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しかし刻一刻とゲーム開始時間が迫って来ている。もう俺も坂崎の言う通り覚悟を決めなくちゃならないのか?だけど‥なんの罪もない人間を殺すなんて‥
ジッと考え事をしていると、新しい手枷が全員に配られた。今俺たちが嵌めている物とは鎖の長さが圧倒的に違う。完全なる自由はないものの、ある程度ならこれで動きやすくもなるし、この鎖の部分だって武器になる筈。
俺たちが暴れないようにする為か黒スーツ男たちに取り押さえられながら、全員が新しい手枷へと付け変えられた。
どうする‥。きっとこのままじゃダメだ。なるべく死人が出る前になんとか手を打たなければ。でもこの監視カメラが沢山ある中でどう相手チームとの協力を得る事が出来るんだ?
坂崎に相談してもムダそうだし‥。ここはゲームしながら自分のない頭を捻り出してあの男に復讐するしかない。きっと‥いや、絶対にみんなは俺と同じ気持ちだ。
あの男に復讐してやる。
そう心に誓ってる奴らの集まりなんだ‥。本気で力を合わせればどうにかなるもんだろう。
「では間も無くゲーム開始時間となります。今から三分間、皆さんはここの部屋から出て頂き、各々この地下世界へ散って頂きます。行き止まりなどもありますので、お気をつけ下さい。」
棚瀬の言葉に従い、ここに居る全員は一斉に走り出し始める。俺も坂崎に「行こう」と促されたので行くしかなかった。
「この地下がどれだけ広いんだ、坂崎っ?」
「果てしないね。ここから更に下に行ける階段なんかもあったりするし。逃げるのには最適な曲がり角の多さ」
「‥じゃあ、相手チームと出会う確率も低くなってくるんじゃ?」
「それが意外とバッタリ会うもんだ。心配しなくてもブレスレットは回収出来る」
「‥‥本当に、人を殺していかなきゃならんのか?」
走りながらの会話はかなり疲れる。だけどこんな事で体力を奪われちゃあ、たまったもんじゃない。それに‥俺の身体はアイツのせいで傷だらけだし、所々痛みも伴ったまま。ゲーム中に足手まといにならなきゃいいが‥
「俺は人を殺したくなんかない」
「誰だって同じさ。何もお前だけじゃない。だけどみんな殺るしかないんだ。自由を勝ち取る為に」
「じゃあ坂崎は‥このゲームに勝ったら俺と一緒に外の世界へ行くんだよな?」
「いや‥、俺は行かない」
「はっ?なんで!?勝ったんならお前も自由だろうが!」
「ダメなんだ。‥俺は行けない」
「どうして‥」
その言葉を最後に坂崎は黙ってしまった。
気になる所の話じゃなくなってきた。やはりコイツとあの男の関係が知りたい。何故こんなにまでなって坂崎はあんな奴の傍にいるのかが。
走り出してからやっと周りに誰も居なくなった頃、どこからともなく「それではゲームの開始です」という放送が地下全体に響き渡っていった。
くそ‥、始まっちまったか。
覚悟を決める勇気も失せたまま、こんな状態じゃあ逆に殺されてもおかしくはない。
俺に何が出来る?
走っていたスピードを緩め、ようやく歩く程度の歩幅になった頃には息がゼェハァと上がってしまっていた。坂崎も若干キツそうにはしているものの、彼は何かを見つけたらしく「あった」と声を出す。
「えっ‥?」
「運が良かったみたいだ。あの木箱の中身にアイテムが入ってる筈だ」
「木箱?」
坂崎の見ている先に目を向けると、確かに木箱が置いてあるではないか。彼と目を合わせた後、その木箱が置いてある方向へ真っ先に走って行く。
そして坂崎が箱を躊躇もなく開けると、そこに入っていたのは一本のナイフだった。ほ、本当に入ってるのか‥
唖然としている俺に対し坂崎は、「銃なら良かったのに」と文句を垂れてはいるが、一応ナイフを手に取りそれをポケットにしまい込んでしまった。うん、坂崎がこんなにも頼りになるとはな。
「意外と早く見つかったな」
「こんなのは稀だ。たまたま俺たちが来た方向にアイテムが落ちてただけ。これから先、このナイフ意外のアイテムを見つけ出すのすら困難だろう」
「じゃあ、武器を持ってない奴のが多いって訳か?」
「だからみんな死んでいく。このゲームは運も必要になってくるから」
坂崎はそれだけ言うと再び歩き出す。
その後ろを付いていくだけの俺は、この妙な静けさの不安に飲み込まれながらも、なんとか自分を保つ。いつ相手チームが現れるのかが分からないからどうにも怖い。
こんな事させられて‥俺たちは完全にあの男のオモチャ状態じゃねーか、これじゃあ。虚しいにも程がある。俺たちは必死になにをしている?殺し合いだぞ?これになんの意味を持つ?
「坂崎‥。俺、」
「余計な事は考えなくていい。心を鬼にしろ」
「心を‥鬼に?」
「ご主人様を殺したいというあの気持ち‥。そう、それだけでいい。復讐したいんだろ?」
「当たり前だ!俺がこの手でアイツに復讐するまで終われない!‥けど、みんなもそうなんだろっ?」
「‥‥まだみんなで協力し合おうなんて考えてるの?言ってただろ、ここはどこもかしこも見張られてる。絶対にムダだ」
「でも‥、‥‥っ!?」
「!」
足音が聞こえる‥。俺たちが来た方向からこっちに段々近づいている。
俺と坂崎はすぐそこにある曲がり角まで走り、一旦そこで身を潜める事にした。あっちから来る奴らは味方か‥それとも敵か?
息を殺し、物陰から窺っていると「確かこっちから声が聞こえた筈なんだが‥」という会話がすぐそこでしている。どっちだ、赤か青のブレスレット‥どっちだ?
そっと顔を覗かせ、相手の手首に嵌められてあるブレスレットの色を確認してみる。
‥青だ。
パッと顔を引っ込め、坂崎に敵だという事を知らせると彼は目を細めては「こっちに来るはずだから、そこを襲うぞ」と口にする。
マジで‥やるのかよ。
「高見沢はその長い鎖で相手にぶつけて怯めさせ。‥武器は持っていたか?」
「いや、持ってなさそうだった」
「なら簡単だ。‥‥行くぞ」
「‥‥。」
こちらに近づいて来る足音がハッキリと聞こえる。
尋常じゃないくらいにバクバクと鳴っている心臓と、鎖を握り締めている手が汗でびっしょりになってしまっている。滑らさないように注意しなきゃ‥
そして、もうあと一歩二歩という距離。
「でりゃぁあああぁああッ!!」
「!?」
「なっ‥!?」
振り下ろした鎖が相手の体を打ちのめし、バチィン!という不快な音と嫌な振動が俺の腕に伝わってきた。
驚いて何も出来ないでよろけている相手に、物陰に潜んでいた坂崎がすかさずもう一度鎖を思いっきり振り下ろせば、相手は怯んでしまっていた。
それをチャンスだと言わんばかりに彼は「やめてくれ‥!!」と許しを請う相手に向かって‥‥
「‥呆気ない」
一部始終を見ていた俺は‥今のこの光景が幻なんじゃないのか、と現実から目を背けたくなるようなものを見てしまっている。
流れるドス黒い血。止まる事を知らないらしく、地面にじわじわと広がっていく。
呆然としてしまっている俺なんか気にする事もなく、坂崎は相手チームのブレスレットを二つ取り上げると何事もなかったかのように「行くぞ」とだけ付け加えながら俺にブレスレットを一個手渡してきた。
‥‥こんなにも‥コイツらの最期はあっさり終わってしまうのか。
俺もそうなる可能性は高いだろう。
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