罪人たちの舟 - 18/32

罪人たちの舟17

 

「ちくしょう‥!アイツら‥許さねぇ!!」

 

 

追いかけたい気持ちも山々だが、こんな傷が入った脚ではマトモに動けない。暫く悶え苦しんではいたけれど、このままじゃアイツらを逃がしてしまう。何とかしないと‥

幸いにもここは自分の家。どこに何があるのかはもちろん把握しているので、俺は手っ取り早く傷の処置を施した。今から罪人たちを追いかけるより、主様たちに知らせた方がいいのかもしれない。

床の上で無造作に捨てられていた大切な棍棒を拾い上げ、ズキンと痛む脚を庇いながら館へと向かう為にもこの家から出ようとした時だった。

 

「‥‥あっ、」

扉を開けたまま、俺はそこで一瞬固まってしまった。

 

「‥‥ごめん。ホントに、救えなくてごめん‥っ」

 

だけどもうコイツらに俺の声は届かない。

あとで‥ちゃんと全員埋葬してあげなくちゃ‥。じゃないとコイツらは誰一人として救われなくなる。

でも今はごめん。今だけは優先することがあるんだ。お前らにも分かってくれるはずだよな‥っ?

俺は少しの間だけ目を瞑り、この場から離れていった。

 

 

いつもなら歩いて十分ほどで着く所を、今日はその倍以上かかってしまった。

やっと館に着き、重たく感じてしまう扉を開けてマモン様が居座る部屋へ必死に歩いた。この館がこんなに広いのが、初めて憎く思えてしまうレベルでマモン様までの道のりが長い。なんなんだこの廊下は‥

シンと静まり返る館。さっきまで隣に居た仲間が誰一人として残っていないなんて‥

無力すぎる。

だけど決して涙は流さなかった。涙を流してしまえば、ここまで一緒に手を取り合って頑張ってきた仲間たちに顔向けが出来ないから。

 

「失礼‥します‥」

ギイィと大きな扉にもたれかかるようにして扉がかろうじて開けたけれど、そのまま力が抜けてしまいドシャリと倒れ込んでしまった。なんとか体を起こし、椅子に座っているマモン様の前まで行こうとしたが、もう体力があまり残っていない。

あと少しなのにっ‥

 

「‥貴様らは何をしていた」

「も、申し訳ございません‥!」

 

慌てて手と膝を床に付け、ひれ伏す形となる。しかも、喉の奥から出て来た声が面白いくらいに震えている。初めてマモン様と出会った時以上に怖かった。

 

「全く‥余計な虫が付いているのにも気付かないとはな。お前には失望したぞ、坂崎」

「え‥?」

 

マモン様が掌をこちらに向けると、いきなり気砲を撃ってくる。いきなりの行為にビックリしたが、気砲は俺の体ギリギリを通り過ぎていけば、突然ドォオオオンという音と共に後ろの扉が破壊してしまったのだ。

何をしているのだろうと疑問に感じたが、マモン様が呆れてる理由も今ようやく分かった。

 

壊れた扉の向こう側には、俺がよく知っている人物がそこには立っていたからだった。

 

 

(高見沢の奴、おせぇな‥)

 

舟を奪い、既に全員が乗り込み終えて、後は出発するのみとなっていた桜井たち。しかし、高見沢が坂崎の様子を窺って隙を見てから逃げ出そうとの事だったが、その本人が未だに帰って来ない。

心配になった桜井は、他の罪人たちを先に逃げるように命じ、彼は高見沢を連れ戻そうと思い、舟から降りて島を走り出した。

 

(アイツ、何処まで付いていっちまったんだよ‥!くそっ、早くしねぇとあの悪魔たちに気付かれちまう!!)

 

 

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