秘密警察-Secret Police- - 14/39

SP13

とある大豪邸に足を踏み入れると、俺は何も考えずにそのままその家の中へと入っていく。

どこだ、どこに居るんだアイツは。やっぱり自分の部屋だわな、こんな時間なんだから。

ずかずかと目的の場所まで進んでいけば、ドアを足で思いっきりバーーーンッ!!と開け放つ。

「おい親父ぃ!!」

「ふわおっ!?び、ビックリしたぁ!」

「ビックリしたじゃねーぞ!!テメェ俺になんか言うことあるだろ!?」

「お帰り、幸ちゃん」

「その呼び方をするなと何度言えば分かるんだよ!?」

そう。ここは俺の親父の部屋、もといここは俺の実家。

親父は一国の首相でありながら、いつもテキトーな雰囲気しか纏っていない。表ではキリッとしているくせに、身内や心を許した人相手になると急激にダラッというか、デレッ‥っていうのも変だが、とにかく態度が気持ち悪くなる。

なんっでこんな奴の血を引いちまったんだ俺は!

「えー、いいじゃないの~。子供の頃からずーっと幸ちゃん幸ちゃんって言ってたんだから、今更変えてもねぇ」

「俺が変えろって言ってるんだから、変えろよ!?」

「ムリかな」

「テメェのこともう守らねーぞオイ!俺の言うことちっとは聞けよ!?」

「ごめん、それもムリ」

キリッとした表情で断ってきやがる。こんの‥!!クソジジィ!!

もういい、こんなことで時間を割いてる訳にはいかないんだ。聞きたいことが山ほどあるが、ここは要点を絞っておいた方がいい。後で頭の中でまとめやすくなる。

「おい!アンタ宛に怪しい手紙やメールがあれから来なかっただろうな!?」

「いいや来てないよ」

「‥あっそ!なら、別の質問だっ。なぜ俺の元仲間だった奴が生きている!?お前なにか知ってんだろ!?」

「あ、うーん‥‥。知らない」

「どう考えても知ってる反応だろうがそれは!?言え!知ってること洗いざらい吐け!!吐くまで俺は帰らねーぞ!?」

「もうやめてよ幸ちゃん~。こんなに夜遅いんだからさ‥」

「とっとと言え」

バキボキッと指の骨を鳴らしてみせると、親父はサラッと「とある施設のせいだよ‥」と吐き出した。施設?なんだそりゃ?

「そこでなんか実験みたいなのしてるらしくてさ‥。俺もよく知らないから勘弁してくれって。どっかの大臣が勝手に作った施設なんだよ~‥!」

「その大臣教えろ!!」

「だから知らないんだってば。勘弁してよ幸ちゃん‥」

「チッ。ホントに知ってることはそれだけなんだよな?」

「幸ちゃんとこの上司さんたちの方が知ってるんじゃないかな‥。だってそのお仲間さんは上司さんから死んだって聞かされたんでしょ?だったら俺に聞くより上司さんに聞いた方が絶対早いってば」

「うっせーなぁ!テメェが心配だから来てやったのに、なんだその言い草は!?」

「あ~!嬉しいよ幸ちゃん~!パパの為にお家まで帰って来てくれて‥!昔はよく“お父さんを守る為に警察になる!”って、あーんなに可愛く言ってくれてたのに‥」

「それ以上言うと俺が逆に殺すぞっ?あ?」

「幸ちゃん怖いってばぁ」

ウザ。

居心地悪いので、クルッと踵を返してここから出て行く。後ろから親父が「あ、待ってよ幸ちゃん~!」とか言ってくるが、待つ訳ねーだろ。

‥だが分かったことがいくつかあったな。元仲間については、確実に上は知っていること。そして、その施設とやらで何かが秘密裏に行われていること。

この秘密警察の俺たちが知らないとなれば、そりゃあ上が関わっててもおかしくはない。何がある。上は何を知っている?俺はこの組織に属しててもいいのか?それすら考えてしまうほど、俺は今この組織を疑っている。

上が犯罪に手を染めていたって俺は容赦しない。例えそれが相手にしてはいけないような奴だろうが、この国の平和を脅やかしたのには変わりないことだ。‥‥許さん。

「‥家戻って着替えでも取ってくるか」

この家じゃない。俺が今住んでる方の家だからな。

暫くは組織の方に居ないとダメだ。何が起きるか分かったもんじゃねぇ。それに、高見沢と鈴木の奴があの状態なんだ。‥まさか高見沢が失明するなんて思ってもみなかったが、こればっかりは俺にもどうにも出来ない。

医者から聞いたが眼球自体に傷が入ってしまっているらしく、神経も死んでしまったようなので治る気配はゼロに近いとのこと。

別に俺はリーダーだからといって、自分の責任だとは思わん。あの行動を選択した高見沢自身が招いた結果だからだ。もしかすると高見沢が俺の言うことを聞いて大人しくついてこれば、アイツは何事もなく今も元気な状態でいられただろう。

‥だけど、もう遅い。あれこれ後から言うのはその結果を知ってしまったから言えることであって、その時にならなければ人間は誰にも結果なんて分からない。

あの時の高見沢は、あれが一番の選択だと思ったのだから俺を振り切ったんだ。

フゥ‥と溜め息をつき、俺は一旦家へ戻ることにした。そして少し休もう。朝になったら組織へ戻ればいい‥か。

坂崎の奴、結局朝になっても帰って来なかったな‥

ベッドから見える窓の外をボーッと眺めている俺に、すやすやと寝息を立てているのは隣に居る正将。

ホントは坂崎に言いたいことがいっぱいあって、帰って来たらアレコレと言ってやろうと思っていたし、聞きたいことも沢山あった。頭ん中でそういったことを考えて、まとめていたけど朝になってまで帰って来ないとなるとなんかなぁ‥

目が痛くて正直寝るどころじゃないしね、俺の場合は。

小さく息を吐き出したあと、部屋のドアが開いては中に入ってきたのは桜井と太郎と棚瀬。棚瀬の手には、何かがある。‥あ、飯かなっ?

「おはよう高見沢」

「おはようございます!」

「おはよう~。あ、でもまだ正将寝て‥」

と、俺が言いかけたところに正将がモゾッと動いては、騒がしくなった室内にやはり気付いて「あ、皆さん‥おはよーございます‥」と眠たそうにしながらも挨拶していた。

最後に棚瀬が元気良く「おはようございますっ!」と挨拶し終われば、彼は俺たちに何かが入ってるビニール袋を差し出してくれた。中身は‥肉まんか?

取り出してみると、肉まんではなくピザまんだった。

「まだ朝が早いんでコンビニくらいしか開いてなくて。セブンのピザまんは美味しいっすよ!みよ~んってチーズがめちゃ伸びて面白いですってー!ほら、まだ買ってきたばかりなんで早く食べて食べて!」

「あ、うん。ありがと棚瀬」

「ありがとうございます‥っ。でもその前に僕、歯ぁ磨いてきます‥」

「うん、いってら」

寝起きでまだ眠たそうな正将はベッドから出てフラッと洗面所の方まで消えていってしまった。

棚瀬が「さ、食べて食べて!」と促してくるのでパクッと一口食べてみるが、まだチーズのところには辿り着かない。もう一口大きくいくと、チーズに辿り着いたかと思えば本当にみよ~~んとチーズがすげー伸びてくる。全然切れねぇなコレ。

でも美味いな。

見ていた桜井と太郎も「すごい!」と言いながら俺の食べているところを見て笑っている。なんか坂崎がいねーと平和だなぁ‥なんて思ってしまった。

とか思っていると、奴がやって来る。

開いたドアから部屋へと入ってくる背の低くて顔の怖い男が。

「あれ、今戻ったのか坂崎?」

「あぁ。ちょっと家で休んでた」

「おはようございます、坂崎さん!」

「おはよう」

あちらで会話をしている坂崎が、朝食を摂っている俺に気付くと「なに食ってんだお前?」と尋ねてくるので、ピザまんと単語だけで答えてみせた。

そんなやり取りをしている間にも正将が戻ってきては、坂崎に対して未だに礼儀正しく挨拶しているようだ。そんな律儀にしなくったっていいのに。‥とはいえ、坂崎相手だから難しいよなぁ。

ピザまんも食い終え、一服しようと思って窓を開け放ってはスーツのポケットからタバコとライターを取り出す。パチっと着火したライターに、咥えたタバコを近付けさせていく。

「二人とも調子はどうだ?」

「あ、僕はなんとか‥大丈夫です」

「高見沢は?」

「んー?うん、痛いよ」

「だろうな」

分かっていたとでも言いたげな顔してやがる。

フゥーー‥と煙を外に向かって吐き出せば、棚瀬が自分用に買ってきたであろうじゃがりこを食ってやがる。正将もピザまんを食べながら、チーズがあまりにも伸びるのでちょっとビックリしてるみたいだ。

‥‥にしてもなんだろうな、この空気。

やっぱり坂崎が総理の息子だと知ってしまったから、俺たち四人がなんだか微妙な反応しか坂崎に返せていない気がする。それに怪しさを感じ取ったのか、坂崎は「俺になんか文句あんのか?」と聞いていたが‥そりゃありまくりよ。

俺が言う前に桜井が「坂崎って総理の息子なのってマジ?」と尋ねていた。

‥かと思いきや、坂崎は目をギロッと桜井を睨み付けては尋常じゃないくらいやべぇ顔付きに変わっていく。うわ、桜井ドンマイ。俺を見ずに坂崎は「窓閉めろ高見沢!!」と怒鳴ってきたけど。

「その言葉を‥っ」

「いっ‥!?」

ピョンと軽く飛んだ坂崎が、桜井の首の辺りをガシッと足で挟んだ。

「他の誰かが聞いてるような場所で‥っ!」

そして次に坂崎は体を後ろに回転させたかと思うと、床に両手を着けてバランスを取り‥

「絶っっ対に話すんじゃねぇぇええええ!!!」

「どわあぁああぁああああッ!?!?」

勢いよく体を持っていかれた桜井は、見事頭から床に叩き落とされていた。

ゴツーーーンという素晴らしく鈍い音が部屋中に響き渡ったあとは、桜井の絶叫もオマケでついてくる。いらないオマケだ。

「いっ‥てぇぇえええええええ!?!?」

「いいかお前ら!なんでそのこと知ったかは知らんが、絶対に誰か他の奴が傍に居たり、他人に聞こえそうな場所では喋んなよ!?もし喋ったらマジで許さんからな!?」

「き、聞いてねぇよ‥」

涙目の桜井が棚瀬を睨んでいた。それに気付いた坂崎が、棚瀬を見やると「言ったのか?」とめっちゃ低い声で尋ねてる。尋ねるっていうより尋問に近い気がしてきたな。

見ていた正将と太郎はまたもや体が強張ってしまっている。

「棚瀬っ!!」

「ほ、他の人にはこのこと言ってないっすよ!?この四人以外は誰も知らないっす!!」

「問答無用っ!!」

「おわっ!」

ビュンッと空を切る音が凄まじい蹴りを棚瀬にお見舞いするも、やはり反射神経と危機回避能力の高い棚瀬のことなので、じゃがりこを食いながら坂崎の蹴りをヒョイと跳び上がりながら避けてやがる。

やはり棚瀬には何しても通じないと悟ったのか、坂崎が面倒くさそうな顔で「‥ったく」と漏らす。

「いいか!お前らお願いだからこのことは絶対に誰にも言うなよ!?分かったか!?」

「分かった‥」

「は、はい」

「分かりました‥」

「痛い‥」

桜井は未だ体勢を持ち直せていないくらいダメージがデカいもんを喰らったようだ。

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