秘密警察-Secret Police- - 26/39

SP24

組織の方に戻ってこれば、もう中はドッタバタ状態に陥っていた。これもまぁ仕方ない。俺を怒らせた罰だ。上がどうであれ、怪しいことに手を染めてる方が悪い。

こんな状況の中でも俺たちは、知らんぷりして病室へとやって来ては四人を一旦休ませている最中。いきなり起こしてなんの説明もせずにこっちへ戻ってきたからな。やはり少しの疲れがあるようなので、小一時間休憩を取らせた。

そしてその休憩が終わると、棚瀬がテレビをつけながら昨日起きた爆破のニュースがひっきりなしに放送されていた。俺も棚瀬もニュースは何度も一応観ていたが、どの番組も何者かによる爆破テロという扱いになっていたので政府も警察側も真相を隠したいらしい。

そりゃそうだ、元警察が犯罪者になったなんてさ。しかもそれが人体実験によって生まれた相手。世間の誰が信じると思う?

ついていたテレビを観ては、高見沢が「俺たちこんな大騒ぎなこと‥」と呟いていたが、まぁ失敗したことはもうどうにもならんからな。俺もこれに関しては四人を責めるつもりもなかったし。

「ごめん、坂崎‥なんか‥こんな」

「俺らが失敗したせいだ。もっと早くに気付いてれば‥」

「後悔したって終わっちまったもんはどうにもならん。タイムスリップでもしない限り、俺たちは過去に戻ってやり直せる訳でもねーからな。‥いいんだ、また次があるじゃねーかよ?」

「でも‥なんかもう、自信が‥」

「何を弱気になってる?お前たちは今までどれだけの仕事に成功してきたと思ってるんだ?失敗したのは殺し屋を捕まえられなかったことだけ。あとは全部成功してきただろ?」

「だけど‥」

完全に心も弱り切ってしまっている桜井と高見沢。そんな二人がいるベッドの間までやってくれば、俺は迷わず二人の頭をくしゃくしゃっと撫でてみせた。

ま、手を上にあげた瞬間二人が俺に何かされるんじゃないかってビクッとしていたのが気に食わんが。

だが、まさか俺がこんなことをするなんて思ってもみなかったのか、桜井も高見沢もなんだか素直に照れてしまっている。なんだろな、やっぱこういうのってキモいからやめた方がいいか。

二人の頭から手を離してみせた瞬間、高見沢が「もっと撫でてよ‥」と甘えてくる。

「あ?マジでキモいなお前ら」

「俺たち頑張ってきたじゃん!!ずっと坂崎に着いてきた!散々お前に痛い目遭わせられても、お前が俺たちを信頼しなくても俺たちはお前の背中をずっと追ってきた!めっちゃ恐いリーダーなのには変わりないけど、俺たちはお前が好きだ!この五年間、どんっだけ頑張ってきてもお前は俺たちを‥そんなに褒めてはくれなかった‥

なのに‥‥急にずりぃよ‥、こんなことしてきやがって‥。もっと撫でてよ!もっともっと俺たちのこと褒めてよ!!」

「ばっ‥!?な、泣くな男のくせにッ!!」

「坂崎がいきなりこんなことしてくるからだろーが!?」

「そ、そうだよ!普段絶対こんな頭撫でてくれるなんてないのに!むしろ有り得ないくらいなレベルなのに、こういう時にはアッサリするのかよ!?‥‥嬉しいに決まってんじゃねーか‥!もっともっと撫でてくれよ。褒めてくれよ‥っ。心配してくれよ‥」

お前ら‥

「マジでなに言ってんだ。俺が安易にお前らのこと褒める訳ねーだろ。褒めるとすぐ調子のって失敗する癖に」

「なっ‥!」

「またそういうこと言う!!だからお前は嫌な奴なんだよ!」

「嫌な奴で結構」

コツンと二人の額を軽く殴ってみせた。お前らはどうやらこっちの方がお似合いみたいだからな。

いつもみたいに力はそんなに入れてるつもりはなかったのだが、二人ともが「いてっ」と口にしていた時点でホントに痛かったのかもしれん。俺と一般人との力の差はありすぎるからな、加減がおかしかったかも。

とまぁ、そんなことよりこれからについて話さないといけない。

二人に構っていた間、それぞれの先輩の隣のベッドに居る吉田と鈴木が棚瀬からポッキーを食べさせてもらっていたようだ。なにやら今日はポッキーの日らしいし。

「俺も欲しい、棚瀬!あーん」

「はいはい。ほら、言われなくてもあげますよ」

口を広げて待っている高見沢に対し、棚瀬が食べさせてやっている。そんな高見沢はまるで雛鳥だ。確かにガキっちゃガキだが。

何本もポッキーを貰っていたが、ようやく気が済んだのか高見沢が「なんか話しあんの?」と俺に向かって尋ねてきた。そしたら棚瀬は次に桜井の方に向いて、ポッキーをあげてやがる。

「あぁ。これからについてと、お前らの体のことだ」

「体ねぇ‥」

「俺たちの体、どうなってんすか?あの‥俺、爆破で坂崎さんに助けられた記憶があるんですが‥その時はまだボロボロだったはずじゃ?」

そう尋ねてきた吉田に対して、迷わず「そうだ」と返してみせた。すると、「やっぱり‥」という表情をさせている吉田。つーかむしろよく覚えていられたな、あんな意識朦朧としてた中で。

「僕は高見沢さんを助けに行こうとした記憶まであるんですけど、その先は全く覚えていなくて‥」

「覚えてなくて当然だ。吉田以外はほぼ瀕死状態だったからな。桜井、よく吉田を守ってやったじゃねーか。お前は先輩としての判断を間違えちゃいなかった」

「えっ?そ、そうか‥?なんかもうあの時は必死でさ‥。まだこんなド新人の太郎がいきなり犠牲になるなんて可哀想すぎるし、第一体が勝手に動いてたんだよ」

「桜井さん‥。あの時はホントに‥ありがとうございました。そして、すみませんでした。俺がアイツにやられてなければ‥」

暗い顔してる吉田だったが、桜井はそんな吉田に対してニコッと笑っては「気にするな」なんて言っている。気にするなと言われても、吉田が「はい、そうですか」となる性格じゃないだろうしで、まだ心の傷は癒えないかもしれんが、ここは桜井の腕の見せ所。

時間をかけてゆっくりと癒してやればいい。これから相棒となるお前たちなんだ、許しあえる心や相手を気遣う気持ちを今以上に持って欲しいからな。

「いいか、続けるぞ?まず、お前らの身体はさっき居たあの施設に預けて貰い、体を復活させて貰った訳だ。正直に言うと、実験前のお前らの体はほぼ使い物にならんくなっていたくらいヒドかったからな」

「そうですよ。見た目も中々グロくなってましたし、見ていたくありませんでしたもん。あ、坂さんポッキーいります?」

「今はいい」

断ると悲しそうに「えー」とか言ってる棚瀬だったが、もう一個の袋を開けては一人でパクパク食い始めているが。

ポッキー食ってる棚瀬を見て、高見沢が「もう少し早くお前が伝えてればこんなことには‥」と言ってきやがる。その発言に対して、食べるのを一瞬やめてしまった棚瀬。

‥今のは違うぞ高見沢。

「高見沢、棚瀬に謝れ。つーかお前らが棚瀬責める資格あると思うなよ」

「ご、ごめん棚瀬‥言い方悪かった」

「いいですよ別に。俺もあの時解除コードで引っかからなければ四人ともこんな目に遭うこともなかったと思いますし。だけどさっき坂さんが言ってたように、過ぎ去ったことをとやかく言うのは俺も嫌なんです。例えそれが自分の失敗でも。

後悔したって、その時の感情に流されて仕事が出来なくなるなんてプロじゃない。俺たちの仕事は日本を守り抜くことです。後悔に打ちひしがれてる時間があれば、気持ちを切り替えて任務を全うするだけですからね」

ポリポリとポッキーを食いながら長々と喋る棚瀬に、高見沢も桜井も真剣な顔をしながら彼の方を見つめていた。これが今ベッドにいる四人に出来るかどうか‥なんだよな。

桜井も高見沢も、同じ時間を過ごしてきた中でまだまだ俺や棚瀬のような考え方には行き着けていなかった。この間俺が話して、やっとその意味を理解したようだから、これから先も理解はしたが気持ちを切り替えるのには時間がかかるだろう。

「‥ということで、お前らの体は俺の判断で実験台になって貰った。お前たちを復活させる可能性に賭けたかった‥が、やはりリスクは付き物だな」

「リスク?」

「お前らは月に一度だけ薬を打たないと体が‥壊れてしまうらしい。だが、その薬さえ摂取していれば大丈夫だ」

「薬?ふーん、それくらいならいいんだけど」

「‥なら良かった」

今はまだ話す時じゃない‥か。

棚瀬からの視線が気になったが、目配せするとアイツもスッと別の方向に目を向けては黙ってくれてるようだ。

いつかは話さなきゃならないこと。いつまででも隠し通すつもりもないし。

「あの、坂崎さん‥。前に一度奴らに会った時、“自分たちと同じ目に遭わせる”って言ってたのがコレ‥ってことなんですか?僕たちのリスクは本当にそれだけなんですか‥?」

「‥あぁ」

「そう、ですか」

鈴木はなんとなく気付いてやがるか?コイツ、案外鋭いんだよな。

まぁ、それでもいいんだが。

「お前らちょっと今日一日は休むか、体力がどうなってるか確認しておけ。明日には動けるようになっておいて欲しい」

「分かった」

「了解」

「はいっ」

「分かりました」

「棚瀬は今から俺と来い」

「どっか行くんすか?」

「散歩だ。爆破された場所を見物しに行くぞ」

「はーい」

この先どうなることやら。

タイムリミットはそんなに先じゃないってことくらいは分かっている。

早くなんとかしねーと、東京がめちゃくちゃになりそうだからな。早い内に手を打たねばならん。

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