罪人たちの舟10
翌日はほとんどの罪人たちが生きていられる最後の日となる事が多いので、今日ぐらいは多目に見てやる日。昨日の重労働も辛いが、実はこっちの自由を与えている時間のが俺はキツい。
たまに罪人同士で殺し合いになりかねないような大きな争いが起こったりもするし、当然逃げ出そうとする奴も現れるから。しかし、この島から出られた罪人は今までに誰一人としていない。
それは俺たちの先輩方が優秀であった為だと思うし、見れば一発で分かるくらい強そうな体型とオーラがある。そんな先輩から代々伝えられてきたたこの島での自分たちの役目が、どれだけ大事なものかを俺たちは沢山教えられてきた。
俺たちのように罪人を裁くわけでもないし、死を目の当たりにするわけでもないのに、この仕事に就きたいという変わり者は多い。それはきっと、罪人に対して良い感情を抱いてない人たちの集まりだからだろう。
そんな俺は、知人の紹介でこの仕事に就こうと思ったのだ。しかし、現実は甘くはなく、今ここに居る事自体が奇跡に近いのかも知れない。厳しい修行に強くなる為の精神統一など、あれ程までにもキツいとは思ってもみなかったから、挫けそうになったりもしたさ。それはこの仕事に就く人たちからすれば、誰もが一度は味わう挫折だと思う。
「‥‥。」
でも、俺がこんな仕事をしていいのか‥
こんなことを時々考えてしまう。俺よりも辛い目に遭った人たちのが遥かに多いと言い切れる世の中。仲間の六人も、自分たちの過去を明かしてくれた時はそれはもう残酷なものだった。
それでも俺は‥‥
大事な大事な妹だったんだ。
思い出す度に怒りが込み上げてくる。
数人の男たちに捕らわれ、抵抗する妹に容赦なく降りかかる暴力を受けた跡とも取れる痣。挙げ句の果てには、見てもいられない姿に変わり果てた妹が見つかった。
捜索願を出してから一週間後のことだった。
だからあの七十二番みたいな女を人間だと思ってないような奴が俺は大嫌いだ。心の底から嫌いなんだ。
人をまるでオモチャのように扱い、ましてや力のある男が力の弱い女に手を挙げるなど‥。復讐心しかなかったあの時の俺だからこそ、今この島に居るのだろう。罪人が死ぬほど憎いから。
「あぁ‥くそっ‥」
気分が悪くなる。
グルグルと嫌な思い出が駆け巡る頭を冷やす為、俺は少しこの場を離れて海岸へ目指す事にした。
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