秘密警察-Secret Police- - 22/39

SP20

元から警察が多かった昨日から今日にかけてなので、すぐにパトカーが何台も駆けつけてくる音が聞こえてくる。

高見沢と鈴木が居た方の建物へと急いでやって来るも、上層階の部分がかなり破壊されてしまっており、瓦礫の下敷きになっている可能性も高い。さて、どうする。

ポケットにしまってあった懐中時計を取り出し、生命反応が示す機能に切り替えてみせれば、ピピッピピッという音が鳴り続けていた。近くに居る証拠だ。

キョロキョロと足許を観察していると、高見沢の長い髪が瓦礫の下から見えた。お前のその長い髪がこんなところで役に立つとはな。

急いで瓦礫をどかし、高見沢を救い出してみせれば近くに鈴木も居たので、こっちも瓦礫に埋まっていた為に慌てて建物の残骸をどかしてみせた。

「‥‥。」

ハッキリ言って見ていられない姿をしていた。

だが、コイツらはまだ生きている。俺は相手が生きている限り、諦めるつもりはない。もしコイツらが確実に死んだとなっていれば、俺は迷わず奴らを追っていただろうけど。

二人を抱え上げ、ワイヤーを使ってすぐさまこの場所から退散してみせて、別のビルの屋上へとやってこれば、そのまま二人を一旦置いて今度は桜井と吉田を捜しに行くだけ。

さっき確認したが、奴ら三人はもうとっくにここから居なくなっていた。サブリーダーの奴は俺がフルボッコにしておいたので、多少は動きが鈍くなってるはずだが。ま、次会ってみねーと分からんな。奴は今度、俺に復讐しに会いに来るだろうからその時全員とっ捕まえてやればいい。

足場の悪い半壊しかけたビルは、火事も起き始めておりヤバいことになっていた。桜井たち、どこに居る。

先ほどと同じく懐中時計で生命反応を探し出すも、ここには反応がない。移動しながら煙を吸わないようにと、久しぶりにマスクを着けてみせれば俺は火と煙が舞う中へとなんの迷いもなく飛び込んでいった。

「桜井!吉田!どこに居るッ!?」

ダメ元で叫びながら捜し続けていると、懐中時計がピピッと音を鳴らしては二人が生きていることを知らせてくれた。

どこだ、どこに居るっ?

視界が炎と煙のせいで見え辛い。どうしたものかと思っているが、悩んでる時間はない。じゃないと俺もここで死ぬハメになるからな、時間との勝負だ。

そう考えていると、どこからか「さ‥か‥‥」という声が聞こえてくる。この声は‥吉田か?

「吉田ッ!?どこに居る!!」

「こ、‥‥こ‥」

耳をすまし、聞こえてきた方向に顔を向けると瓦礫の下から白い手袋が見えた。あれかっ!

急いで吉田が居るであろう場所にタンッとひとっ飛びしてみせると、そこに居たのは吉田だけではなく桜井も居てくれた。辛うじて意識が残っていた吉田だったが、桜井の方はピクリとも動かない。

吉田を庇うようにして、自分の腕の中で後輩を精一杯守ってやった証し。

瓦礫を全て退け、二人を助け出すも吉田は意識があるとはいえ朦朧としているようだし、とても動ける状態じゃない。そりゃそうか。

「生きてくれてて良かった」

「‥‥ご、め‥なさ‥」

「今は謝ってる場合じゃねぇぞ。ここから離れる」

コクンと力弱く頷いてくれた吉田だったが、俺が助けに来てくれたのを知って安心してしまったのか、その後はガクッと体の力は全て抜け出して意識を手放してしまった。よく頑張ってくれた、エラいな。

二人を抱え、俺は炎と煙の中を一瞬で飛び出しては隣のビルへと飛び移り、先ほど二人を置いてきた場所まで戻ってきた。二ヶ所で何十台もの警察、消防、救急が来ては対応に追われている様子だ。

‥悪りぃな、こんな状況にしてしまって。だが俺は人前には出てはいけない職業。悪いとは思いつつも、すぐにここから去る方を選ぶ。迷うことなんて何もない。

「‥‥ハァ」

もうダメか‥。生きていても、この先この四人が今まで通りに体を自由自在に使って動かせる未来は見えなくなっちまった。

嘆いていても仕方ないから嘆かないけどさ。

そんなことで棚瀬の迎えを待っていると、アイツはまさかのヘリコプターで迎えに来やがった。まぁ確かに下は混雑してるし、通行止めや規制が入っちまったからヘリコプターで正解かもしれんがな。

ヘリを運転してんのは棚瀬じゃねーからな。別の奴だ。

他に応援に来てくれた秘密警察専用の救急隊員が四人の体を持ち運び、ヘリの中へと移してくれたりと、ホントに便利なこった。俺がなんかあったとしても、速やかに本部へと送り届けて貰えるのだろう。

「坂さん、申し訳ありませんでした」

「お前のせいじゃない」

隣にやって来た棚瀬が俺に対して謝ってくるが、お前だけのせいじゃないんだよ。‥この俺にも今回は責任がある。アイツら四人に任せたことによって、四人は俺の信頼欲しさに張り切っていたにも関わらずこんな結果にさせてしまった。

俺があんなことを言わなければ‥‥

「‥っ。後悔しても遅いのなんて一番俺たちがよく分かってることじゃねーか」

「‥え?」

俺の独り言に反応していた棚瀬だったが、俺は棚瀬をシカトしてヘリの中へと入っていった。

その後、俺たちは組織へと帰って来て重体の四人は緊急治療室へと運ばれて行かれた。そんな慌てて運び込まれる四人をただ見送ることだけしか出来なかった俺と棚瀬だったが、俺たちが何かしても手助けにすらならないしさ。

大人しく待っているだけ。

。。。

そしてまた夜がやって来る。

今日は暇で長い一日だった。何もしないで過ごすってのは、ホントに退屈で仕方ない。

組織の建物の屋上で一人ボーッと、東京の夜景を見下ろして眺めていれば、建物の中から屋上に出てくる為のドアがガチャンと開いてはパタンと閉まる音が鳴り響く。そんな音に振り返ることもせず、黙って夜景を眺めていると、隣に棚瀬が座ってきた。

「‥良かったですね。皆さん、なんとか一命は取り留めたみたいですよ」

「そうか。アイツらもしぶといな」

「そりゃ坂さんに信頼されるまで生きていたいに決まってるじゃないですか、四人だって」

「そういうもんかね」

「仲間ならそーいうもんですよ」

バリッと何かのお菓子の袋を開けた棚瀬。しみチョココーンとかいうやつだった。その袋をパーティー開きにして、俺と棚瀬の間に置いては「勝手に食べて下さい」とか言いながら早速一口パクッと食べている棚瀬。

そういや、今日なーんも食ってなかったわ。

マスクをズラして遠慮なく俺も食べ始めてみせると、棚瀬が「あ、牛乳ありますよ!」とニヤニヤした顔して俺を見てくる。あぁ?牛乳だと?

「んなもん人間の飲むもんじゃねぇ」

「えー、牛乳美味しいのに!なら、いちごオレにしますー?」

「バナナオレのがいい」

「今日はいちごとフツーの牛乳しか買ってませーん」

「‥ならいちごオレでいい」

「坂さんかわいー!」

ぜってーコイツわざと買ってきただろ。

棚瀬を睨みつけるも、コイツはそんな俺の視線を華麗にスルーしながら「坂さんこれからどうしますー?」なんて尋ねては話題をすり替えようとしてきた。‥クソ。

「‥アイツら四人の回復に見込みはあるのか?」

「いやー‥厳しいっすね。太郎くんが一番軽傷なので、太郎くんはなんとか復帰出来そうですけど‥まだ分かりませんって」

「桜井と高見沢と鈴木はアウトか?」

「先生がさっきそう言ってましたねぇ」

「そうか‥」

「また俺たち二人だけが残っちゃいましたね」

「そういう運命なのかもな」

いちごオレをぢゅー‥と吸って飲んでいると、棚瀬が顔の表情を少しだけ暗くしては「もう引退しようかな‥」と弱音を吐き出してきた。

「俺は止めねーぞ。お前が選んだことなんだし」

「ちょっとは引き止めて下さいよ。つまんないなぁ」

「ボスが帰って来た時に俺一人だけしか残ってなかったらボスどんな顔するんだろ」

「ボスも“引退しよー”とか言いだしそう」

「あり得そう‥」

そんな真面目なのか不真面目なのか分からない会話をしていると、後ろの方から「ざまぁねーな」という桜井の声が聞こえてきた。

一瞬、えっ?と思ったものの、この喋り方はうちの桜井じゃない。

バッと二人で振り返ってみると、建物の中へと通じるドアの上に居たのは‥‥

「殺し屋ッ!?」

「よぉ、久しぶりだな。秘密警察」

バッと立ち上がり殺し屋の桜井をとっ捕まえようとしたが、奴は手に銃を持っており、俺たちの居る方に銃口を向けて構えてきやがった。クソッ、近付けねぇ‥!俺も今は銃を持ってないんだよ‥

隣に居た棚瀬もビックリした顔をしながら「アレが‥殺し屋の桜井さん‥?」と呟いていた。

そんな殺し屋の桜井は、口にタバコを咥えてもう片方の手でライターを持ち、火をつける仕草を見せてくるこの余裕っぷり。流石ヤクザの組長の息子なだけあるな。

「お前、バッカじゃねーの?ここはテメェからすれば敵の陣地なんだぜ?飛んで火に入る夏の虫だぞお前」

「仲間を呼びたければどうぞ呼んで下さい。‥‥意識が戻ればの話しだろうが」

「くっ‥」

なんでコイツ、そのことを知って‥

フゥーーッと煙を吐く姿と銃を構えるその姿は正直に言って格好いいというか、ハードボイルドというか。

すると殺し屋は、俺たちを見下してはフッと鼻で笑ってくる仕草を見せてきやがった。なんなんだ、なんの為にここへ来たんだ?

「俺らをからかいに来たのか?あぁっ?」

「教えようと思ったから来ただけなのに」

「何をだっ!」

「いや。アンタらが今相手してる元秘密警察の奴ら。アイツら、俺たち裏の世界の人間からすれば結構有名だったんだけどな」

「そうなのか‥?」

全然知らなかった。そんな情報すら回ってこないなんて‥

そうか、上が俺たちに情報が回らないようにしていたのか。

「何も信じられない組織に属してちゃ、お前らもどう動いていいのか分かんねーわなそりゃ」

「っ‥。俺たちは俺たちの判断で動くつもりだ。もう上には頼らない」

「それが賢明だな」

ククッと笑う殺し屋の野郎。なんなんだよ、コイツは‥!

すると今まで黙っていた棚瀬が殺し屋に向かって「アンタ、他にも何か知ってるんでしょ?」と尋ねていく。怖いもの知らずな分、この殺し屋の桜井に興味もあるようだ。まぁ、いつもモニター越しでしか知らないからだろうけど。

そんな棚瀬の質問に殺し屋は「夜が明ける前に‥」と訳の分からないことを言ってきやがる。

「はぁ?」

「お前らあんまりここでゆっくりしてちゃダメなんじゃねーの?」

「なんでだ」

そう聞いてみるも、殺し屋は口を閉ざしては横に置いてあった袋を持ち上げては何かを確認しているようだった。なんだ、あの袋?中身はなんだ?薬物か?

「その袋の中身ってなんすかー?食べるもの?」

「食べるものじゃない。ちょっと頂戴してきたものだよ。これから先二度と手に入らなくなりそうだからさ」

「‥‥なんだソレは?言え!!」

「さぁ、なんだと思う?」

またバカにしてくる顔でこっちを見下ろしてきやがる。クソッ!はらわたが煮えくり返りそうだ‥!!

そう思っていると、暗かった辺りに太陽の光が差し込んできた。もうそんな時間になるのか。

「おい、殺し屋っ!!俺の質問に答えろ!!」

「‥‥うちの坂崎を不死身にする薬」

「ハアッ?」

「殺し屋さんのところの坂さん?」

「そうだ。‥‥なぁ、秘密警察。早く病室戻った方がいいんじゃねーの?」

「お前の指図は受けん!」

「そうじゃなくてさ、」

左手をヒラヒラしては、まるで「お前バカだな」と言わんばかりの顔で見てくるその態度。ほんっとに腹立つ‥!

しかし、そんな腹立つことすら忘れ去ることの言葉を殺し屋は残していくことになる。

「いいのか?お前らんところの俺や高見沢たち、うちの坂崎みたいになっちまうぞ?」

「はっ‥?」

「えっ?」

何を急に‥‥

いや、待て。まさか‥

「お前、その薬って‥!」

「あ、やっと気付いたか。アンタらが必死で潰そうとしてるあの人体実験施設だよ。昔そこでうちの坂崎が世話になってたからさ」

「くそっ‥!おい、棚瀬行くぞッ!!」

「えっ!ちょっと待って、まさか‥っ!?」

「あぁ、そのまさかだ!!」

殺し屋が目の前に居るにも関わらず、俺と棚瀬は病室へと駆け出してみせた。

嫌な予感がする‥!

一命を取り留めた‥ということは、もしかしたら次はあの四人があそこの施設に連れて行かれるんじゃ‥!?

ちくしょう!!

絶対そんなことさせてたまるもんか!!今の上ならやりかねない!この間俺と棚瀬で乗り込んで暴れてしまった分、俺のチームの桜井や高見沢たちは上に狙われてもおかしくないッ!!

させない、アイツらの体を勝手に使って人体実験なんかさせてたまるもんかッ!!

もう二度と同じ過ちは繰り返したくなんかない!

「‥‥ふんっ。そのまま全員死ねば良かったものを」

口に咥えていたタバコを消し、吸い殻入れにタバコを収める。ここに落としていく程バカじゃない。

さて、秘密警察が乗り込む前に薬も頂戴という名の泥棒をしてきた訳だし、これくらいあれば坂崎にとっても、この先の仕事に支障はきたさないだろうな。

「じゃあな、秘密警察さんよ。‥いつかお前らを殺してみせるからな」

俺はここから降りて、放ったらかしになっていたお菓子を一つ貰い受けた後に、この場から去ってみせた。

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