SP12
組織に戻ってきたが、すぐさま高見沢と正将は医者に診て貰い、治療を受けたばっかだった。ここには俺たち専門の医者が居たりして、その人らが俺たち秘密警察がケガなどをした時にすぐ治して貰えるようにと、常にここに居る。
まぁこれが便利だこと。俺も何度も世話になってるしで、秘密警察の数自体はそれなりに居る。その中の俺らみたいな精鋭部隊は人数は少ないが、仕事しているのは俺たちだけじゃないってこった。沢山の人が利用してる場所だ。
病室もどきの部屋で、治療を終えた高見沢と正将はベッドに寝‥てはいないが座っている。俺たちは立ってるだけだが。
棚瀬もこっちへ駆けつけては二人を心配していたが、案外二人とも元気なのでホッとしている様子。そしてそんな棚瀬はこんな時にでもなんか手に持って飲んでいた。アレ美味そう。
どうしたもんかな‥。正将は脇腹掠ったくらいの傷で良かったが、問題は高見沢の方だ。本当に見ているのが痛々しい。
左目には包帯が巻かれてあったが、それを見た棚瀬がなぜだかポケットから黒い眼帯を取り出し、それを高見沢に投げつけていた。
「なにこれ」
「眼帯ですよ」
「え、眼帯なんて中二病みたいじゃん!」
「包帯巻いたままの方が厨二っぽさハンパないと思いますがね」
「うっ‥。それもそうだけどさ‥。なんか、すげー恥ずかしいな。自分がやるとなると」
「アンタがケガするからでしょう」
また言葉に詰まっていた高見沢。ごもっともすぎて何も言えないのだろう。
元気そうな高見沢を見てか、壁にもたれていた坂崎が唐突に「二日間」と呟く。その坂崎の声に反応してしまうと、彼はこう言い放ってきた。
「お前らはあと二日で全て回復しろ。もちろんケガしたからだと言って、今まで通りに動けないとかは通用しないからな。じゃないとこの今回の仕事には参加させられない」
「ふ、二日‥って」
あまりにも早すぎる。俺も太郎も思わず口を揃えて「二日っ!?」と言ってしまったほどだ。いきなり片目を失って、二日で慣れろと?鬼畜かコイツ。いや、知ってる。コイツは正真正銘の鬼畜だ。
正将だってケガは浅いとはいえ、この仕事にもまだ慣れていないんだし‥
流石に黙っていられなくて、「おい坂崎!もうちょっと様子見させてやれよ!?」と口に出してしまったのが悪いのだろうか。彼は俺をギロッと睨んできては、こう説明してくる。
「ふざけんな。本当の爆破予告の期日はもう今日なんだぞ?24時をとっくに回ってるから、いつどこで何が起きてもおかしくはない状況だ!そんな時に動けないでどうするっ?本来なら今すぐにでも動いて貰いたいところだが、今回は大目に見て二日も休ませてやると言ってるのに、文句言うのか?」
「だけど二人が可哀想だ!じゃあ、ムリに動いてまたケガでもしたらどうするんだよ!?」
「んなもんケガした本人のせいだろ。アホか」
「坂崎お前なぁ‥!」
んっとに、こういうところはムカつくんだよな、コイツ‥!
高見沢が「俺は大丈夫だから!」と言っていたが、俺はお前らのことが心配なんだよ。
壁にもたれかかっている坂崎の方までやって来ると、坂崎は「高見沢のが物分かりいいようだな」と俺を小バカにしてくる態度をつける。小バカ?いや、大バカと言った方がいいかもな。
握っていた拳が飛び出そうになったが、それを先に察知されたのか坂崎がガッと俺の首を片手で軽く絞めてきやがった。マジかよコイツ‥!?
「うっ‥ぐ!?」
「俺に楯突こうとしてもお前なんかじゃムダだ。分かったか桜井?つーかお前はケガしてないから関係ねーだろ」
「だけどっ‥、仲間が、傷付いてるのに‥見過ごすなんて‥っ!」
「言ってるだろ、私情で動くなと。お前も、ここに居る他の全員は国の為に働け。死んででもだ」
「くっ‥!」
パッと手が離れていったかと思うと、坂崎は何も言わずにここから出て行ってしまった。棚瀬が「どこ行くんすか?」と一応聞いてはいたが、それをシカトして消えた。
あの野郎~‥!
「けほっ、あーー‥苦しかったぁ‥!」
「桜井、ホントに俺たちもう大丈夫だから‥!でもありがとう。気持ちだけは嬉しかったよ」
「悪りぃな、もうあと一日くらい休ませて欲しいとは思ってたけど‥やっぱ坂崎には通じねーわ」
「‥坂崎の言う通りだと思うよ。アイツの言うことを守らないで勝手に動いた俺が悪いし。こうなっちまったのも自分のせいだし」
「けど‥!」
「桜井さん、僕もホントに大丈夫です。心配かけさせてしまいすみません」
「‥‥おぅ」
ハァと一つ溜め息をつけば、もう口出しするのはやめにした。だって二人がこう言ってるんだし。
俺の横に居た太郎はさっきから黙ったまま話しを聞いてるだけで、何かを言ってくることはなかった。まぁ俺たちに対して意見するのも難しいだろうけど。
「てか坂崎ってなんであんなにも国の為ってうるさいんだろ‥」
そう俺がポツッと呟くと、何かを飲んでは壁にもたれて立っていた棚瀬が「そんなもん総理の為に決まってるじゃないっすか」と平然とした口調と顔つきで言ってくる。
高見沢が怪訝な顔して「総理?」と尋ねていたが、棚瀬はコクコク頷きながら何かを飲んでいる。
「だって総理の息子じゃないっすか、坂さんって」
「は?」
「えっ?」
「ウソっ?」
「マジ?」
見事俺たち四人の声が重なり合った。言ってることはバラバラだけど。
そんな俺たちの反応を見て、棚瀬が「あ、しまった」という顔をし始めた。お、おいおいちょっと待て!それってマジなやつなのか!?
驚愕している俺たちをよそに棚瀬はテキトーに「‥とかだったら凄いっすよね~」なんて、急に変な言い訳をし始めてきやがる。なに言ってんだコイツマジで!
「ハァ!?棚瀬お前ソレってマジなのか!?マジでガチなやつなのか!?」
「坂崎が総理の息子ぉ!?んな訳‥っ!」
と、俺も高見沢もそう言ってはみるが、よくよく考えたら坂崎がもし総理の本当の息子だとしたら、国の為に働けってあれだけ言ってくることに頷けなくも‥ないじゃん。
そんな訳ない、と言いかけていた高見沢だったが改めて俺と同じ考えに辿り着いたのか、彼は俯いてはいたがハッとした表情に切り替わった。
「‥だよな。そりゃ俺たちなんかより総理の方が大事に決まってるよな‥。命がけでこの国の平和を守れって言ってくる意味がなんとなく分かった気がした‥」
「俺も‥。今までずっっと不満だった部分が一気に消え去ったわ‥。俺たちが国を守るのは当たり前なのは分かっていたけど‥坂崎がそこにこだわり過ぎてる理由って‥」
アイツが本当に総理の息子だから?
あちゃーという表情をしながらも相変わらず何かを飲んでいる棚瀬だったが、諦めたのか「そうですよ」と俺たちの言葉に正解を与えてくれた。え、てかホントにマジなのか?坂崎が総理の息子って‥
信じられん。
「で、でも姓が違くないか?総理は坂崎って名前なんかじゃ‥」
「坂崎は母方の姓みたいっすよ。わざとそっちを使ってるんですって。総理と同じ名前で秘密警察なんてやっていたら、そりゃあ怪しまれますし」
「そうだよ‥な」
「口が滑った俺が悪いんすけど‥この話しは他言無用ですからね!?分かってるでしょうけど!これこそトップシークレットみたいなもんなんすから‥。上もほとんどその事実知らない人も多いらしいですし」
「じゃあなんでそんな話しを棚瀬が知って‥」
「坂さんから昔直接言ってくれました」
「ハァ!?」
な、なんで俺たちには言わないくせに棚瀬には言うんだよ‥!!
俺も高見沢も不満が顔に出ていたのだろうか、棚瀬がニッと笑みを浮かべては自慢気にこう言ってきやがった。
「俺と坂さんは信頼とかそういうレベルじゃないっすからね。阿吽の呼吸ってやつですか?ま、なんにせよ坂さんの相棒こなしてきた俺ですから!お二人はまだまだってことなんじゃないんですか~?あ、でも不満に思うことはないですよ?坂さんも俺にこのこと打ち明けたのだいぶ後だったので!」
「ペラペラうるせーよお前は!!」
「もう喋んな!!つーかそれ何飲んでんだよさっきから!」
「ゴディバのショコリキサーです。ダークチョコレートデカダンスってやつ」
「俺も飲ませろよ死ね!!」
「ハァ?アンタが死ね!!‥と言いたいところですが、今回は皆さん頑張っていたので全員分のを買ってきてあげましたよ」
「え、マジ!?」
「マジです。部屋の冷蔵庫に置いておきましたから、好きな時に飲んで下さい。だいぶ時間経ってるので味がちょっと落ちてるかもしれませんが。今回は俺の奢りでーす」
たまにはやるじゃん棚瀬!
高見沢が俺に向かって後で持ってきて!と頼んできたので、持ってきてやるか。正将も目をキラッとさせているし‥
太郎も見やると、「わぁ‥!」とものすごーく分かりやすいくらいの嬉しそうな顔をしていた。可愛い後輩だ。
一瞬だけ部屋全体がはしゃいだ雰囲気にはなったけれど、突然高見沢が「あっ」と何かを思い出したのか、置いてあったスーツのポケットから双眼鏡を取り出したかと思うと、高見沢は隣に居る正将の方を見ては「いる?」と聞いていた。
「俺もうさ、左目使えないから意味ないな‥って思って。使う?」
「えっ?そ、そんな‥!片目だけでもまだ使えますよっ?」
「うぅん。双眼鏡なのに片目だけで見ててもおかしいし。だから正将にコレやるよ。結構高かったんだから大事に使えよ?俺、次は単眼鏡買うし」
ほら、と言いながら正将の手許にポンと双眼鏡を置いていった高見沢はニコッと優しい笑みを向けていた。そんな先輩の姿を見た正将も、申し訳なさそうに、そして嬉しそうにしながら「‥はいっ」と返事をして受け取った。
すると、隣からじーーーっと視線を感じる‥‥
「な、なんだ?」
「俺も何か頑張ればご褒美貰えるんすか?」
「‥‥何か欲しいのがあるのか?」
「考えておきます!」
おい、俺はまだ買ってやるとは言ってないぞ。
つっこもうかと迷ったが、太郎も目をキラキラさせているので何も言えなくなってしまった。ま、あんま高くなければいいんだけどさ‥
こんな俺たちの様子を見ていた棚瀬が、なんだか安心そうに笑っていたのが窺えた。昔の自分と坂崎のことを思い出してるのだろうか。
そういえば大事なこと忘れかけてたが、坂崎の奴‥‥
「あのさ、坂崎どこ行ったか分かるか棚瀬?」
「さぁ?多分お父さんのところじゃないっすか?上にさっきのことで凸ろうとするなら俺も付いて来いって言われますし」
「総理のところ‥か」
アイツが帰って来たら質問攻め決定だな。
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