MPⅡ 思い出・その後編 - 8/20

MPで、急に五年後くらいに設定吹っ飛ぶけど大丈夫かな

 

「王子様ぁ!これ早く見てみてよ!」

「ん?」

 

雲外鏡がこちらに向かって泳いで来たかと思うと、アイツは僕の目の前でいきなり元の鏡の姿に戻ってしまった。自分の手許に落ちてきた鏡を覗くと、そこには僕の親友の王子様の一人がそこには映し出されていた。

隣に居たタロウと一緒に鏡を見ていると、サクライの物凄く嬉しそうな顔がそこにはあって、彼と一緒に映っているのはとてもとても小さい赤ん坊だった。

サクライの腕に抱っこされてる赤ん坊はすやすやと眠っており、隣に居る大事な人もサクライと同じく本当に愛おしそうに赤ん坊を見つめていた。

 

「わぁあ‥!サクライ、ようやく産まれたんだね!すごい!めちゃくちゃ可愛い‥」

「男の子なんだね」

「サクライに似て紳士な子になって欲しいなぁ~」

「この子ならなりそうな気がする」

「僕もそう思う」

 

二人して笑っていると、雲外鏡は僕の姿に戻ってしまった。せっかくサクライの子供が産まれたのにもうちょっとくらい見せてくれたっていいじゃないか。

て言うかいつまで僕の姿借りて生きてるんだよ。お前は元々陸の方の妖怪なのに何で海に居るんだ。

いや、でもこうしてサクライとサカザキの様子を見せてくれるから文句は言えない立場になりつつあるけどね‥。だからどっちかと言えば、隣に居て欲しいかな‥とは思う。けど、僕の姿してなくったっていいじゃんか。

 

でも、そっか‥

サクライもようやくお父さんなんだね。

 

何だか僕の方が信じられないよ。うーん、だけどサカザキの方のがもっと想像つかない。サカザキが父親?どんな子が産まれてくるんだろう。性格なら母親似のがいいかもしれない。

そんなサカザキだけど、彼は未だに結婚していない。いつになったら一歩を踏み出せるのやらって感じではあるけど、ずーっと変わらずあの人と居るから心から大事にしているなってのは伝わってくるよ。僕と出会った頃のサカザキとは見違える王子様になっちゃったからね。それに僕の約束も果たしてくれてるし。

 

二人共いい男になったなぁ‥

 

「ねぇタカミー、そろそろお城に戻らなきゃ」

「うん、そうだね。特に異常はなさそうだし‥帰ってお兄様達に報告しなきゃいけないからね」

「二人の人間の王子も変わったけど、こっちの人魚の王子様もだいぶ変わったからな~」

「いつまでも泣き虫で弱い僕のままだったらお父様やお兄様達に怒られるんだもん!‥精神的にも強くなったとは思うんだけどな~」

「でもタカミー、暗いほら穴とか怖がるじゃん」

「あっ、アレは‥!別にそんなんじゃ‥!」

「ほら、そういう慌てた喋り方とか。まだどこか弱いイメージが残ってるからな~。立派な矛持って海の見回りしたり弱い者を守ったりしてる風には見えないよ」

「うぅ‥。僕だって本当はこんな事したくないもん」

「タカミーが遊んでばっかいたからでしょっ!」

「ごめんなさーい‥」

 

そうそう、僕は辛い修行にも耐えて今じゃ海を守る一員になったばかり。見た目は殆ど変わらないせいか、みんなが僕の事を「大丈夫か?」「一人で行けるか?」とか「ムリするなよ」って心配してくる。過保護すぎるのは僕がこんな風なせいだと思うけど‥

たいして強いって訳でもないから僕一人じゃ何かあった時は対処出来ないだろうってなって、タロウが一緒に居てくれる。タロウのが僕なんかより全然強いんだよねハッキリ言って。

 

だから何かあった時はタロウが何とかしてくれる。結局は僕が守られてるし、海に引き戻された意味が分からなくなる時があって落ち込む時もある。

髪はもう元通りになってるし、筋肉はついてしまったけど術でそれを隠してしまっているので全く力があるようには見られない。でも一応力はついた‥つもり。

 

くびれだって維持してるよ。

城に帰ってみると、何故かみんなが騒がしい。何だ?と思い、タロウと雲外鏡の顔を見合わせていると、こちらにタダスケが慌てて寄って来て「無事でしたか!」と言ってきた。

 

「無事って何が?」

「先程知らせが入ってきて、人魚が人間に捕まったという報告がございまして‥」

「えっ!?捕まった!?だ、誰が‥っ?」

「分かりません。けど王子様じゃなくて一安心しました‥。今しがた他の皆にもあまり陸の方へ近づかないように警告を出しておいたのですが‥。王子様も気をつけて下さいよっ?貴方が一番捕らえられる確率は高いんですからっ!何度言えば分かるのですか、いくら人間の王子を見たいからといって、すぐに海から出ようとするのは‥」

「あー、うん分かった分かった。もう何回も聞いたからその話は」

「聞いて下さいよ王子様!貴方今、中途半端に強いだけなんですからね!?まだ兄上に及ぶ程とは‥って、ちょっと!何処行くんですか!?」

「お姉様達の所に行くだけだよーっ」

「‥もうっ!」

 

けど、今の話が本当なら僕達の世界が危ないというのには変わりない。ここはタダスケの言う事に従って、海から出ない方がいいのかもしれない。二人の姿が見たければ、雲外鏡が何とかしてくれるし‥

夜中歌を歌うのもやめた方がいいかな‥。でも、あの声を二人に届けて、僕はここに居るよっていう意味をちゃんと伝えたいんだよね。けど僕達の仲間が人間によって捕らわれたり殺されたりする方がよっぽど危険だ。

 

「タロウ、お姉様達に詳しい事を聞きに行ってきて。僕はお兄様達の所へ行くから」

「分かった」

 

タロウと別れ、僕はお兄様達が居るであろう場所へと向かえば、全員がそこに揃っていて、しかもお父様も居るではないか。

僕に気付いたみんなは「無事だったか」と心配してくれた。

 

「人間の世界へ遊びに行ってたからお前が捕まったのかとばかり‥」

「僕はもうそんな事してません!それより、どういう事なんですか?」

 

一番上のお兄様に言われたが、僕は顔をお父様の方へ向けて聞いてみる。

難しい顔をしながらお父様は「分からん‥」と呟くが、みんながみんな不安そうな顔をしている。

 

「我々の仲間が捕らえられたという報告は今に始まった事ではない。しかし、今回は捕らえた人間側に海の者の誰かが協力しているのではないかという噂を耳にしてな‥」

海の者って‥それは人魚って事?それとも他の妖怪って事?

 

「それは誰なのです?」

三番目のお兄様がお父様に聞くと、お父様は眉間に皺を寄せながらこう言った。

 

「海の魔女‥だと」

 

海の魔女‥

それはもしかして、と僕が聞こうとしたら、後ろから慌てて家臣が僕の名前を呼びかけて来た。振り返ると血相を変えて「早く来て下さいッ!!」と言われれば、行くしかなかった。

僕の後ろからお兄様達が着いて来たけれど、一体何が起きたというんだ?何だ?今日はある意味凄い日だ。

 

 

 

「サクライに似てたなあの子」

「そうかな?俺は嫁に似てると思ってたんだけど」

 

久々にサカザキと二人で海岸を歩きながらゆっくりしている。

今日産まれたばかりの我が子の話で盛り上がり、サカザキの結婚はもうすぐという話も交えたりしながら。

 

子供が出来るって凄い事だな。感動が止まらないってサカザキに熱弁してたら「はいはい」と飽きられたような返事で返された。あのなぁ、お前だって父親になると分かるからな!?

 

「でもさぁ、結婚五年目にして初の子供か~。長かったな」

「二人だけの時間をもう少し大事に、もう少し大事にってしてたら五年も経ってただけの話だ」

「子供欲しい訳じゃなかったのか?」

「いや、欲しかったよ?でもね、子供が出来るとアイツは子供に付きっきりじゃん?俺に構ってくれなくなると思うとそれがちょっとね‥」

「子供に嫉妬かよっ」

「その内サカザキも分かるって。いや、サカザキの場合すぐ出来そうだな‥」

「子供?」

「ベタ惚れしそう」

「んな訳ねーだろ!俺はなぁ‥」

 

そんな和む会話をしているなんてな、タカミザワが聞いてたら信じられないって顔されそう。

タカミザワ‥俺、ついに父親になっちまったよ。時って怖いもんだな‥。本当に早いよ。

 

ゆったりしながら歩いていると、何処からか美しい歌い声が聞こえてきた。

 

あぁ、タカミザワか‥。俺の事祝いに来てくれたのかな、なんて思いながらその声に返そうとしたけれど、何かが違う気がした。

タカミザワの声に似ている‥けど、タカミザワはこんな歌い方しない。アイツなら本当に俺達の事を思って歌ってくれているから、その心のこもった気持ちが伝わってくる。しかし、この歌声はそれが伝わってこない。

 

何なんだ‥これ?幻聴?

そう考えたが、隣に居るサカザキも不振そうな顔をしながら海を眺めていた。

 

「サクライ‥」

「あぁ‥。タカミザワなんかじゃない。誰だ、この声は‥」

「人間の声がこんなに響く訳がない。他の人魚か?」

 

不思議に思い、俺達は近くの岩場から海の一番近くまで来てみては辺りをウロウロしながら見ていたが、特に誰かが居るって訳でもなさそうだ。しかし、歌声はまだ聞こえる。それが何処から聞こえてるのかも不明だ。

だけど、今しがたその声がピタッとやんでしまった。

 

え?と思った次の瞬間、

 

「うわっ!?」

「なんっ‥!?」

 

足許を何かにガシッと掴まれてしまい、俺と隣に居たサカザキはそのまま海へと引きずり込まれてしまったのだ。

訳も分からないまま俺達は必死になって掴まれている何かから離れようと暴れてみるが、ダメだ。力が強すぎる‥!このままじゃ俺達は‥

タカミザワが居たあの頃ならアイツの持っていた不思議な力で海の中でも息が出来たが、アイツと別れた際にその力は失われてしまった。だから今の俺達は‥海では息が出来ない。

 

「ガボッ‥!」

 

しまっ‥息が‥!

続か‥ない、

 

強い力はグイグイと海の下の方へと引っ張っていき、俺とサカザキはそれに抗う体力も残されていない。されるがままな俺達を‥どうするつもりなんだ。

 

そういやぁ、昔‥タカミザワが言ってたな‥

人魚は‥人間に恋したら‥海に引きずり込んで‥、そのまま殺す‥って。

 

もしかしたら‥俺達を引きずり込んでいるのは‥人魚なのか?

タカミザワ‥?

 

いや、タカミザワは男だ‥。アイツがマーメイドになる等‥

あり得ない‥訳でもなさそう、だけど。

 

もし‥、もし、これがタカミザワだったら‥?

俺達は確実にこの手によって殺される。だけど、嫌という気分にはなれなかった。

 

タカミザワにだったら‥殺されても構わないかな‥って。

 

そう思ったけれど、今日‥大事な我が子が産まれたのに‥俺は‥‥

薄れゆく意識の中で、俺が最後に耳にしたものは誰かが俺とサカザキの名前を呼んでいたという事だけだった。

 

 

 

どーなる、王子様達!?

 

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