罪人たちの舟 - 13/32

罪人たちの舟12

 

驚く事に、この二日間は何もなかった。ビックリするくらい何も起こらなかったので、こんな落ち着いた状態のが逆に珍しいから少々戸惑っていたりもする。しかし、聞き分けも良くて大人しい奴らばかりなので俺は安心していた。

主に報告する為、俺と仲間は島の東にあるとてつもなくデカい屋敷へと向かう。それぞれの主の元へと向かい、俺の行き先はもちろんマモン様の部屋。

 

重たい扉を開け、白くて広すぎる部屋へ入れば、大理石の舞台の中央に置いてある椅子に退屈そうに座り込む主。今は人の姿をしているが、これが悪魔。マモン様は狐の化身でもある。それはどのお方もそうで、全員が人の姿をした動物の化身。本当の姿は流石の俺でも震え上がるくらい恐ろしい。

舞台の少し手前までやって来て跪けば、「報告をしろ」と命令をされる。

 

「はっ。今回の罪人は皆大人しい者ばかりであります。私たちもこの二日間、さほど苦労は致しませんでした。これなら明日の裁きはすぐにお済みになられるでしょう」

「‥さっき、レヴィアタン(嫉妬)とアスモデウス(色欲)と話しをしておったが、お前たちはあの罪人共をどう見ていた?」

「どうと言われましても‥いつも通りにしておりましたが」

「節穴な人間だ。‥‥もうよい、下がれ」

「えっ?‥‥はい」

 

今のマモン様の言葉に引っ掛かったが、逆らったり反論することも聞き返すことも出来ないので命令通りにするしかなかった。

 

部屋から出れば、ドアにもたれかかり少しの間だけマモン様の言葉の意味を考えていた。

何がいけなかったのだろう。俺たちはもしかしたら何か重要な事を見逃してるのかも知れない‥。特にミスがあった訳でもない筈だ。しかし、マモン様の言葉のせいで、不安が襲ってくる。

 

「‥‥。」

 

普通、あんな凶悪犯罪者たちが大人しくしてるもんなのか?やたらと聞き分けがある奴ばかりだったし、殺しに掛かる奴だって今回は誰一人としていなかった。

そう考えると不自然な点が沢山浮かんでくる。考え事をしながら歩いていると、いつの間にか海が見える自分の小さな家に辿り着いているじゃないか。

 

もういいや、と思いそこで集中力は切れ始め、今日も疲れた体を癒やす事を先決にした。

 

 

「あーあ。炙りやりてぇ」

「全部使っちゃったのぉ?」

 

「うん」と答える桜井。隣に居た高見沢はゴロンと寝転がり、壁に脚をもたれ掛けさせては天井に足を向けている状態になっている。

「でもぉ、島を出ちゃえばこっちのもんだからねぇ。また好きな事出来ちゃうよ」

「いよいよ明日だな‥」

「八十人対七人かぁ。これならイケるよね?」

「悪魔たちが邪魔さえしなければな」

「じゃあ、神様に祈ろっかなー。悪魔を浄化して下さいって」

「最高だな‥」

 

静かに笑い合う罪人二人がいることを、未だ船頭たち七人は誰も知ることはなかった。

 

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