罪人たちの舟24
俯けていた顔を持ち上げれば、悪魔たちは満足気な表情でこちらを眺めていた。
俺の後ろでは男が段々と呼吸をする早さが上がりだしているのがハッキリと聞こえてくる。大袈裟なんかじゃなくて、荒い息が彼を苦しめ始めてるのには充分な証拠だ。
俺はどうすれば‥
ぐっ、と僅かに体に力を入れると意を決して出ない声を振り絞り、悪魔たちに無謀な願いをしてみるとしよう。
もう、知らないからな‥
「七つの大罪たちよ、私からのお願いを聞いて貰えないでしょうか?」
俺の声で笑い声が収まる。すると、マモン様が前に出て来ては「何だ?」と尋ねてきてくれた。それだけでも相当びっくりだったので、数秒だけ主であるマモン様を見つめてしまっていた。
しかし、我に帰り再び顔を俯けては肝心のお願いを申し出てみる。
「私にも罰をお与え下さい。このままでは死んでいった仲間たちに顔向け出来ません」
「その罰の内容とは?」
「‥‥私に裁きを告げる事をお許し願いないでしょうか?この、二名の罪人の暴走を止められなかったのは私です。もう一度チャンスを下さい。この罪人を‥‥
生き返らせて頂けないでしょうか?」
「今、何と?」
ビリッと地鳴りのような感覚が建物を揺らし、襲いかかってくる。全員の怒りに触れさせてしまったようだ‥。
嫌な汗をポタリと流しながらも歯を食いしばり、もう一度言葉を並べてみせる。
「罪人たちに再び命を吹き込んで下さい」
「俺は‥まだ、死んで‥ない!」
「黙れ。その体だとあと数分しか持たない。マモン様‥この罪人たちに命を与える代わりに‥私の‥この私の命の半分を奪い、この罪人たちへと与えて下さいませんか?」
最初で最後の願いだった。逆らう事も、反抗する事も今までなかった。だけど、これだけはどうしても伝えたかった。受け入れて貰いたかった。
「貴様の寿命が縮まるだけだぞ?何をそんなにコイツらを庇う必要がある?」
「庇うつもりは到底ありません。この罪人たちには、終わりなき罰を与え続けるつもりであります。私の傍に置き、私の下僕として一生を終えて貰おうかと‥。私の犯した過ちは、私が全て受け止めて、罪を背負いながら生きていきます。罰は私の命を犠牲にします。どうか‥どうか私の願い、聞いて貰えないでしょうか?お願いします、マモン様!」
「‥坂崎」
このマモン様の冷ややかな声。恐ろしい以外の何物でもない。
あぁ、クソっ。どうにでもなれ‥!
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