罪人たちの舟27
ダルそうにしている七十二番の上半身を支える二十四番は、キッと噛み付くような目で俺を睨む。
「いいか?礼は絶対に言わねぇ。お前が勝手にやらかした事だ。俺たちはお前に助けを求めた覚えは一切ないからな!」
「今はそれでいい。‥いつかお前たちが心を全て洗い流した時、本当に大切な言葉を聞ける時が来るならば、俺はそれで満足だ」
「分からない‥。なぜ憎い筈の俺たちを蘇らせる?自分の命の半分も犠牲にしてまで」
二十四番の言った言葉にピクッと反応をする七十二番は、眉をひそめながら俺を見やる。まさか、俺の命の半分が自分を救ってくれたなんて思ってもみなかっただろうからな。
七十二番からの嫌な視線を受けながらも、俺はヨロッとした体を立ち上がらせると床に突き刺さったままの聖の剣を抜けば、ハァと大きくわざと聞こえるくらいの音を漏らす。
「言っただろ、これは俺にとっての罰だ。お前らのせいで仲間が死んだんだ。そして裁きを受けもしないで罪人たちが跡形なく消し飛んだ。‥全ては俺の不注意だ。お前らが脱獄を考えていたのに気付かなかったから」
「そんな理由で?」
二十四番の言葉を無視して美しく光る剣を眺めながら淡々と自分の言葉を紡げる。
「だから俺はお前らを許さないし、こんな自分も許せない。救われた人だって居るかも知れないのにさ‥。お前ら二人を生き返らす事によって、自分の情けなさや愚かさを胸に掲げ、もう二度とこんな事が起こらないようにしたまでさ。
自分を戒める為にも選んだ道だ。だからお前らとっては一番苦痛な罰、つまり俺の下でいいように使わさせて貰うこと。まぁそれはお互いの罰としてだけど、ね」
言い終えてコイツらの方に視線をやると、あからさまに顔を歪ませている二人。俺の下で働くというのが気に食わないのだろう。絶対そうに違いない。
その証拠に七十二番が顔を天井に向け、べっと舌を出すと「お前、嫌い」と吐き捨てた。
「死ぬ前はアンタをおちょくるのが楽しくて好きだったのに、やっぱり嫌い。大嫌い。俺たち罪人の敵だ」
「俺もアンタが嫌いだ。胸くそ悪くなるぐらい」
ギロリと鋭い視線が流れてきたが、俺はそんな視線すらも構わず剣を鞘の中に収めた。
「‥アンタ、下の名前は?坂崎‥何?」
七十二番がいきなりそんな質問をふっかけてきたが、なんでコイツらに言わなきゃいけないのだろう。‥と思ったが、これから長い付き合いになっていくんだから隠してても仕方ないか。
ま、別にバレて何か問題がある訳でもねーし。
「俺の名前は幸二。幸せと数字の二で幸二」
「へぇ‥幸せ、かぁ。じゃあ、アンタの幸せは俺たちが奪い取る。これから先アンタを幸せにはさせない」
「同意だね。俺もアンタの不幸な姿が見てみたい」
名前を告げた瞬間、二人の嫌な視線とセリフが口から飛び出してくる。ホンっトなんなんだコイツらは‥!
「おめーらなぁ~‥」
つくづく嫌な奴らだ。また溜め息が漏れてしまうのをグッとこらえ、俺は二人を自分の家へと運んで行くことにした。
二人ともまだマトモに立てる状態ではなかったが、いつまでもこの空間に居たら次こそ本当に悪魔たちに殺されてしまうかもしれない。こんな神聖な場所にいつまでいるんだってさっきも言われたしな。
「ほら、立て」
「ムーリ~」
「こんな状態にさせておいてよくそんなこと言ってこれるな。ふざけてんのか?」
「‥‥。」
助けなければ良かったかもしれない。
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