罪人たちの舟 - 16/32

罪人たちの舟15

 

「こんな‥こんな!酷すぎるッ!!お前らなんか人間じゃない!クズ以下だッ!!」

「最っ高の褒め言葉。ねぇ、アンタの妹さぁ、相当可哀想な死に方したらしいね。船頭さん、アンタ妹を守れなかったの?」

「‥!?」

 

な‥なんでそんな事まで知ってるんだよ‥

差し詰め仲間たちから聞いたんだろう。アイツらなら俺の過去は知っていたから‥。

 

眉間を寄せて、「くっ」と悔しさと虚しさの息が漏れると、顔を下に俯けた。何も見たくないし、聞きたくもなかった。嫌だ、嫌だ嫌だっ‥!

 

「妹さんは今も救われていなかったりしてなー?自分が情けないから助けられなかった‥アンタはそんな事考えてたりするのかい?」

「だ‥黙れッ!!お前ら罪人なんかに俺の気持ちなんか分かってたまるかッ!!死ねばいいんだ!皆みんな罪人なんか死ねばいいッ!!」

「あっそう。‥‥七十二番。お前の出番のようだ。後はよろしく」

 

俺の持っていたはずの棍棒は、俺が気絶していた間に奪われていたのだろう。知らぬ間に棍棒を持っていた二十四番がパッと七十二番に渡すと、奴は怪しい顔をしながら「はーい」と返事をする。男が俺の前に屈めば、首を大きく傾げて窺ってくる。舐めるような視線が気持ち悪く、俺は歯を食いしばりながら必死に目を逸らす。

だけど、顎を掴まれると無理やり正面を向かざるを得ない。じろじろと上から下まで見てくる七十二番の目と合ってしまうと、舌をぺろっと出して奴は自分の唇を妖艶に舐めていた。

 

「っ‥!?」

 

ゾクッと背筋が凍ったのは言うまでもない。

 

「船頭さぁん。アンタ俺の事大嫌いでしょー?分かるよぉ。アンタが俺を見てくる視線が明らかに人と違うの感じてたんだよね~。だから俺もアンタが気分悪くなるような目でアンタを見てたんだぁ」

「女を道具のように扱うお前らみたいな犯罪者が一番嫌いだ!!」

「心外だなぁ。俺はちゃんと女の人を愛していたよ?‥レイプ魔と一緒にしないで」

 

俺は今、奴の中の地雷を踏んでしまったようだ。

今までの人を殺しそうで虚ろだった目が、一瞬にして色に深みを増したように見えた。ドス黒く、何者も寄せ付けない‥恐ろしく冷え切った瞳をしてやがる。

 

棍棒をグイと俺の喉元に押し付けてくる男の力が強すぎる。思わず「ぐっ‥」と苦しそうに聞こえてしまう声が自分の口から出て来た。いや、本当に苦しいんだけどさ‥。

余り抵抗するのも命取りなような気もしてきたので、苦しくても今は大人しくしていよう。とにかく落ち着け‥落ち着くんだ俺っ‥

 

「‥く、」

「仲間も死んじゃってさー。どうするの、船頭さぁん?」

 

大きくて長い指が首筋に這う感覚が気持ち悪くて、逃げ出そうとしたがそんな抵抗も虚しく終わるだけだった。

スルリと撫で回してくるその指は、なんだか手慣れたような指付きでもある。あぁ‥ちょっと納得いった。コイツに惚れちまう女が一定数居るのにはなんとなく頷けるような気もする‥

 

だが、今の俺にとっちゃ地獄でしかない。

 

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