罪人たちの舟16
「さぁて、どうしようかなぁ~?」
くそっ‥コイツのこの目が本気で嫌いだ。怒りというより、殺意さえ芽生えてくる。だけど、俺がコイツらを殺したらそれこそ罪人たちの思うツボだろう。いや‥人を殺したら俺が主様たちに裁かれ、瞑道の窯へと葬り去られるのは分かりきっている。
でもどうする?このままコイツらに何も抵抗しないで俺は殺されるのか?
体に食い込む縄と鎖が痛い。ここまで厳重にやらないと逃げ出すとでも思ってるって訳か。
「俺さぁ、あんまり人の体は傷つけないやり方してきたんだよね。だからと言って男に対して変な事したくないしぃ‥。そーだなぁ、そこの三番と四十八番と五十一番来て」
呼ばれた番号の奴らが七十二番の元へと集まる。何をする気だ‥?
「船頭を気絶させない程度に痛めつけておいて」
七十二番はそれだけを告げると、呼ばれた三人が俺を取り囲み、無理やり立たされると、奴らは俺の家の中へと入って行こうとする。家の中には何がある?俺を殺せそうな物はそこら中にある。
でも、七十二番は俺を気絶させない程度にという注文をしてきた。少なくとも今コイツらに殺される可能性は低いが‥
*
それからは抵抗すら出来ない俺に数え切れない程の拳や足が飛んでくる。気絶させないって本当に意地が悪すぎる。どうせなら殺してくれた方が楽になれるのに‥な。
いや、これが七十二番の狙いなんだろう。俺を立たせなくなるまでボコボコにして、後から自分で‥‥
「ハァ‥ハァ‥ぐ‥、」
「どぉかな?」
ガチャと開いたドアには、あの二人の男が立っていた。
ぼんやり映る視界に近付いてくる七十二番。すると「こんなもんかなぁ」と呟きつつ、隣に居た二十四番は三人の男に命令をすると男たちはこの家から出て行ってしまった。
七十二番は横たわっていた俺の髪を掴み、グイと持ち上げてきやがる。いってーなぁ‥
「解放してあげよう」
「‥‥?」
二十四番が突然そんなセリフを吐くと、七十二番が俺に巻き付いていた縄と鎖を取り外す。
「なんの真似だ‥?」
「ん?そんな真似をするだけ」
「‥?」
縄やロープから本当に解放され、自由を手に入れたと言っても、体が悲鳴を上げていてどうしようも出来ない。しかし、追い討ちを掛けてくるように七十二番の手にはナイフが握られているではないか。
え‥?
そして驚く間もなくそのナイフを俺のふくらはぎ目掛けて振り下ろししてきた。
「ガあアあぁアァぁあッ!?‥ハッ‥ハァ‥っ、」
「おっと、深く刺しすぎたかなぁ?」
「程々にしといてやれ」
「まぁこれくらいにしとくよ~」
「うっ‥‥、クソが‥っ」
余りの痛さにまともに声すら出て来なくなってしまっている。
七十二番が言っていた程自分の中では深くはいってないようだが、傷を付けられた部分は一気に熱が籠もっていく。痙攣で‥感覚がよく分からなくなってきてくる。
ヤバい、このままじゃ本当にヤバいぞ‥っ!?
「俺たちまだ出発しないからチャンスがあるかもよぉ」
嘲笑うかのような七十二番の声。憎いとしか感じられない‥
「主様‥たちが、お前らを裁く‥!この島からは、出られない‥絶対に!!」
「‥そうかもね」
アホくさいといった顔をしてくる二十四番は、それだけを言い残すと二人はこの家から出て行き、俺の目の前から姿を消した。
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