罪人たちの舟20
「お願いが‥ある」
「なんだ?」
あれ。罪人に耳を傾けてしまっている。これ、絶対やっちゃいけない事なのに‥。でも、まぁいいか。
「島から‥逃げ出せ、なくて‥ごめんって、さく‥らいに、伝えて‥」
さくらい?
あぁ、あの二十四番か。てかなんで名前知ってるんだよ。互いの個人情報は流さないって言っておいたのに。
まぁコイツらがそんな約束守る訳ないなと、今になって一人納得したけども。
「‥あと、今まで‥付き合ってきた人に‥謝りたかった。上手く、愛せなく、て‥‥ご‥、め‥‥」
そしてコイツが言いかけている途中に、ガクンと一気に力が抜けていった。
「‥‥七十二番」
おい、女たちにまだちゃんと謝ってねぇぞ。そんなのズルいぞ。ちゃんと言い終えてから逝けよ。
それに、そんな事二十四番に伝える訳ないだろ。ムリだよ。アイツらだってどうせもうすぐ死ぬんだからよ‥。
「悪く思うなよ」
俺よりも倍ある体を持ち上げ、脚の痛みを抑えながらも七十二番を抱きかかえて俺はこの部屋から出ようとした時だった。後ろから誰かが近付いてくる気配が感じ取れた。
‥まさかコイツもここまで侵入してくるとはね。
「ソイツをどうする気だ」
怒りを含んだ声。その持ち主は言わずとも分かる。
「瞑道の窯へ葬る」
振り返らずに答えてみせると、男は舌打ちをしてきやがった。苛ついているのがよーく伝わるな。
「その男は返して貰う。そして俺たちはこの島を出るんだ!」
「‥ムリだ。今頃サタン様(憤怒)やベルゼブブ様(暴食)に殺されている」
「ふんっ。そんなの知ってるよ」
「‥?」
今の二十四番の言葉に対して何かが引っかかったので、奴が居る方へ振り返ると男は口角を上げながら「覚悟の上さ」と呟く。
「俺たちは島から出られるなんて思っちゃいなかったよ。だけど、ここで死んじまうより、少しでも生きていける可能性に賭けたかった。死が怖くない訳がない。だからこんな島から逃げ出したくなるなんて当たり前だろ?なぁ、アンタもそうだろ船頭さん?」
「罪を犯した奴の成れの果てだ。死をもって償うのは当然だ」
「じゃあ、なぜ俺たちは世間の明るみにならない!?人が人を裁かないなんてふざけてる!分かるぜ理由。この俺が国民に共感を得ないようする為だろ?」
「はぁ?」
「いいぜ、教えてやるよ!俺はガキの頃から両親には相手にされず、捨てられ、貧しく苦しい生活をしてきた!だから俺は詐欺師になって最低なやり方で金を稼ぐ汚い奴らから金を巻き上げる!
その金はどうしてると思う?
俺たちは必要最低限だけ頂戴して、後の残りは全て貧しい子供たちの為に寄付してやってるんだよ!俺の仲間は皆似た境遇だから理解出来たんだ。こんな真相を隠す為に報道されないだと?ふざけんなッ!!
事実を隠してまで国民に知られたくないか!?俺たちみたいな悪りぃ奴が結局死なら、じゃあなぜあんな汚い奴らが死なない?なぜ金のない子供たちが死んでいく?
おかしいだろっ!?こんな不平等な世界があってたまるもんか!!」
「‥‥、」
そう、か‥。コイツもコイツで‥
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