SP15
「っへー!よくわっかんねー!」
「何書いてるかサッパリ意味が分かりませんね‥」
「つかコレって信じていい情報?マジなの?」
「もしコレが本当だったら政府は何がしたいんでしょうか」
棚瀬が持ってきたノーパソを使い、病室もどきの場所に居る俺たち。さっき上の奴らから頂戴したUSBの中身を早速確認している最中。
画面に喰いつく他の四人のせいで、その後ろから見るハメになってしまった俺がいるが、まぁこれぐらいは許してやろう。喰いつきたくなる気持ちも分からんでもないからな。
棚瀬が冷めた目で画面を見つめている。書いてあることが現実的ではないっていうのが理由だろうか。
それもそのはず。この中身は人体実験の結果やレポートのようなものが書き記されてるからだ。さっき言っていた、その施設がどこにあるかも分かったし、行ってみる価値はありそうだが‥
クルッと振り返った高見沢が、俺を見ながら「お前こういうの信じる?」なんて尋ねてくる。
「‥自分の目で確かめるまでは、なぁ」
「ですよねー。俺もまだ疑ってるもん。ホントにこんなことがあんのかー?」
「だが、それが事実だとしたらアイツらが政府に対して怒るのも分からなくもないしな。生が繋ぎとめられたとはいえ、人間兵器呼ばわりされちゃ生きたくなんかねーしよ」
「最後の足掻きで抵抗するのにも納得いくよ」
「だからって、なんで親父の命が狙われなきゃならんのだ。親父は直接的にその施設とはなんも関係ねぇはずだ」
よく調べてから予告状出せよ。
いや、そもそも予告状なんてもの自体いらないんだけど。
しかしだな‥身寄りのないもんを誘ったり、居場所がない犯罪者に、死ぬ直前の優秀な人材をかき集めては日々実験が行われている‥。となると、アイツらはこの死ぬ直前の優秀な人材っていうのに当てはまるんだろう。
実験を行い、成功する確率は60%。高いとは言いがたい数字だ。で、その実験内容とやらはいくつかあるせいで、アイツらがどの実験をやられたかはまだ直接アイツらに聞かないと分からない。ま、これは俺の推測にしか過ぎんが、アイツらはこの成功率の中に入らなかったんじゃないのか?
成功すれば、元の状態に戻れる。もしくはそれ以上の力が手に入る。しかし中途半端に失敗すれば、体を動かす為のエネルギー源である核?コア?とやらが爆破してしまうらしい。早い話がいつ自爆するか分からんってこった。人間兵器と言っていた理由はきっとコレだろう。
ったく、こんな不安定なもん作りやがって。
だがしかし俺たちのような、優秀な人材がもし死んでしまったとしたら?それは政府にとっても痛手であり、秘密警察側としても痛い。なので、死ぬ直前の人材を完全に復活させる実験が行われている‥ようだ。
これなら上が関わっていても不思議じゃねぇな。そりゃ精鋭部隊に配属されてたアイツらを一気に失うのは嫌に決まっている。だからこの施設に委ねたって訳か。
桜井が唸りながら棚瀬が買ってきていたポテトチップスの、のりしお味を食っている。ちなみにコイケヤ。
パリパリという音を鳴らしては、高見沢に代わって桜井が俺の居る方を振り向く。
「どーする?ここ行ってみる?」
「俺一人で行こうかと思っていた。あんまり大人数でゾロゾロ行くのもなんかな。聞きたいことが山ほどあるからさ」
「‥てかさ、こんなの摘発するべき施設じゃないのか?いいのか?本人の同意なしに勝手に人体実験なんてやっちまって。めちゃくちゃ怪しい気がするんだけど。ホントに政府が関わってるのか?」
「親父が、とある大臣が造ったと言ってたから政府が関係してるのには間違いない。だがソイツの独断で造ったのだったら、政府自体を恨むのは間違っている」
「難しいなぁ‥。けど、坂崎一人で行って大丈夫なのか?お前絶対暴れ出しそうな予感するんだが」
「なら桜井も付いてくるか?」
「いいの?」
すると高見沢が「え、桜井だけズルい!」と言ってくる。だけどお前は目の痛みをなくすことが優先だ、というのを伝えると高見沢はしょぼんとしてしまった。それを慰める後輩がいる。どっちが先輩か分からんなコレ。
吉田も行きたそうにしていたが、これは新人が関わってはいけないようなもんだ。なので、今回は外れて貰うことを伝えるとやはり、しゅん‥となっている‥のを慰める先輩。
「坂さん、行くなら懐中時計のカメラ機能オンにしといて下さいよ。俺も中身どんな風になってるか確かめたいんで」
「あぁ、分かってる。着いたらオンにする」
「なんかな‥。あんまりお二人をここに行かせたくないんですよねぇ。何が起きるのか分かったもんじゃないっすから」
「取り敢えず俺はここをぶっ潰す予定ではあるが?」
「やっぱり?やるなら無茶しすぎないで下さいよ。上が関わっていたことがバレたらどーなることやら‥」
「ここの施設、自分たちはいいことをしていると思ってそうだが、こんなの禁忌を犯している。絶対にやっちゃいけないラインを平気で超えてやがる」
人間は生きる時から死ぬ時まで、そのままの状態じゃなけりゃいけないんだ。生まれ持ったもの以外を後から付け足すなんて‥
フゥと呆れの方の溜め息をついてみせれば、棚瀬がポテチを食いながら「言葉も出ないっすか?」なんて聞いてきやがる。その言葉に対して俺は何も答えなかった。
すると高見沢が「のりしおってお前チップスターが最強だろ」なんて、全然関係ないこと言い出す始末。
「はー?なに言ってるんですか?のりしおはコイケヤでしょ!」
「チップスターもうめぇじゃん!」
「え、俺はフツーにカルビーの‥」
と、桜井が参戦してきた途端に二人が口を揃えて「ないわぁ」と思いっきり否定されていた。それに対して反論出来ていない桜井。
「のりしおパンチならカルビーも認めますけど、フツーののりしおなら絶対コイケヤでしょ!」
「チップスターだろ!ねぇ、正将っ?」
「ぼ、僕もコイケヤ派です‥」
「ウソぉ!?」
「太郎はカルビー?それとも違うところ?」
「俺は全般的にどれも好きっす」
話が全然関係ねぇことになってきたな。ダメだこりゃ。
なんて思っていると、棚瀬が「坂さんはっ?」と聞いてくるせいで他の四人も一斉に俺を見やる。は?のりしお味なんて‥
「コイケヤ一択だろ」
「ほらーー!!」
「えーーー!ウソぉ!?チップスターもうめーじゃん!」
「コイケヤ強すぎ」
‥じゃなくて。
爆破予告も今日なんだから、そろそろ動き出さないとヤバい時間だっつーのに何を言い合ってるんだよ。
「おい桜井、吉田。外に出る準備しろ。車は桜井が出せ」
「どっか行くのか?」
「あぁ。予告状届いてから動いてたんじゃ遅いからな。先に外で待機しておいた方がいい。高見沢と鈴木はここで大人しくしとけ」
「え、ヤダよ!俺も参加したい!」
「ダメだ。まだ片目に慣れていねーし、それに痛みもまだ残ってるんだろ?言っただろ、二日の間で復活させろと。それまでは動くな」
「もう失敗したりしないから!連れてってくれ坂崎!お願いだ‥!」
「僕もお願いします!‥アイツに一矢報いたいんです。高見沢さんの左目を奪われたまま、何もしないでいろなんて言われてもムリですっ」
「ほ、ほら、正将もこう言ってるんだし‥!な、坂崎っ?」
復讐したい気持ちは分からんでもないが‥
うーん‥と考えること数秒。あまりにも二人が連れてけとうるさいので、仕方なく連れて行くことにした。その代わり、無茶だけはするなと釘差しておいたが果たして伝わってるかどうか。
そんな訳で、いつも通り俺たち五人が外に出て、棚瀬がモニター監視しながら情報をくれたりする役目につく。
さて、アイツらからも聞きたいことが沢山あるからな。どうとっ捕まえて尋問してやろうか。
かつての仲間だった奴でさえ、こんな思考にしか辿り着かない俺ってどうなんだ?と一瞬思ったが、素直にそう思ってしまっているんだから仕方ない。
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