秘密警察-Secret Police- - 20/39

SP18

そろそろか。

陽はまだ出ない頃、俺たちは車から出て早速暗い街中を駆け抜けて行く。勝手にで申し訳ないが、セキュリティーがちゃんとしてないようなマンションを見つけてから階段をのぼり、そのまま屋上へと行く。

そこからまた更に高い建物へと次々へと移り、街中を見下ろせるくらいまでの高さには居るようにしている。ここからじゃないと何があるかがよく分からんからな。

高見沢が「うー、さみっ」と呟くと続いて鈴木も「寒いです‥」なんて言いながら少しだけ凍えてるようだ。桜井と吉田は声に出しはしないが、我慢してる感じか。ま、俺も若干寒いとは思うけど。

すると桜井が、すうっと息を吸うと「おい、三人ともいいか?」と何やらアイツらで話しがあるようだ。‥さっきのことか。

「なん?」

「あのな、この仕事で俺らが成功して終わったら、坂崎が俺たちのこと信じてくれるってさ!」

「え、マジっ?」

「ホントっすか!」

「わぁ‥!」

一気に三人の顔がパアッと明るくなった。あのな‥説明が端折りすぎだぞ桜井。ちっとは信じてやるとは言ったが、全面的に信じるとは言ってねーぞ。

しかし三人の反応があまりにも嬉しそうなので、暫くは黙っておくことにした。

「だからさ、俺たちでアイツら捕まえれば坂崎の信頼を得られるんだぜ!」

「お、やるっきゃねーじゃん!よし、行くぞ正将!」

「は、はい!僕も頑張ります!」

「桜井さん、俺も全力でやります!桜井さんの足を引っ張らないよう、努力しますんで‥!」

「大丈夫、お前なら俺の相棒になれるはずだ。信じてるぜ、太郎」

「うっす!」

ったく、コイツらは‥

「おい!勘違いすんじゃねぇぞ!?信頼するとは言ったが、つけ上がるんじゃない!!」

「え、だって!嬉しいんだもん!坂崎にやっとそんなこと言って貰えるようになれるなんてさ!‥ねぇ?」

「そーだぜ。俺たちなんてどれだけ時間かかったと思ってんだよ!太郎たちが羨ましいぜ」

「ハァ‥」

高見沢の目がキラッとしているし、桜井も真剣な眼差しでこっちを見てくるしで‥。コイツらもガキかよ。

‥‥とは思うものの、なんだこの気持ちは?胸の奥底が疼く。‥俺も嬉しがってる?いや、そんなはずは‥。あり得ない、そんなことある訳ない。

クルッと向きを変えて、サッサと行っちまえば後から「待ってよ、坂崎!」という声と共に俺を追いかけてくる四人。そんなことをしていると、棚瀬が無線で「愛されてますねぇ~」なんてからかってくる声もする。

「うっせーぞ棚瀬」

「だってホントじゃないっすか!あれ?照れてますー?」

「ぶっ殺すぞお前。あとで構え」

「あっはー、構わないです。坂さんの相手すると死ぬんで嫌です」

「クソが」

向こう側からサクサクという音が聞こえてくるが、まーた何か食ってんのか。聞いてもないのにアイツは「パイの実のアップルパイ味おいし~!」なんて幸せそうな声色で独り言を言ってやがる。

それに後ろで反応している高見沢。

「それって秋限定のやつだろ!?」

「あ、そーでーす。俺フツーのやつより期間限定の方が好きっす」

「んな話しどーでもいいから俺にもくれ!」

「コンビニで売ってるんで買ってこればいいんじゃないっすかー?」

コイツらまーーーーた言い合いしてやがる。しかも毎回食いもんの話しばっかじゃねーか。

‥なんて呆れてると、棚瀬の声が一つ低くなった。おっと、奴らのお出ましか?

「はい、もうパイの実の話しはいいです。皆さーん、奴らが出てきましたよ~。すぐそこのビルの屋上に居ますね。ちなみに三人ともバラバラに分かれています」

「分かった。おい、お前ら二手に分かれろ」

四人を棚瀬の指示してきた建物とビルの方へと向かうように仕向ければ、桜井が俺の横を通り過ぎる際に「これで終わりにして、お前を信頼させてみせるからな」と言いながら太郎と一緒に俺の下から去って行ってしまった。

‥ふんっ。せいぜい頑張ってみせろ。俺は信頼しねーからな。

高見沢と鈴木もワイヤーを使ってシュパッと音を立てながらすぐさまこの場からいなくなってしまい、残るのは俺一人だけ。アイツらなら二人がかりだったらとっ捕まえられるだろうしな。俺も一人で勝てる相手でもある。‥が、奴らがどう体を変えさせられちまったってことにもよるか。

あんまり油断しない方が自分の為にもなる。

「いいですか皆さん、今桜井さんたちと高見沢さんたちが向かっていった建物とビルには爆発物らしきものが設置されてあります。坂さんの方も何かしら仕掛けがあるかもしれないので、気をつけて下さい」

「分かった」

すると他の四人も「了解」などと棚瀬の言うことに対して返事をしていた。

やっと相手が居るビルの屋上へと降り立てば、俺に気付いた相手はこちらを振り返っては「よぉ、坂崎」と挨拶をくれる。なので俺もテキトーながらも「また会ったな」などと返してみせるが、相手は全く顔の表情を変化させなかった。

‥そう、コイツが俺と仲の悪かったサブリーダー。

「真実を知ったか?」

「あぁ、全て知った。‥お前たちにはなんて言えばいいか」

「何も言うな。俺らはもう戻れない。お前らの上司が招いた結果だ」

「‥だな。俺もお前らが死んだなんて思ってもみなかったんだ。助けてやれなかったことには‥申し訳ないと感じてる」

「いや、坂崎は知らなかったからお前を責めるつもりはない。だが、真実を隠した秘密警察という組織に俺たちは憤りを感じてるんだ!!そしてあの訳分からん人体実験施設!なぜあんなのがある!?どうして俺たちはあの施設を知らされなかった!?」

「俺もお前らと同じ気持ちだ!正直今もあの秘密警察という組織を疑ってる。そこまでは分かる。恨みたい気持ちがあるのは分からんでもないが、なぜそこから国を狙う発想になる?総理を脅して何がしたい?」

「あんな訳の分からん場所を野放しにするどころか、国は援助までされてるらしいじゃねーか」

「‥‥政府自体はあの施設を知ってる奴らが少ないはずだ。恨むなら、アレを作った大臣を恨めよ。そしたら俺だって協力して捕まえるくらいはやってやるのに」

「お前は体を改造されてないからそんなことを言ってられるんだろ!?」

「まぁ、そうかもしれんな」

ポリポリと頭を掻きながら話しを聞きつつ、俺もなんとなくコイツらが秘密警察という組織や政府を恨みたい気持ちも理解出来るようにはなってきた‥が。

「俺はこの国を脅やかす奴らは誰も許さない。例えそれがどんな理由であれ、この国の平和にヒビを入れようもんなら‥‥俺がとっ捕まえるだけだ。仲間だった奴らだろうが、俺は容赦しねぇぞ」

構えてみせると、相手もバカにしたように「ハッ!」と笑ってきやがった。なんだ、銃撃戦でもやるのか?だったらそっちでケリつけてもいいけどな。

「いいか!俺たちの心臓部に強い衝撃を与えてみろ!!‥‥そしたらお前諸共あの世逝きってことを忘れるなよ」

「なっ‥」

「いや、お前だけじゃなくこの周辺の住民には被害が及ぶだろうな。‥さて、そんな奴でも構わなければ俺と一戦交えようじゃないか。頼もしいリーダーの坂崎さん」

「クソっ‥」

なんつー危険で厄介な相手なんだ。

そう思っていると、無線から高見沢の声で「コイツらヤバいって!戦おうにも戦えないよ!!」などと嘆く声が聞こえてきた。すると桜井の方も「ムリに接触すると心臓に衝撃与えちまいそうで恐いわ!」なんて弱気な発言をしてくる。

高見沢たちと桜井たちも他の二人に今の俺と同じような説明を聞かされたんだろう。

どうする?コイツらに死ぬ気があるのかないのかさえ分かれば全力で戦えるんだが。死ぬ気がなければ心臓を必ず守ってくるはずだし、死ぬ気でいるなら自爆する可能性だってある。‥‥どっちだ?

「‥‥。」

「どうした坂崎?かかって来ないのか?」

「‥‥、」

一瞬だけ閉じた瞼。そこから導き出された答えが確信した時、この俺たちの会話を聞いていた棚瀬も同じことを思ったのか「坂さん、思いっきりやっちゃいましょう」なんて伝えてきた。

「あぁ、そのつもりだ。いいかお前ら、奴らは爆破を見たがっているはずだ。この国が混乱に陥るところを目にしない限り、絶対に死なない。遠慮するな、全力で捕まえろ。相手は元秘密警察の精鋭部隊だ、くだらないヘマで自分自身が死ぬなんてことはしないし、プライドも高いから復讐がし終わるまで生きるつもりだ。いけ、躊躇するな!!」

「はいよ!」

「りょーかいっ!」

「分かりました!」

「は、はいっ!」

絶対に捕まえてみせろよ、おめーら。

俺もギリッと目の前に居る相手を睨み付ければ、奴はつまらなさそうに俺のことも睨み付けてきやがった。

「俺たちだって今や殺人兵器だ。そんな簡単に答え出しちゃっても知らないぜ!?」

「お前らのことだ。必ず生きてこの国の地獄と化したところを見たいんだろ?趣味悪すぎるんだよ、この反逆者共がッ!!」

走り出した二つの足音。そして段々と昇ってくる朝日。

完全に夜が明ける前に片付けてやる!!

送信中です

×

※コメントは最大1000文字、10回まで送信できます

送信中です送信しました!