罪人たちの舟 - 26/32

罪人たちの舟25

 

もう、顔を上げる行為さえ恐ろしくて出来なかった。マモン様や他の悪魔たちがどんな目で俺を見ているのか。どんな気持ちなのか。きっと、いい気分でないのは確かだ。さっきの一言で全員を瞬時に怒らせてしまったからなぁ‥俺すげーバカだよなぁ‥

 

「坂崎‥」

ぽつりと俺の名前を呼ぶマモン様にも申し訳なさすぎる。こんな役立たずの反抗する使者で‥すいません。

しかし、貴方を心から尊敬する気持ち、変わりは致しません。貴方に付きたくて俺はマモン様の下で働いてきたんですから。

 

「そんな行為、許されるとでも思っているのか?」

「けしからん奴め。貴様もその罪人諸共消えるが良い!」

 

口を揃えて怒りを俺にぶつける悪魔たち。しかし、マモン様が「待ってくれ」と全員を制してくれたではないか。そして俺へ向き直ると、その恐ろしく醜い姿は仮の人間の姿へと変わっていった。

すると、次々に他の悪魔たちも人間の姿に戻り、七人全員が俺と二人の罪人の周りを取り囲む形となった。

跪いたまま、主であるマモン様にもう一度「お願いします」と告げれば、「貴様も愚かだな」と呟かれた。

 

「その二名の罪人に終わりなき罰を与え、貴様に付き従えるような者共にすると誓うか?」

「‥二言はありません」

「そうか‥。では、貴様にその二名の罪人の裁きを許そう」

「‥!有り難き御言葉、心から感謝致します」

「では、皆悪いが手伝っておくれ」

 

マモン様が言うのなら仕方ない、みたいな雰囲気を出している悪魔たち。人間の姿に戻っただけで、俺からすればかなり気が楽になった方だ。ホッと安堵の溜め息をついたのも束の間、周りに居た悪魔たちが突然呪文を唱え始めてくる。

 

「‥っ!?」

 

すると、体にドクンと響いてくる大きな心臓の音。唐突に苦しくなり、手で胸を押さえるが呪文を唱えるスピードは速くなり、段々と大きくなり始める声が俺を苦しみへと誘っているかのように思えてきた。

 

そして、ある瞬間になると‥

俺の身体からは掌と同じくらいの大きさの白い光が出て行こうとし始めているではないか。「あ‥」と思った時には既に遅く、いきなり無数の光たちがブワッと身体の外へと逃げるように出て行ってしまった。

 

「な、なんっ‥!?」

 

その光たちが上昇していくと、ピタッと動きをやめたかと思えば、二人の罪人目掛けて迷いなく急降下していく。

横たわっている罪人の身体に、俺の体内から出てきた眩しい白い光が入り込むと、周りで呪文を唱えていた悪魔たちの出番は終わったようだ。

 

「坂崎の願い、我らが見届けたぞ」

くらりと目眩がする頭を支え、俺は悪魔たちにひれ伏し、御礼の言葉を並べた。

 

「ありがとう‥ございました」

 

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