罪人たちの舟 - 27/32

罪人たちの舟26

 

「うっ‥、」

 

くそっ‥目眩が酷い。たった今、俺の寿命は今までの半分となってしまった。首をブンブン振っても、このグラグラとした感覚が取れる事はなかった。

 

「坂崎」と再びマモン様に名前を呼ばれ、重たい頭を無理やり持ち上げると、マモン様の手には大きな剣が収まっていた。それを俺の前へ突き出してくるので、理解出来なかった俺はボーッとした頭と虚ろな目で主を見つめた。

 

「これは‥聖(ひじり)の剣?」

「貴様に授ける。自分の命を犠牲にした今のお前は体力的にも精神的にも弱体化してしまった。それを抑制する為にも貴様にこれをやろう。この剣を使いこなし、また私の使者でいる事を命じる」

「マモン様‥」

 

差し出された剣を両手で受け取り、鞘から引き抜けば、美しく磨かれた銀色の刃が現れた。持ち主は悪魔の癖に、一点の穢れもないのはここに居る悪魔全員が本当に悪い方たちではないから。

静かに目を伏せ、剣を地に突き刺せば俺は主様の前で跪き誓いを立てた。

 

「私の生涯、貴方に捧げます」

 

これで良かったのだろうか‥

 

そう誓えば、マモン様は満足そうに微笑みながら、俺たちの前から姿を消してしまわれた。まだ納得していなさそうな悪魔たちも俺らを蔑む目で見てから、目の前から消え去っていく。

あーぁ、やっぱり嫌われてしまったかな。まぁ、罪人を生き返らせて欲しいなんて言ってくるトンデモナイ野郎だから嫌われたって仕方ないんだけどさ。

それを覚悟の上で口に出した願いだし。マモン様にさえ理解してくれれば俺はそれでいい。

 

「フゥーっ‥」

 

ドサっと疲れ切った体を座り込ませると同時に、後ろを振り返ってみせた。まだ死んでいなかった二十四番は既に動ける状態にはなっており、未だに息をしていない七十二番に近付き、二十四番は彼の上半身を持ち上げて名前を呼び続けていた。

 

「おい、起きろ‥高見沢」

「‥‥。」

「起きてくれ‥お願いだから起きろっ」

 

そして、名前を呼んで六回目の時だった。

トクン‥と鼓動が動き出す音が耳に届いてきたような気がすると、眠りから覚めたかのように七十二番の閉じた瞼がゆっくりと開き出す。

今まで気付かなかったこの男の優しくて、大きな瞳が二十四番を捉えると、男は息をすうっと吸い込んでは吐こうとしたが、上手くいかずゴホッと咳き込んでしまっていた。

 

「高見沢‥」

「‥さく、らい‥なんで、ここに?」

 

不思議がっている七十二番の口端から流れていた血を拭き取る二十四番。

体を更に起こして貰い、俺の居る方へと顔を向ける七十二番が俺を見つけた途端、一瞬にして目の色が変わった。俺が嫌いな、あの今にも人を殺しそうな目に。

 

「な、なんだよ」

「‥へぇ。アンタが俺たちを?‥このまま死なせてくれれば良かったものを」

 

残念そうな台詞に対して、軽い口調が似合わない。

「お前らを死なせなんてしない。この島で一生を過ごし、終わる事のない罰を下す」

「‥それは楽しみだねぇ」

 

くくっと嘲笑うかのような男に怒りを感じないと言えば嘘になる。

コイツら反省する気ないな。

 

 

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