秘密警察-Secret Police- - 18/39

SP17

3、2、1‥‥

「わぁ、ホントだ。坂崎さんの勘、当たってましたね」

「0時回ったけど何も起こりませんでしたね」

「言ったろ?アイツらは捻くれてるって。予告通りのことなんてしてこない」

感心してくれている吉田と鈴木が頷いていた。高見沢と桜井はというと、「おぉ~」とかいった軽い反応。コイツらはコイツらでこういう予告状とかに慣れてるからそんなもんだとは思うが。

あとは明け方になるまで待機してなきゃいけないな。それまでが長い気がする。

外を見やれば私服警官がそこら中で張り込んでおり、さっきからパトカーもよく見かけるな。警視庁はこのことを黙っているらしい。国民たちには公表せず、自分たちだけで穏便に済ませたいそうだ。上手くいくかねぇ。

くだらない、と呟けば隣に居た桜井にそのセリフを聞かれてしまっていたらしく、桜井が「みんなも必死なんだからそんなこと言うなよ」と偉そうに説教してきやがるじゃねーか。

「そんな風に必死になって捜したとしても、今アイツらは絶対に出てこないだろう。読みが甘い」

「そりゃお前と違って、他のみんなは初めての相手なんだから仕方ないじゃん。アイツらの性格なんて分かる訳あるか」

「よーく調べれば分かることだ。言い訳にはならん」

「お前という奴は‥」

けっ、と俺をあしらう桜井。

まぁいい。今は時間まで何をしていようかって話しだ。正直見回りしてても、棚瀬からの情報がキャッチされない限りあんま動いてても意味がないんだよな。ガソリンもったいねーし。

桜井がウロウロしながらテキトーな道を運転しているが、ここら辺から外れることのない経路で動いてくれている。あと一時間くらいすれば、オールナイトニッポンが始まるからそれまで我慢していようか。

昼間に休憩したにも関わらず、高見沢と鈴木が眠たそうにしていた。吉田はなんとか平気そうにしているが、二人がウトウトし始めている。‥まぁ、まだ寝かせても問題ねーわな。

「吉田も寝てていいぞ」

「えっ!あ、はいっ」

「最近寝れてるか?こんなことばっか続いてるが」

「はいっ‥!‥‥いえ、あんまり寝れてません」

「そうだよな。誰もが始めはそうさ。まだ時間はあるから休んでなさい」

「ありがとうございます」

俺の言葉で気が抜けたのか、フウっと息を吐いた後には目をウトウトさせてしまっていた。桜井にも少しは休ませてやらんとな。

「運転代わるわ」

「いいよ、俺がしてる」

「お前も体力温存しておけ。俺が運転するからそこどけ」

「‥じゃあ」

一旦車を停められそうな場所に停めて、席を立ってから俺と桜井の居たところが真逆になる。後ろの三人はもう寝ちまってるようだ。

鈴木が高見沢の肩にもたれかかり、吉田が鈴木の肩で思いっきり寝ている。そんな三人の様子を目にした桜井が、「面白い奴らだな」と独り言を呟いていた。

桜井に代わり運転していると、隣に居る桜井が窓の外を眺めながら俺の名前を呼びつける。

「なんだ?」

「‥今回だけでいい。俺たちのことを信じてくれないか?」

「‥‥!」

まさかの言葉に一瞬、何も出てこなかった。

え‥?という俺にしては間抜けな顔をしてみせるが、桜井は外を眺めているので気付かれていない様子。

「な、なんだよ急に‥」

「ずっとずっと俺たちは悩んでた。だけど、坂崎の考えに納得いった今、もう一度だけ俺たちのことをよく考えて欲しい。そして信頼されるような仲間に俺たちはなりたい。それはもちろん俺と高見沢もだが、口には出さないだけで太郎も正将だってそう思ってるよ」

「それは‥ムリだ」

「そんなに俺たちのことを信頼出来ない?」

「したくないと言ってるだろ。最後に傷付くのは自分だ」

「もし傷付かない未来が確信出来たとしたら?俺たちのことを認めてくれるか?信頼してくれるか?‥棚瀬に負けたくないんだ。お前と離れて仕事してからだいぶ時間も経ってるのに、坂崎はいつも棚瀬に頼る」

「お前と高見沢じゃ上も恐れたりなんかしねーからな。それじゃ意味がないんだ」

「今以上にもっと頑張るから!お前にいつか追いついてみせるから‥っ。だから‥」

いつの間にやら窓の外からこっちに顔を向けては真剣に話してくる桜井がいるので、こちらも真面目に返していくしかなかった。

そんな目で見てくるな、気持ちの悪い。

そう悪態をつこうとしたが、どうにも出来なかった。俺の考えを知った今、コイツらにだってそれなりの覚悟も出来てるだろうから。

仲間を切り捨てることの意味を知り、この国の為にどれだけ尽くせるかを今一度自分自身で確認して貰わなきゃならない。命を投げ出すことは簡単なことじゃねぇのも分かってる。

だけど‥

「ダメだ。俺は誰も信頼しない」

そうハッキリ断言してみせると、桜井のかけていたサングラスの向こう側の目が悲しそうにしていた。眉は八の字に曲がってしまっているしで分かりやすすぎる。

「そっか‥そうだよな。お前に何を言ってもムダだったの忘れてたよ‥。悪かった」

謝ってきた桜井が、おやすみと呟きながら座席をリクライニングしては仮眠でも取ろうとしていた。

‥‥ったく。

「分かったよ。今回のコレが全部終わったら、お前らのこと‥ちったぁ信頼してみせるわ」

「えっ!?」

「勘違いするなよ。全てを信頼する訳じゃねーからなっ?」

「そ、それはもちろん分かってるよ‥!‥‥ホントにいいの?」

「テメェから頼んできたくせになんだよ!」

「だって‥!そんなこと言われるとは‥思ってもなかったもん‥」

「俺も言うつもりなかったんだがな」

じゃないとお前らいつまででもうるせーもん。

ハァ‥と溜め息をついてみせたにも関わらず、桜井は嬉しそうな顔して「ありがとう、坂崎」と改まった感じでお礼をしてくる。そういうのは‥むず痒くなるからやめて欲しい。心に変な刺激がくるので、素直に言われると逆に困る。

俺の言葉を聞いて安心したのか、今度こそ桜井は眠りについてしまった。かけてあったラジオの音量を少し下げ、真夜中の街を走り抜けていく。

信頼されたい‥か。

そんなに信頼とやらはいいものなのか?信頼し合わなくても俺と棚瀬はやっていけてるので、俺からすれば必要はないと思っているんだが。

だが、俺みたいな人間だからこそ桜井も高見沢もより一層仲間として認められたくて、そして信頼して欲しいと思われるのだろう。もし二人が他のチームだとしたら、他のリーダーは簡単に二人を信頼していたと思う。

二人は出来る奴らだ。なんだかんだで俺の言うことをこなしてきてるし、今までに頼まれた仕事だって失敗したことなんてない。‥‥たった一度だけ除いては。

まぁそれは別として、二人はこんな俺相手でも付いてきてくれている。仲間なんだから、大事にしたくない訳じゃない。

だが、俺は全てを託されるほどの男でもない。仲間は仲間でも、いつ誰がどうなるのかなんて本当に分からない。安い言葉で「仲間がいるから強くなれる」なんて言いたくない。違う、違うんだ。

仲間がいるからこそ俺は恐れている。

大切だと思うものがそれは弱みにもなってしまう時点で、もう傷付くことは分かりきってるじゃないか。確かに強みにもなるが、そんな甘ったれた世界じゃない。

俺だっていつ死ぬのかも分からないんだから。

‥俺が死んだら悲しむのはコイツらだけどさ。棚瀬はもうとっくにそんな感情は捨ててるから俺が死んだ時もどうも思わないだろうし、その逆もそうだ。棚瀬が死んだからといって、悲しみに暮れることなんてない。

俺はこんな関係でありたい。冷たいかと思われるだろうが、だからと言って死んだ相手をポイ捨てするような奴じゃないからな?ちゃんと心にその相手のことを想う気持ちさえあれば俺はいいと思っている。

ま、理解されにくいけどな。

コイツらにはコイツらで、死ぬか生きるかの選択が迫られる時がくるかもしれない。それは絶対にないとは言い切れんだろ?

その時に出した答えが例え自分の為に生きようが、誰かを守る為に死ぬ方を選ぼうが、俺は何一つとして間違えたとは思っていない。それが本人の出した答えなのだから。

後悔はいくらでも出来る。その出来事が終わっちまえば。

だけど、もう過去には戻れない。俺たちはいつだって進むしかない世界だから。

「俺には分からない‥。答えはいつだって、その時にならなければ分からないから‥」

だから軽々しく信頼だとかいう言葉を使いたくなんかない。

さっき口ではああ言ったが、きっと本心はいつまででも誰かを信頼することはないだろう。

もし、信頼出来る日がくるとしたら‥その時は俺がこの世界を辞めて、ここから去った時だ。

平穏に暮らせる日々がきたら‥

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