罪人たちの舟 - 9/32

罪人たちの舟8

 

休憩の時間とは言っても、俺や他の仲間たちには一切休憩が与えられない。自分たちが休めば、コイツらが何を仕出かすかも分からないからな。ここに居るのは危険人物ばかりなんだから、常に目を光らせていないと何が起きるのやらって感じだし。

そしてそんな休憩時間も過ぎれば、再び作業に取り掛かって貰う。俺は自分が担当している罪人たちの人数を確認した後、今度は浜の方へと出て行き、流れ着いた大木等を片付けをさせていた。

 

なんか‥罪人たちにやらせてる作業って案外優しいような気もするが、罰はこの島に入る前からきっちり受けているからまぁいいかとは思うけども。

それに、最後くらい人間らしく扱ってやらなきゃ死んでも死にきれないだろうからな。クズはクズでも一応人間‥だから。

じっと罪人たちを見張っていると、二十四番が俺の所まで静かに足を運ばせてやってきた。

 

「そんな難しい顔をしてどうしたんです?話しなら俺が聞きますよ」

「罪人に話す事など何もない」

「そう仰らずに。‥やはり、我々のような者を扱うのは大変だと?」

 

質問には答えずにいると、次から次へと聞いてきやがる。それを聞き流そうとするが、一々引っ掛かる言葉が飛び出してくるではないか。

 

「家族は居ますか?俺、独身なんですよね」

「‥‥、」

「ご両親はこの仕事は知っておられるのですか?あ、兄弟とか居ます?例えば兄や妹とか‥」

「ッ‥。黙れ!!何をずっと遊んでいるんだ!?早く仕事に戻れ!」

「あぁ‥すいませんね」

 

それだけを言うと男は皆が居る場所へと戻っていった。

 

‥なんだ?あの男が何をしたかったかが俺には理解不能だった。俺に何をしたい?俺の家族の構成を聞いて何になるというんだ?

アイツは油断してはならないと目を付けていた人物でもあるので、これから先も警戒し続けなければならないな‥

 

 

桜井が皆の場所へ戻ると、作業をしている高見沢の隣に来ては「掴めた」と耳許で囁く。それに対して高見沢は手を軽く上に持ち上げれば、桜井もそれに気付き、二人の掌はパンッと乾いたいい音が鳴り響いた。

その二人の様子を近くからも、遠くからも窺っていた他の罪人たちは、ほんの一瞬だけ小さく坂崎に気付かれない程度に笑い合った。

 

「アイツの弱味は家族だ」

「へぇ。俺が見てた時は何も分からなかったけど‥」

「両親までは反応しなかったが、兄弟という単語を出した瞬間目の色が変わったな。あとはアイツの不安を探り出されば‥。そこを付け入らないと上手くいかない」

「さぁすが第一級ゴンベン(詐欺師)さん。頼りになるよぉ」

「そりゃどーも」

「さぁて‥段々と材料が揃ってきましたよぉ。本番が楽しみですねぇ桜井さーん」

「あぁ、楽しみだな」

 

そんな風に怪しく笑い合っている桜井と高見沢だったが、まだ坂崎にはバレていない。

好都合だと言わんばかりの表情で、彼ら二人は坂崎を一瞬だけ目にすると、そのまま作業を再開し始めてはこの場の空気に溶け込んでいってしまった。

 

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