罪人たちの舟 - 8/32

罪人たちの舟7

 

瞑道の窯から更に場所を移動する二人の男は、島をもう少し散策しておきたいようだ。

暇潰しに自分たちの過去を明かしながら、歩き回っているとある開けた場所に出てきた。

開けた場所の中央には、立派な大きな木が誇らしげに立っている。まるで他の木々を寄せ付けないかのように堂々と立つ木を眺めて、二人は同時に顔を見上げてみせた。

 

「でかぁい‥」

「樹齢何百‥いや、千はあるか」

 

黒髪の男が木に近付き触れてみると、見た目の割には柔らかい幹が心地良いい。暫くさすっていたくなるような触り心地らしい。

 

「御神木かな」

「あぁー‥。船頭が持ってた棍棒と同じ匂いがする。これから作ったに間違いないな」

 

言い切る男を見て少し感心する黒髪の男。ただ女を監禁していただけではなさそうだなと分かり始めたみたいだ。

木に耳を当て、まるで鼓動を聞くかのようにしている長髪の男は目を閉じて「凄い」と呟く。それを見ていた黒髪の男は疑問に感じたが、その行為が終わるまで暫くじっと待っていた。

飽きたのか、長髪の男は静かに目を開ければクスッと怪しい笑みを浮かべては御神木から離れ、黒髪の男の元へと戻った。

 

「‥瞑道の窯に身を投げた罪人はどうしてると思う?」

「は?」

「凄いよ‥。あの木から気持ち悪いくらいの人々が助けを求める声が聞こえてくる。熱いだの、ここから出してだの‥差し詰め窯の中は業火だろうな。救われない罪人たちの魂を封印する為にあの木が立っているのか」

 

珍しく真剣な口調で喋るのだから、本当の事を話しているのだろうと悟った黒髪の男。興味を示し、自分も木に近付こうとしたが、腕を取られ「やめた方がいい」と言われ、御神木に近づくことを許してはくれなかった。

 

「なんでだよ?」

「人が泣き喚き、許しを請う声を聞き慣れている俺でもキツかった‥。お前にはムリだよ」

 

こうは言っているが目を細め、うっすらと笑ってる男の顔を見ていると若干疑ってしまうが、この話しは本当の事なんだろうとなぜか納得してしまった黒髪の男。

御神木に近づくのは諦め、彼は長髪の男と目を合わせると質問を投げかけた。

 

「‥お前、名前は?」

「そういう個人情報は流しちゃダメなんでしょお?」

「なんか変な所で律儀だな」

「高見沢って言うんだぁ」

 

結局言うんかい、と心の中でつっこむ男だったが、ふぅ‥と再び溜め息をつけば「俺は桜井」と自分もしっかりと自己紹介をしてから右手を差し出す。

 

「まぁ、長い戦いにならないようにしようぜ」

「‥‥。」

 

桜井が差し出した手を両手で取る高見沢。彼は「よろしく」と歪んだ笑みを桜井に向ければ、グイと体を引き寄せながら相手の耳に顔を近付けては「そうだな、成功を祈ろう」と呟いた。

 

その言葉にニヤッと笑う桜井も「あぁ」と返してみせた。

 

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