違ってたかも知れない。俺はアイツと違って女の事なんて殆ど分かっていないから。扱いに慣れてるアイツになら‥タカミザワを幸せに出来たのかも知れない。ましてや王位を持っていて‥こんな俺とは違う、生まれた時からの王族。庶民だった俺が適うもんか‥。

 

「ぁっ‥」

 

排水溝に流れていく湯気が立つ俺の汚れた考えを流してくれるであろう熱いお湯だけど、そんなものに任せたって何も変わらないし、俺の汚れた考えなんか流しきれない。

 

当てがった唇がアイツなら‥

 

背中に回してくれる白くて細い腕が、触れ合う互いの生まれたままの姿である肌が、俺を呼ぶその声が、俺を欲して‥求めて、共に果ててしまうのがアイツなら‥

 

そう思う度に俺の心は削れていく。

何も悪い事はしてないのに、アイツが女ならという考えだけが俺を蝕めてしまっている。

 

けど、アイツがもし俺に抱かれて、幸せを共有出来たとしても‥アイツはきっとサカザキの方へ行ってしまう。そして身体を許し、共に快楽を覚え、抜け出せなくなる罠を仕掛けられてしまえば俺に勝ち目はない。

 

サカザキと俺とじゃ経験が違い過ぎる。

だから俺は‥きっと、きっと‥アイツに酷い事をしてしまいそうな気がしてならない。

何処にも行かないよう、俺だけを見つめてくれるよう、アイツの自由を奪い、動けなくして、ただ一方的に愛す事しか出来ない。

 

サカザキとタカミザワが喋っている所だけで耐えられなくなりそうだ。そしてその後、俺はタカミザワを無理やり連れ出してベッドに押し付けて、その細い腕を縛り上げてから‥‥その後どうなる?

 

驚きを隠せない表情でいるであろうタカミザワは俺を見てどうする?「やめて」と言うか「サクライはこんな事しないよね?」と不安気に聞いてくるアイツの像が浮かび上がる。
けれど、俺はお前を前にしたらこの抑えきれない衝動を身に任せてしまい、お前を上手くは愛せなくなりそうなんだ。

無理やり始まる行為にお前は受け入れてくれる?こんな愛し方しか出来なくなりそうな俺をお前は好きだと言ってくれる?

 

人魚の姿では見る事の出来ないお前の長い綺麗な脚に唇を這わし、感じてくれる?それだけでもいいんだ。俺は上手くなんかない。サカザキには勝てないから‥だからもっと違う方法でお前を愛さないと、手放さないようにしないと。

きっと泣いているであろうお前の涙を見て益々興奮を覚え、俺はお前をめちゃくちゃにしてやりたい。普段の“優しさ”が、まるでウソかのように‥ただ、乱暴にお前を想うが為だけに一晩中愛で続ける俺に豹変するお前は受け入れてくれるのか。

 

お前を気持ち良くさせる自信なんてないし、そういうのに関してはサカザキのが上回る。だからこそ俺はお前を手放さない為にも繋ぎ止めてしまう。逃げ出さないよう、自由になれないお前を激しく、時には優しく‥その一つ一つの仕草や動作を見て、感じてさえくれればいい。

 

そして最後の最後に‥優しく抱き起こしてから長い時間肌の温もりを確かめ合って‥そして忘れさせない熱く、甘くとろけるような口付けを与えさせ、頭を麻痺させてしまえばそれで終わり。

 

どれだけお前を愛しているかが伝わっていればいいか。それはタカミザワなら解ってくれる筈だ‥。

女になって、男だった記憶はお互いに消滅させてしまえばいいのに‥。

 

お前を求めているのは俺だけじゃない。俺の幼い頃からの親友がすぐ隣に居る。閉じ込めようとすれば溢れ出してくる想いから解放されない二人の人間の王子。それに決して応えてはくれない人魚の王子。

 

囚われたままの関係でなんかいたくない。

愛がこんなに哀しいものだなんて‥誰も教えてはくれなかった。

 

愛って、優しくて温かいものだとばかり‥そう思っていたから。誰もがそう口にするから。だから信じられない、本当の愛とやらを。

キュッと蛇口を捻り、シャワーを止めてしまえばポタポタと滴り落ちる雫だけが虚しく下に弾けていく。熱さのせいで少しばかりヒリリとする火傷のような痛みが今は丁度良かった。

 

「‥はぁ」

 

思わず零れてしまう溜め息を止める事は出来なくて、目の前にある鏡に自分の醜い姿を映し出せば、軽くフッと笑ってみせた。

格好悪くて‥恥ずかしい今の俺を愛して、なんてあの人に言う資格なんてない。

 

触れ合った指先から始まる熱情。絡まる舌の後を引く混ざり合った互いの銀糸がキラリと輝いた時‥

 

そこから全てが始まり、終わるような気がする。

 

目の前にいるのが‥女のタカミザワなら、なんて考えをもう殺したい。俺はあの人だけを愛していきたい。けど、それを乗り越えられない自分に憎悪と嫌悪と憎しみを覚える。

もう、いっそのことならタカミザワでもあの人でも‥どちらでもいいから一思いにさせてくれと頼めばどれだけ楽になれるのだろう。

上手く脱がせられないかもしれないし、もしかして演技をさせてしまってるのかも知れない。そう思うと何もかもが嫌になり恐くなる。

 

けど‥落ち着くのは確かだ。何も考えさせなくしてくれるだけで良かった。それからは流れに任せれば上手くいく場合が多かった。

でも、タカミザワにはそうであって欲しくない。俺を常に感じて欲しい、忘れないで欲しい、今ここに居るのは俺だけなんだと現実を突き付けたい。

 

「大好きだよ」と言えば「私も」なんて、「サカザキよりも?」と問えば「うん‥」と答えにくそうに返事をするお前を見て更に追い打ちを掛け、お前の方を何も考えさせなくしてやって、真っ白になった頭をまた俺で一杯にしてやりたい‥。

 

けど、それは決して叶うものではない。

 

アイツが女なら俺達の今の関係が保てなくなり、崩れ落ちる。そうなる前に‥というより、そうならないように俺達は留まっているんじゃないか。

 

「‥‥このままでいい。もう、求めたりはしたくない。悲しませたくない、泣かせたくない‥」

 

 

そう独り言を言ってから俺は自分が映っている鏡をバンッと叩き、そのまま浴室から出て行った。

 

 

「Complex Blueー愛だけ哀しすぎてー」

 

 

今回はサクライ王子側

表現もパスいるのか分からない、またぬる~いものでしたが、やはり少し前よりかは過激かなと思ったので(ー ー;)

ここまでくると人魚側になったらもう行為してる所書いちゃいそうな勢いで恐いですw
でも、頑張れば書ける気がしてきた(ぉぃ

 

サクライ王子はこの時点で大切な人を手に入れてますからね、中々の葛藤ですね。人魚が自制心の力を与えましたが、やはりまだムリなのかな?いいえ、これからです

人魚が願ってる事なので、サクライ王子もやがては大切な人を一番に考えていくし、人魚への持っていた恋心のようなものも薄れていきます

こんな関係を書いて許されるのは人魚くらいだけだもんな‥

 

だからこそ王子様達を大切にしていきたいです

 

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