罪人たちの舟 - 12/32

罪人たちの舟11

 

皆とは離れた場所にいた高見沢と桜井は、明日の事の為にと何やら話し合いをしている様子だ。

すでに二人の明日の作戦は、ここに居る犯罪者たちには拡散している模様。すなわちそれは、全員に協力して貰わないといけなかった為だった。なぜ昨日桜井が罪人たちを数人集めて話しをしていたかというと、まさにこの為だ。

 

桜井によってその数人からの情報がまた更に多くの罪人たちに広がり続けるので、彼が何もしなくても全てに桜井の作戦は行き渡る。

なので、ここの罪人たちは明日何をするのかは知っている状態だが、坂崎たちにはもちろん一切知られていない。

グラスに入ってる水を飲んでいる桜井の隣には高見沢が何かを考え込んでいるようだった。うーん、と唸る高見沢を見て桜井は「どうした?」と尋ねみる。

 

「明日さぁ、逃げ出すって言っても手錠か枷を嵌められるだろ?どうやって外すんだ?」

「油がありゃ十分だよ」

「油?」

「一昨日手錠を手首に嵌められてた時確かめていたが、さほどキツくはなかったからな。あれなら油を手首に垂らせば滑りやすくなるから頑張れば抜ける筈だ。数人に油を持たせておけばいい。後は自分たちで勝手に枷を壊していく筈だし‥、キッチンに行けば油くらいあるだろ」

「ふぅん。ならぁ、あの船頭は俺達二人でどうにかしようか。殺すのは惜しい。痛めつけちゃえば、ぜーったいいい反応をしてくれそう!」

 

それならばまた情報を回さないとな‥と一人考え込む桜井。昨日流した情報では、船頭は一人残らず全員殺せとの情報だったから。

 

「あ、そうだ。あの船頭痛めつける前に不安を煽ってからにしろ。きっとボロが出て来る筈だからな」

「そぉだねぇ!楽しみになってきた」

「人の心ってのは簡単に掴めるもんだ。今回は騙すってより、情報を聞き出す事のが多かったが‥。俺は不安をさらけ出した相手に付け入る詐欺師だ」

 

余っていた水をグッと一気に飲み干し、持っていたグラスを壁に叩き付ければ、ガシャンと大きな音を響かせる。
そのせいで小さなガラスの破片が飛び散ってきたので、高見沢は顔を少し背けながら一瞬目を瞑る。

 

「俺は人の心が壊れる前に姿を消しちまうからよ、船頭の心が崩れた後はお前に任せた」

 

それに対して「もちろん」と得意気に返す高見沢。しかし、その数秒後には少し困らせた表情を見せてしまっていた。

それに気づいた桜井が「どうした?」と尋ねてみると、彼は諦めたかのような表情をして何かを呟いていた。

 

「男相手にそういう事した事ないからさぁ‥。ま、大丈夫だと思うけど」

「そういう事って‥」

「あっ。あんま変なことはしないよー?女と男じゃいたぶり方は俺の中じゃ基準が違うから、どーしてあげようかな~?って思っただけー」

「あー‥そう。俺も別に男をネチネチといたぶる趣味ねーし、そこはお前の自由にしていいけどよ‥」

「ちょっと~引いた目ぇしないでよぉ!言ってるじゃーん、俺は女が好きだって!」

「わーかった分かったから」

「もー、ホントなのにぃ」

 

相変わらずヘラヘラと笑う高見沢に対し、桜井は少し不安に思うところはあったが、ここは高見沢を信じるしかない。

 

彼ら二人も明日の用意の為に再び動き出す。

 

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