罪人たちの舟6
「ねぇ、どこ行くのぉ?」
本来なら単独行動は許されていないのだが、この二人の男は島を散策している。休憩時間の今を使い、黒髪の男が長髪の男を誘い、こっそり施設から抜け出して来てしまっていたのだ。
男は何も言わず、ただひたすら歩いているだけだったが、ピタリと足を止めて「これか」と独り言を呟いてみせた。
すると、長髪の男もそれに気付き、「わぁー」と声を小さくあげながら、とある物を見上げていた。
二人の目の前にある物とは、先程坂崎が言っていた瞑道の窯。男はこれを確認する為にここまで歩いてきたのだった。そして、なんの迷いもなく瞑道の窯の入り口に続く階段を登ると、後ろからもう一人の男が付いてくる。
二人が窯の一番上に辿り着けば、大きな重たそうな扉が厳重に鎖で縛られており、中が開かないようになっていた。中身を確かめてみたかったが、これでは何も分からずじまい。開ける方法も不明なので、男たちはこれ以上何かを探ることはなかった。
「俺たちはここへ飛び込むのか」
「何ここ?」
「裁きを下された者が身を投げ出す場所だそうだ。瞑道の窯と言うらしい」
「さっき船頭と喋ってたよねぇ?もう情報聞き出したの?」
「アイツから勝手に喋ってきたんだ。あの船頭、騙す価値もなさそうな奴だな」
鼻で笑う男は一応だが窯の周りを調べ始めるが、やはりこれといって特に何かある訳でもないようだ。そんな黒髪の男の後ろをただ付いて回るだけの長髪男が質問を投げかける。
「二十四番はシャバで何やらかしたのぉ?」
「医者や国会議員とかブラック企業の偉そうにしてる奴らから金巻き上げてきた。捕まったのは仲間を助けようとしたせい」
「仲間思い~優しいー」
「‥‥。」
思ってもいなさそうな事を口に出せる男に対し、小さく溜め息をつく黒髪の男。コイツはどんな事をやらかして捕まったのかは大体想像はついていたが、一応尋ねてみるようだ。
「アンタは?」
「俺ぇ?女を監禁してたからじゃないの?多分、十人は軽くいってると思うよぉ。その内二人はほっといたら死んじゃったけどねぇ」
「雑な扱いをしてきたんだな」
「最初はそりゃあ愛でてあげてたけどさぁ、あんまりにも帰りたい帰りたいうるさいから黙らせてやったら‥ね。本当は震えて何でもするから許してって必死になって俺に対して許しを請う女のが好きだからさ~!」
周りを調べながら話を聞いていた男は、女がどれだけ哀れかが身に染みたようだ。そんなことをヘラっと口にしてくる男を軽く睨み付けると、「だぁい丈夫。ちゃんと愛してあげてたから」と不敵な笑みを見せてきた。
「だけど死んじゃあ意味がねーだろ」
「まぁそうかもね~」
「‥‥、」
この男の喋り方や内容はカンに触るが、どうやら相当なやり手だと理解した様子らしい。
この男なら使えるな、と。
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