罪人たちの舟23
「選ばせてやる。瞑道の窯の中で永遠の苦しみを感じながらも魂だけは生き長らえるか、痛みもなく一瞬にして死を遂げれるが体も魂も全て失うか。さぁ、選べ愚か者」
マモン様が悶えている男に問いかけてみせれば、微かな声を振り絞りながら「ふざけんな‥!」と反抗する言葉が聞こえてきた。
汗が吹き出る顔は、目の前にそびえ立つ悪魔たちを憎む表情だ。罪人たちが殺されたのがよっぽど気に食わなかったのか。
「そうか‥。では、坂崎に始末させられてくれよう。嫌悪を抱く相手に殺される屈辱、これ程見てて楽しいものはない」
そう仰るアスモデウス様は、跪いている俺の前に小さな光を投げ渡す。俺は咄嗟にその光を受け取った瞬間、それが長い槍のような物に変形していった。
これは‥もしかして、アスモデウス様に仕えていたアイツが使っていた物じゃ‥。
槍の先端には、たっぷり塗装された剥がれ落ちる事のない毒。このお方はサソリの化身。なので、毒物といった物を好いておられる。これは余りにも危険なので、いつも先端には皮が巻かれていたのに今はその皮がない。
これで俺は‥これさえあれば俺は憎んできた罪人を‥この手で裁ける‥っ。
今こそ仲間たちの仇を取る時だ。
躊躇するな!!
ギュッと槍を握り締め、後ろに居る男の前にフラリと立ちはだかれば、コイツは怒りを露わにしながら怒鳴り声を上げてきた。
「お前を信じていた俺らがバカだった!!返せッ!高見沢を返せぇッ‥!!可哀想だ‥お前を‥あんなにも信じていたのに‥!」
「信じる信じないの話じゃない。‥アンタが俺を嫌うように、俺もアンタみたいな罪人が大嫌いなんだ。誰が死のうと俺には関係ない」
「タダで済むと思うなよ‥!てめぇだけはぜってぇに許さねぇ!!やっぱりあの時殺しておくべきだった‥!」
「もう遅いッ!!」
槍を上に持ち上げ、男目掛けて思い切り振り下ろす。
「くっ‥!!」
咄嗟に目を瞑った男だったが、そんなものに構わず俺は相手の左手の甲に槍を突き刺すと、声も上げられない痛みだったのだろか‥
手はピクピクと小さく痙攣を起こし、さっきまで固く閉じていた目を見開きながら、口をパクパクさせている。
「‥ぁ、‥ぐ‥」
「すぐに毒は回り、お前に苦痛を与えるだろう」
ズルッと槍を引き抜けば、ドロリとした赤黒い血が滴り落ちる。
その場にカランと槍を落とし、俺は大罪の悪魔たちに再び跪いてみせる。もう、怖いものは何もない。
俺は‥俺は‥‥
「それで良い坂崎。今回の事は水に流してくれよう。その男たちは反逆罪として体の皮を剥ぎ、剥製にでもして飾っておくが良い」
ルキフェル様の言葉で、悪魔達の気味の悪い笑い声が部屋中に響いていった。
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