秘密警察-Secret Police- - 15/39

SP14

棚瀬のせいで俺が総理の息子だということが四人にもバレちまった。

まだコイツらに言うつもりは更々なかったのだが、知られちまったら隠してても仕方ない。もういいやと開き直ってしまえば、ここに居る五人以外の気配も感じなかったので改まった態度で本当のことを話す。

「俺は総理の息子だが、あまり世間には知られていないどころか、ごく一部の人間にしか知られていないんだ。総理の息子だと知られてるのは兄貴の方だろう。俺は昔からこの秘密警察という職業に憧れていたんだ。だからあの世界に居る親父や家族を守る為にも、俺は影で活躍する道を選んだ」

「お前がここまでして仕事に熱心なのも、全部家族の為ってことか?」

高見沢が質問してきたので、「そうだ」とだけ返す。

「今親父はようやく総理になって、世間からの目もより注目されるようになった。親父には親父専用のSPが何人も付いてるが、俺はまた別の意味のSPになって、影で支えているんだ。一国の首相なんだから、本当にこれから先何があるのかは分からない。

だから俺は親父の為にも、家族の為にも、‥そして国民全員の為にもこの国が平和であり続けて欲しいと願っている。せめて親父が総理務めている間は何事もなく最後までやり遂げて欲しい。

俺は秘密警察の仲間を大切にしたくない訳じゃないが、守るべきものは何が最優先なのかも知っている。悪いがお前たちの命よりも、この国の総理を命がけで守るのが今の俺の役目だと思っている。だから切り捨てる方を間違えちゃいけない。俺はずっと仲間の命より、国民や家族を選んできた。仲間数人の命とこの国の首相、それに大勢の国民。‥どっちを選ぶかはもう分かってるだろ?」

分かったか?と四人に問えば、四人ともが首を縦に振っては頷いている。今まで桜井と高見沢も俺の考え方に納得がいっていない不満そうなツラをしていたのだが、今はそうでもない。俺の話しを聞いて、しっかりと納得してくれたようだ。

床に座ったままだった桜井が俺を見上げては「じゃあ、言ってくれれば良かったのに‥」と、今度はそっちに対しての不満を漏らし始めたが。

「俺ら悩んでたんだよ。お前はいつも国の為国の為って、じゃあ仲間は大事にしなくてもいいのかよ?‥ってさ。だけどそんな話し聞かされちまったら、納得せざるを得ないしな」

「俺も桜井と同じ気持ちだ。納得しなかったよ、お前の意見に。でも、坂崎はずっとブレないその気持ちを持っていたからこそ、選択する時が来ても優先する方を間違えなかった。‥それが俺たちを切り捨てでも守りたいものがあるってことを知れて良かった」

「納得してくれたならそれでいい。言わなかった俺も悪かったが、そう簡単に教えられるものでもないからな。お前たちが俺の言っている本当の意味を理解した時に言おうと思っていたさ。棚瀬はそれを理解したからこそ、アイツには教えた」

四人が棚瀬の居る方をフイと見やるも、アイツは「それでも俺だって時間かかりましたけどね~」なんて言っている。じゃがりこなんか食いやがって、さっきからバリバリうるせーんだよ。

桜井と高見沢は俺の話しにスッキリした気持ちになっているだろうが、吉田と鈴木の方は俺と一緒に居る時間も少ないので二人なんかよりは理解も早いだろう。本当なら最初からこう言えばいいとは思うが、俺が総理の息子だと知った時点で誰かに言う可能性も高い信用ならん奴も出てくるはずだ。

なので仲間の様子をしっかり見てから、俺の考えに納得したその時こそ俺は真実を話すと決めている。

「今までごめん、坂崎‥。でも!それは納得出来たけど、俺たちを信頼する方はどうなったんだよ?」

「高見沢の言う通りだ。仲間を切り捨てることは納得いったが、俺らのことをいつ信頼してくれるんだ?‥なんか、棚瀬とお前は信頼以上のもんがあるみたいだし‥その、」

「なんだ、棚瀬に妬いてるのか?」

「や、妬いてなんか‥っ!‥‥いや、ちょっと妬いてる‥」

「‥俺も。棚瀬だけなんてズルい。俺たちだって、信頼以上の関係になりたい」

「お前たちじゃまだムリだ。別に俺は棚瀬のことは信頼してる訳じゃないが、確かにそれ以上のもんはあるとは思っている。コイツと俺の実力の差はほぼないに等しいし、俺が殴ろうとしてもすぐ避けるし、現役だった頃も、アイツとは言葉を交わさなくても互いの意図を読み取って行動に移せていたからな」

そう説明すると、棚瀬もうんうんと頷きながら笑顔でじゃがりこ食ってる。見た感じはこんな風だが、コイツは俺と同等に強い。そして精神的にも桜井と高見沢なんかよりもずっと強靭だ。

こう見えて、コイツも仲間を切り捨てることの意味を理解している奴なので、案外冷徹な部分だって持ち合わせている。

こんな俺と棚瀬のことを世間一般では信頼関係と言われるのだろうが、俺たちはそう思っていない。信頼していた相手に何かあった時、やはりその時の選択を間違えてしまうからだ。

「勘違いするなよ。信頼以上の関係になれたということは、俺はお前らの面倒なんか一切見なくなる時だからな。‥ま、実力が追いつかないから何年先になるかは知らんが」

「お、追いついてみせるさ!絶対に!!」

「先に吉田と鈴木の方が俺に追いついたりしてな?」

「なっ‥」

からかってみせると、桜井も高見沢も自分の可愛がっている後輩をキッと見ては何やら睨み付けているようだ。それに若干ビビっている後輩たち。

「太郎!お前は俺にすらまだ追いついてないからな!?先に坂崎と信頼以上の関係になれると思うなよ!」

「えぇっ‥!?そ、そんな‥。俺だって坂崎さんとそんな関係になりたいっすよ!」

「おい正将!えっと‥えーっと、さっき桜井が全部言っちまったからなんも出てこねぇ!!」

「高見沢さんらしいですね‥」

この調子だと、後輩に抜かされそうな気がしなくもないな‥。だが、高見沢には鈴木。桜井には吉田が居る。俺なんかよりも、この二組にした意味をまたいつか分かって貰える時がくることを祈ろうか。多分、時間はかからないはずだ。お前たちはお前たちのやり方で信頼を築き上げていけばいい。

そんな四人を見ていた俺を更に見ていた棚瀬がクスクス笑いながら「坂さん人気者っすね」なんて言ってきやがる。

「ふんっ。バカが沢山居ると困るのは俺だ」

「いや~、でもまさか桜井さんも高見沢さんも俺に妬いてたなんて!嬉しいなぁ!」

「バッカ、やめろ気持ち悪りぃ。あ、それより棚瀬、今から時間あるか?」

「ありますよ」

「よし、なら上に文句言いに行くぞ。親父が一応は情報持ってたが、うっすい情報だったからあんま意味なくてよ。やっぱ上に聞きに行くしかねーわ」

「ホントに聞きに行くだけですかー?」

「‥じゃなきゃお前なんか連れてかねーわな」

チラッと棚瀬の居る方に視線を移すと、コイツも怪しい笑顔を見せつけながら「ですよね~」なんて楽しそうに頷く。

そして高見沢の名前を呼ぶと、じゃがりこをやると言って俺について来ようとここの部屋から出て行こうとする。

「え、じゃがりこいいの?」

「いいですよ。俺もういらないんで」

「てか二人ともどこ行くの?」

「上に聞きたいことがあるから行ってくる」

それだけを伝えて今度こそ出て行こうとしたが、突然吉田が「あ!坂崎さんっ」と俺の名前を呼びつけるので振り返ると、彼の手には俺のマスクがあった。

あぁ、そういえばあん時取ったままになってたわ。

「これ‥まだ使いますよね?」

「預かっててくれてありがとな。使うかは分からんが、拾っておいてくれて嬉しい」

「はいっ!」

「行くぞ、棚瀬」

吉田からマスクを受け取り、ようやく俺たちはこの部屋を出て行った。

出て行く際、吉田がなんだかすげー嬉しそうな顔していたが‥別に俺、そんな誰かに憧れるような奴でもねーぞ。マジで。

見ての通り短気だし、暴力的で口も悪い。自覚はしている。それに、こうして真実を話さないと冷たい奴だと思われるオチだしよ。まぁ俺はどう思われていようが気にしてないからいいんだが。

上のもんが居る部屋まで廊下を歩いていく中、棚瀬に親父から聞いたことを説明しておく。

「へぇ‥。で、その施設とやらはどこに?」

「さぁな。それを今から聞き出す」

「わっかりました」

エレベーターに乗り込み、最上階まで辿り着くと、エレベーターから降りてきた俺と棚瀬の存在に気付いた奴の一人がなんだか慌てている様子だ。はっ、俺らから逃げられるとでも思うなよ。

走ってどこかへ行こうとしていたが、俺と棚瀬もソイツを追いかけてみせた。

「ヤバい!!坂崎と棚瀬がこっち来るぞ!!」

「なにっ!?」

「坂崎と棚瀬が‥って!」

「オラアアァ!!」

「うわあぁあぁあっ!?」

逃げて行った奴が会議室に走り込んで行って俺たちが来ることを知らせていたが、ソイツを蹴り倒して俺たちは会議室まで乗り込んだ。

するとそこには、十人ほどの偉い奴らがズラリと並んでは何かを話し合っていたようだった。そんな上の奴らが居るにも関わらず、俺と棚瀬はダンッとデスクの上に飛び乗ってはここに居る全員を脅しにかかる。

「おいっ!お前らどういうことだ!?なぜ俺たちの元仲間が生きている!?答えなきゃここの部屋のもん全部ぶっ壊すぞ!!」

「ぜ、全部は勘弁してくれ‥!悪かった坂崎、お前に言うべきだった‥!」

「今更遅ぇよ!言え!吐け!!施設ってなんだ!?アイツらは死んでたんじゃないのか!?」

「死んではいなかった‥!だが、助からないと思っていて一か八かであの人体実験をしている施設に送り込んだんだ!そしたらアイツら、本当に復活して‥しかも人間兵器状態になってしまったんだよ‥!」

「人体実験?人間兵器?」

「坂さん、コイツら頭おかしいんすか?」

「おかしくなんかない!全部ホントのことだ!アイツらが施設から逃げ出さなけりゃこんなことには‥」

「んで?その施設とやらはどこにある?」

「こ、このUSBに全ての情報が入ってる‥!だから、な?もう出て行ってくれないか?俺たちまだ死にたくないんだよ‥っ」

差し出されたUSBをパッと奪い取っていた棚瀬が、それを内ポケットにしまい込んでいた。また後で中身を見て貰おうか。

「なぁ、一ついいか?俺たちはこの組織を信じていいのか?アンタらは何に手を染めてる?警察官が犯罪に手を染めるとこはよくある話しだが、こんなもんが公になれば秘密警察の俺たちの存在すら危うくなるの分かってるよな!?」

「黙ってて悪かった!この通りだから‥」

「うるせぇ。俺はアンタら上のもんだろうが犯罪を犯す奴は徹底的に潰す。ま、俺を潰したければご勝手にどうぞ‥だが、潰せる奴は一人もいねぇだろうからさぁ。‥‥いくぞ棚瀬。この部屋半分ぶっ壊せ」

「りょーかいでーす!」

「やめてくれ!!」

「大事そうなもんは壊さないどいてやる」

この後、この部屋がどうなったかは言わない。

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