MPⅡ 思い出・その後編 - 7/20

人魚のお誕生日記念として、MPⅡその後編始動開始!ソフィア達の世界観からみんな戻ってきてね!頭混乱しないでねw

 

 

あれから一年。

 

もう一年が過ぎてしまった。

 

時の流れが早く感じるのは日常というものに慣れ過ぎたせいであり、子供の頃みたいに刺激がない日々を送っているせいだとか。

そして今日は二ヶ月ぶりに大好きな女(ひと)に会えた。俺がこの世で一番大切だと思っている女。二人で静かな海岸を今歩いている所だ。

 

サクライの方は半年前に結婚式を挙げ、今は正妻となっているのでこの城に嫁いできて一緒に暮らしている。俺とも仲がいいからよく喋ってくれたりもするし、サクライ達みたいに仲睦まじい夫婦になれる事を夢みて俺は今後の生活をどうするか悩んでいた。

プロポーズをするのにはまだ早い気がしてね。いや、でも俺達もそれなりにデートもしてきたし、楽しい時間も過ごしてきた。‥夜の事情は‥まぁ、程々って感じかな。中々会えないしね、あっちもいい所のお嬢様な訳だし。あんまり俺の汚れた手で彼女を穢したくはなかった。

なんてったって彼女もサクライが好きだった一人だしな。最初俺の事なんて見向きもしてくれなかったくらいだからさ、こっちはサクライに女がいると知って落ち込んでる彼女をどうにかしてあげたいって気持ちで近付いて、元気に笑ってる姿を見てみたいって思ってたんだけど‥

 

やっぱり興味ない男相手だとダメだってのがよーく分かったよ。正直俺はモテる方だし、何人抱いてきたか分からない遊び人だったのはもう知っているだろう。

けどさ、本気で好きな女性に振り向いて欲しいって思ったらそんないい加減な気持ちが嵐の如く吹き飛ばされていったよ。タカミザワがよく俺に「お前は本気になれば一途になれる筈」と言われてたのがようやくそこで理解出来た気がした。‥遅いけどね。

 

タカミザワ‥

タカミザワ、お前さ‥今どうしてる?元気にしてるか?

 

俺は相変わらずだよ。

お前と約束した通り、今俺はこの女と大切な時間を過ごしているよ。こうして今はたまにしか会えないけど、きっといつか二人で素晴らしい時を作り上げていきたいと思っている。いや、絶対にしてみせる。

 

タカミザワに会えるなら会いたいよ‥

 

でもお前はもう二度と俺達の前には現れてくれないんだよな‥きっと。時々夜中の海から聴こえてくるお前の高くて綺麗な声にあわせて俺とサクライで歌ってるの知ってるか?

お前の姿は見えずとも俺とサクライはお前の事を見ているさ‥。ずっとずっとこれからも、死ぬまで。

 

「‥ふぅ、」

「どうなされたのですか?」

「ううん、何でも。昔の事思い出してただけ」

「タカミザワ様‥ですか?」

「まぁ、ね」

 

その後は無言が続いた。俺の事を気遣ってくれてるのかな?ありがと。

そうだ、タカミザワが人魚ってのは俺とサクライしか知らないままだからな。ま、これからも誰にもこれを他言するなんて絶対あり得ないけど。

 

タカミザワ、見てるか?

俺、お前と約束した通り、この人を幸せにしてみせるから。もう自分勝手な我が儘な王子じゃない俺を‥見ててくれ。

 

「‥お前は幸せか?」

「はい。とても幸せです。コウノスケ様と出逢えて私は人生が変わりました」

「俺も。だから‥もうちょっと待っててくれ、よな?」

「はい‥。いつまでもお待ちしております。私は貴方様に一生着いていきます」

「‥ありがとな」

 

キュッと握り締めあった手はお互い暖かいままだった。

 

 

 

「そう言えばさ‥」

「はい?」

「タカミザワが好きだったロールケーキって隣町にある店だったよね?」

「えぇ、そうですけど‥」

 

隣で一緒に歩いていた使用人に尋ねてみれば、やはり正解だった。それが分かれば俺はすぐに思い立ち、「ならそこの店に行こうかな‥」と呟けば、彼は「いえ、とんでもございません!我々で行きます!」と言ってきた。

 

「え、でもさ‥今日は特別な日だからさ‥俺も行きたいよ」

「いやしかし‥!この後のスケジュールもあるのですよ?それを無視されては困ります」

「だって一時間もあれば帰って来れるだろ?その間何とかしてくれないか?」

「我々で行きますよ」

「や‥。うーん、俺も行きたいんだけど」

「いや、しかし‥」

 

何度もこのやり取りをして、この後入ってるスケジュールをこなしてからその店に行くならいいと言われたので、仕方なくそうする事にした。

 

「何故そんなにも行きたがるのです?」

その質問に対して素直に返事をするのか曖昧にするのか、少しばかり迷ったけれど隠してもしょうがないかなと思い正直に話す。

 

「だってさ、今日はタカミザワとお別れした日だもん。だからアイツの好きだったケーキ買ってサカザキと食べようかなって‥。それだけ」

「あぁ‥タカミザワ様ですか。お懐かしい。我々もまた貴方がた同様、あの方にも振り回されてましたからね」

 

そこで二人とも小さく苦笑する。

「口が聞けなかった分お前達も余計苦労したろ?」

「えぇ。ですけど、不思議な事にお二人はタカミザワ様が紙に文字を書いていなくてもちょっとした口の動きと身振り手振りだけで全て理解していた事には私達も驚きました」

「あはは‥。以心伝心ってやつ?」

 

なんとまぁ、と呆れられたみたいな流石だなと思われた口調。それを聞いてちょっぴり嬉しさを覚えた俺はクスッと思わず笑ってしまった。あー、みんな俺らの事そんな風に見てくれてたんだなって思うと‥ね。

そうだな。確かにタカミザワは人間になると声が出なくなっちまってたからな。だから常にペンとメモ帳を持たせていたけど、アイツのおっちょこちょいな性格じゃあすぐ紛失するし、忘れるしでタカミザワが何か伝えてくる時はほぼ直感でそれを当てていたってのは事実。

 

いや、けどね、やっぱり俺らってどこか繋がってる訳で‥その直感って確実にタカミザワが言いたい事だったりする。そりゃたまには間違えるけどさ。その度にタカミザワは慌てて首振ってたり両腕を忙しいそうにブンブンしてた時もある。でもああいう仕草をしてる時のアイツ可愛かったよな‥、なんてね。

 

「タカミザワ様が声の治療で遠くへ行ってしまわれましたから我々も寂しい限りです‥」

「‥‥そうだな。タカミザワの声‥聞きたいよな」

「えぇ。いつか言葉で話してみたいものです」

「‥‥だな」

 

そう。タカミザワがここへ来なくなったのは、声の治療の為とみんなには伝えてある。勿論そんなのは嘘であり、タカミザワがこの場所へもう二度と戻って来ないなんて事も口にはしない。

ただ‥みんながこうしてまだタカミザワの事を想っているからこそ本当の事を喋りたい衝動は幾度となく経験してきた。

 

アイツは人魚なんだ。俺らはほぼ毎日会って喋って楽しい時間を過ごしていた。ひと月に一回‥月の最後にだけ人間になれて、三人でこの城で集まってバカ騒ぎしているあの時のアイツは、人間になると引き換えで声が出なくなってしまったんだ。

サファイア色をした大きな美しい尾ひれと瞳。男の癖に引き締まった細くて女でさえも憧れてしまう身体。長い髪に、頭の上にはたまにヒトデが飾ってあったりしてさ‥

そんな優しくて女みたいなアイツが本当に女だったらな‥なんて俺もサカザキもタカミザワも思っていた事なんて全て内緒。誰にも話せないし、話す気もない。

 

「‥‥はぁ、」

「マサル様」

「ん?あっ、あぁ‥悪い、忘れてた」

 

唇にチュッと軽く落とされたキスの後、彼女はニッコリ笑って俺を見送った。

仕事も全て終え、隣町に行く事になった俺は、今から馬車に乗ってちょっとした遠征をする。多分夜には帰って来れる筈だけど、俺が何処か出掛ける時にこのキスは恒例のものとなっている。

 

「じゃ、行ってくるね。‥お願い、出して」

「はい」

 

そうお願いした直後、「待ってくれ!」とサカザキが慌てて走ってきて、俺を見ながら「あの‥いいか?」と聞いてきた。

「俺はいいけど‥」

「なら行きたい。連れてってくれ」

「あぁ、」

 

扉を開け、素早く乗り込んできたサカザキが向かい側に座ると、「間に合って良かった」と呟くと同時に馬車は動き出した。

 

「珍しいな、お前が外出たがるなんて。しかも彼女置きっ放し?」

「‥タカミザワとの日って説明したら嫌な顔せず了承してくれたよ。帰って来たら‥みんなで一緒に食べようって約束してさ」

「あぁ‥二人も一緒に?」

「嫌だった?」

「嫌じゃないけど、たまにはサカザキと二人で話したかったからさ」

「ならサクライお前の嫁が寝た後俺の部屋来いよ。そこで飲み直そうぜ」

「分かった、そうするよ」

 

二人で小窓から見える景色を眺めていた。

夕日に染まる紅い海。

あの海に俺達の親友が住んでいるから‥。

 

「二人とも‥本当にありがとう。僕達が別れたあの日から丁度一年経ってしまったけど‥二人とも、覚えててくれたんだね。凄く‥嬉しいよ。

僕は元気だよ。少しずつ立派な海の王子様になっているから。大丈夫だよ、僕の事なんか心配しないでも。僕は‥ずっとこの海にいる」

 

さっき雲外鏡が鏡に戻ったかと思いきや、二人の姿を見せてくれて、その二人の言葉と大切な人との仲の様子。僕が居た頃の会話をしてる様子を全て見せてくれた。

忘れてなくて‥良かったよ。僕、今凄く泣きそうになってるけど、僕泣かないよ。強くなったでしょ?

 

あ、バッサリ切られた髪もだいぶ伸びてきたんだよ。ちゃんと元の長さに戻すつもりだからね。

‥って、言っても伝わらないよね。僕に二人は見えていても、二人は僕の事は見えないから。

 

でもね、こうして覚えてくれていただけで胸が張り裂けそうな程嬉しいんだ。

大好きな大好きな二人の人間の王子様‥

 

僕は貴方達の事をいつまでも見守っているからね‥

 

 

本当に久しぶりに人魚としての話を書いた気がする‥!

いやぁ、こっちの二人の王子様はちゃーんと幸せですねぇ。笑

それを見守る人魚も海で頑張ってますよ。ま、その話はまた今度にでも書きます‥

 

にしてもサカザキ王子、ソフィア相手とは全く別ですね。笑
この彼はサクライ王子には劣りますけど、それなりに紳士にはなってますからね

9月17日は人魚のお誕生日。無事に一才を迎える事が出来ました!こんな王子様達ですが、これからも宜しくお願いします!(ソフィア達もね!)

 

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