SP23
部屋の中から四人の絶叫した声が僅かながらに俺たちが居る廊下の方まで響いてくる。
クソッ‥早く終わらせてやってくれ。これ以上は聞いていられねぇ。
耳を塞ぎたくなる嫌な音。棚瀬もさっきから厳しい顔をして目を瞑っては珍しく黙っている状態。あんまり何かを喋ったりしたくないんだろう。俺も今はそんな気分じゃないから別に構わないんだがな。
つーかあれから何時間経った?時計を見て確認すると、三時間はいってる感じか。早いのか長いのか、時間の感覚すらおかしくなっている俺の体。
そして更にそこからまた二時間くらい待たされていると、ようやく部屋の中から白衣を着たアイツらが出てきた。俺たちを見た瞬間に、奴らは若干目を逸らしたような雰囲気は感じ取れたが‥
やっぱりダメ‥‥か。
「どうだったんだ?あ?」
「実験は‥成功した」
「ウソつくとぶっ飛ばすぞ。俺は今お前らの顔見るだけで最高潮にイラついてるんだからな」
「わ、分かった‥!‥‥正直に言って‥さっき言った通り、80~90%の間くらいの成功率だ」
「‥‥なぁ、俺言ったよな?」
壁にもたれかかっていた体を動かし、奴らの目の前までやってくると同時にガッと胸倉を乱暴に掴んでみせた。それに驚いては腰が引けてる相手だが、そんなもん俺には関係ない。
「100%以上って言ったのが聞こえなかったのか!?あぁッ!?」
「でも出来る限りのことはした!死ななかっただけマシと思え!!」
「あ?」
「‥っ、しまっ‥」
今なんつった?
「‥おい。死ぬ確率もあったってことなのかよ?」
「それは‥‥」
「それを俺に黙ってたのか!?おい!!」
「くっ‥」
マジでコイツら‥っ。んっとにムカついてきたぞ!人を散々バカにしやがって!!
棚瀬も俺を止める気は更々ないようなので、思う存分暴走してくれと言ってるようなもんだった。
「四人は今どうなってる!?どんな体になった!?」
「わ、分からないんだよそれが!その時にならないと、何が起きるか今は分からないんだ!」
「曖昧な言葉で逃げるつもりか!?」
「ホントなんだって!!爆破するか、バケモノになるか、それとも突然死ぬか‥俺たちにもそれは分からない!これは本当だ!」
「‥薬はあるだろうな?」
「あ、あぁ‥。一応薬はある。その力を制御する薬を月に一度打たないと、コイツらはフツーの人間じゃいられなくなるかもしれん」
「とんだリスクだな。おい、薬を作ってる奴はこん中で誰だ?」
そう俺が尋ねてみせると、男一人と女一人が恐る恐ると手をあげてみせたので、俺はその二人を手招きしてこちら側に来させた。
「いいかお前ら二人、お前らはこれから俺たちの組織で働いて貰う」
「えっ?」
「アイツら四人の面倒を見る為の薬を作れ。ここの場所はもう時期になくなる、就職先に困らない方がお前らだっていいだろ?」
「もうすぐここがなくなる?」
「あぁ。俺を騙した罰として、この場所を摘発する」
俺の言葉で奴らがザワッとしかけたが、俺は構わず棚瀬が繋いでくれた無線で「来い、出番だ」とだけ口にすれば、向こう側から「了解!」という掛け声と共に、この施設へ突撃してくる音が聞こえてきた。
時期に俺たちが今居るこの場所までやって来るのだろうし、それまでに時間はそんなにかかりはしないはずだ。
今俺が呼び出したのは、他の精鋭部隊のリーダーやサブリーダーたち。ま、当然優秀なのには変わりない為俺が他に指示しなくても勝手に終わらせてくれるだろう。
白衣野郎共がめちゃくちゃ焦っている様子だったが、俺と棚瀬はそんな奴らをほっといて部屋の中へとズカズカと踏み込んでいく。後ろから「待て貴様!」という声が聞こえたが、当然のごとくシカトして終わり。
「どーしますぅ?四人がバイオに出てくるタイラントやネメシスっていう敵クリーチャーみたいになってたら?」
「ガッチムチのゾンビだっけ?」
「はい!俺は嫌だなぁ、四人がそんなことになってたりしたら!すーぐ逃げます!」
「潔くていいんじゃねーの」
俺も流石にアイツらがあのゾンビみたいになってたら戦わずに逃げると思うし。
そして辿り着いた四人が居る場所。当然そこには四人の体が寝かされており、今はまた薬のせいなのか眠っている。さっきの絶叫はどこへやらという感じだが、ホッとする暇もないまま俺は息をすうっ‥と深く吸い込んでみせた。
そして‥‥
「起きろぉぉおおおおおおッ!!!」
「ぬはっ!?」
「うわッ‥!?」
「な、なに‥っ!」
「わッ!?」
一瞬で全員がガバッと飛び起きてくれたので有難い。
飛び起きた四人は、自分が今どんな状況なのか何も把握していないので頭の上にクエスチョンマークがいくつも付いているように見えるが、こんな所でうろたえてる時間はねぇぞ。
キョロキョロと視線を泳がせていた四人だったが、俺と棚瀬を見つけると「‥ここは?」という表情をさせてきた。なので素直に答える。
「実験施設」
「はあっ!?」
「実験施設って‥あの?」
「あぁ。お前ら死に損ない状態だったから復活させて貰った」
「死に損ないって言い方がヒドい‥」
桜井と高見沢は早速俺に対して噛み付いてこれているが、吉田と鈴木にはまだムリか。
未だにほけーっとしている四人に対し、棚瀬が「皆さん、立てますー?」と聞いていたが、四人ともまだ体に上手く力が入ってくれないだとか文句ばっか言ってきやがる。置いてくぞ。
「ムリだよ‥!てか心臓が‥‥痛いんですけど‥っ」
「痛くてもサッサと立て!そして歩け、走れ!!」
「あのさぁ!人の体勝手に実験させておいて何その態度!?俺たちどーなってんのマジで!?」
「そうだよ、高見沢の言う通りだぜ!俺たちどうなったんだよ?てかアイツらと戦ってからの記憶がまるでないんだけど!」
「うっせぇな!サッサと立て!!話しは帰ってからだ!もうこの場所は摘発した。そして秘密警察のトップたちは全員クビにしてやった」
「はぁ!?」
「いつの間に‥」
驚きが止まらない様子の四人だったが、早くお前ら立て。そして動けマジで。
俺がイライラしているのに気づいたのか、四人は慌ててベッドから下りてはフラフラした足取りながらもなんとか歩いて俺の居る方まで来れたようだ。ならここから出るぞ。
何も説明すらせずに部屋から出て行く俺たちに不満だらけな表情で後ろから付いてくる四人だったが、部屋を出た瞬間に摘発に協力してくれた他の精鋭部隊のリーダーたちが「お、お前ら無事だったのか?」などと心配してくれた。
まぁあんまコイツらは無事じゃないんだけどな。
「あぁ、なんとかな。悪りぃな、わざわざ来て貰って」
「それは構わんのだが‥。てか上が急に全員クビって聞かされたんだが、マジなのかアレ?なんでこうなった?なんか総理が指示してきたらしいんだけど」
「さぁ?俺も知らんわ」
しれっと答えてみせていると、他の五人が俺をじーーっと見てきやがる。
あのなぁ、本当のことなんて言える訳ねーだろ。
‥じゃなくて、早くここから出なければ。他のリーダーたちとは別れ、さっき引き抜いてきた白衣の二人も付いて来て貰うことにしてから、俺たちは迎えの車でサッサと組織の方へ戻ることにした。
道中、めちゃくちゃ四人に質問されまくったが、運転してる奴が俺のチームとはなんも関係ない奴なので、全員の質問にはフルシカトしておいた。ま、桜井と高見沢はそんな俺の態度でキレそうになっていたが。
あぁ‥でも元気そうじゃねーか。
いつもと変わらないこの光景が見れたことに、内心ホッとしている。
だが、それと同時にリスクも背負わせてしまったことには申し訳ないとしか思えなかったが。
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