SP26
俺と棚瀬が戻ってきた頃には四人が部屋に居なかったので、今頃張り切って体動かして練習でもしてるのだろう。
分かっていたので見にいくつもりもなかったが。
まぁ相変わらずこの中はバタバタしており、通りすがる上のもんたちに睨まれたりすっけど俺は知らない。俺を怒らす方が悪いんだっつーの。
サッサと自分たちのいつも居る薄暗い場所まで戻ってこれば、俺はソファーにドカッと座り込み、棚瀬が立ちながらパソコンを早速イジっている。すると棚瀬が「ん?」と不審そうな声をあげるので「どうした?」と尋ねてみせた。
「あらら、直接俺たち宛に予告状届いてますねぇ」
「アイツらか!?」
「えぇ。坂さんやっぱり恨まれてますねぇ、首洗って待ってろって書いてありますよー」
「だろうな。フルボッコにしといたからな」
「俺観てて草生えましたよ。奴の反撃する隙間が一切ないくらいボッコボコにしてて笑っちゃいましたもん」
「アイツが俺に勝てる訳ねーだろ」
「ま、それもそーっすけど」
カチカチとマウスを動かしてはようやく椅子に座る棚瀬。いつアイツらが俺たちを襲いにくるのかを聞いてみれば、今夜らしい。何時頃とまでは書いてないみたいだが、そっちから予告出すんなら時間指定くらいしとけや。
ま、俺たちを油断させる為だろうけどさ。
それにしても‥眠たい。考えてみりゃ、昨日からマトモに寝てなかった気がする。四人のこともあったしで、気疲れもあるせいか体がダルい。
はぁ‥と溜め息をついた時、棚瀬が「少しでも眠った方がいいっすよ、坂さん」と睡眠を促してくるので遠慮なく横になることにした。マスクは邪魔なので取っておく。
「悪りぃ、ちっと寝るわ‥」
「はーい。おやすみなさーい」
「んー‥おやすみ」
。。。
なんだ‥?
なんか視線を感じる‥‥
違和感を覚え、フッと目が覚めると俺の目の前にはなぜか桜井高見沢吉田鈴木の四人がじーーっと俺の顔を覗き込んでいた。
な、なっ‥
慌ててガバッと飛び起きてみせれば、桜井が「おっはよー」なんて挨拶してきやがる。なんだよ、おめーら‥。つーか戻ってきてたのか。
「人の寝顔見てんじゃねーよ!」
「え?だって坂崎の寝顔可愛いもん」
「かわっ‥!ハァッ!?」
「そうそう。いーーーっつも怖い顔してっけど、寝顔の時だけ可愛いんだよーって太郎と正将に言ったら、ずーっと見てるんだもんコイツら」
「見てんじゃねぇよ!!」
「す、すみません‥!」
「ホントに桜井さんや高見沢さんの言う通りで可愛くてつい‥!」
また余計なことを‥!
桜井と高見沢を睨みつけると、二人は思いっきりビクッとさせていたが怯む様子は見られなかった。というより、まだ口を開いてきやがる。
「だってそーじゃん!坂崎って童顔なんだし、フツーにして笑ってりゃ可愛いのに!」
「気持ちの悪いことを言うなッ!!」
「俺も高見沢に同意だわ。素直に笑ってくれりゃ、女どもからもっとモテるだろーがお前は」
「素直に笑える相手の女がいたら笑ってるさ」
「え、笑うのっ!?」
「そんな女がいねーのがオチだけどよ」
「ですよね~」なんて呟く桜井。だから「ですよねは余計だ!」と返せば、棚瀬がさっきから俺たちのやり取りを見てひたすら笑ってやがる。
「うるっせーなぁお前は!」
「だーって!こんなに面白いやり取り見て笑わない奴がいないじゃないっすかぁ!」
「だーーー!!お前ら全員さっきから~‥!」
「坂崎がこんなところで寝てる方が悪りぃだろ」
「そーだそーだ!坂崎が油断してるからいけないんだからなー!」
「くっ‥」
イライラしてる俺を見やった四人が急に黙りこくったが、棚瀬だけはいつまでもケラケラと笑いっぱなし。
ったく‥。くだらねーことに時間なんか使ってられねーんだよ今は。
気を取り直して棚瀬に「何時間寝てた?」と尋ねれば、三時間くらいとのこと。ま、それだけ寝れてりゃ今は十分ってところか。桜井と高見沢の方へと顔を向ければ、二人は何やらビクッとしている。なんもしねーよ。
「おい、四人とも体は自由自在に動かせるんだよな?」
「えっ?あ、うん。大丈夫、一通り試してたけど俺と正将は問題なかったよ」
「俺と太郎の方も問題ないぜ。そうだ、棚瀬から聞いたけど予告状ってさ‥」
「今夜俺たちを襲いに来るらしい。ここでじゃなんだから、外に行って待機しててやろうじゃないか。そっちのが俺もお前らも暴れられるだろ」
「で、棚瀬も着いてくんの?」
桜井に聞かれた棚瀬が「行きますよっ!」と元気よく答えていた。
「俺だってやり返さなきゃ気が済まないっすよ。‥次に爆発物仕掛けていたら、確実に爆破は阻止します」
「そう、か」
時々真剣な眼差しに切り替わる棚瀬の姿が新鮮なのだろうか。桜井も高見沢、そして吉田と鈴木も少しだけ彼の雰囲気に気圧されているような気もした。
だけどそんな姿は瞬く間に消え去っていき、棚瀬はいつもの感じでニコニコしながら「だからアイツらは許さなーい」なんて、語尾にハートマークでも付きそうな喋り方に戻っている。
そんな風に一瞬で自分のスイッチを切り替える棚瀬を俺は今までずっと見てきたが、コイツらにはそういえばあんまり見せていなかったな。
ぼうっとしながら考えていると、鈴木と吉田がそろ~っと俺に近付いては質問してくる。
「あの‥坂崎さん、時間って不明なんですよね?」
「あぁ。だが、多分この間と同じくらいの時間帯だと思う」
「マジっすか?じゃあ、また車でウロウロしてるんですか?」
「いや、今回は時間になるまでもうここに居よう。‥ガソリン代もったいねーし」
「そうっすよね!」
「ですよね!」
「なんかお前らやけに嬉しそうだな」
そう尋ねてみるも、二人は俺から目を少しだけ逸らしては俺と視線が合わないようにしてきやがる。
だからなんだよ。気になるじゃねーか。
なので俺の方から質問しようとしたが、桜井がサッと入ってきては「太郎も正将も疲れてるんだよ」となぜかフォローしてきた。
「あ?」
「俺たちだって体動かせるとはいっても、まだ復活したばかりだ。しかも二人なんて俺たちと違って仕事にも全く慣れていない。昨日今日で起きた出来事を全て頭に入れて行動しろなんて言われても、まだ何が起きてるのかなんて実感だって湧かないだろうし。‥少しは休ませてやれよ。そりゃ車ん中にいるより、ここで休みたいに決まってる」
「‥そうだわな」
そんなことなのだろうか。吉田も鈴木も「えへへ‥」と申し訳なさそうにしつつ、桜井の後ろにサッと隠れてしまった。
あのなぁ、俺だってそこまで鬼じゃねーよ。休みたきゃ休みたいって言えばいいじゃねぇか。俺だって今の今まで休んでたんだし。
‥とはいっても俺相手に文句言えるほどコイツらは図々しくないしな。これがいつの間にやら桜井や高見沢みたいに図々しくなってくんだよ。なのでコイツらには素直に可愛く育って欲しいと思ってるんだが。
先輩が桜井と高見沢の時点でムリか。
「時間までまだあるからゆっくり休め。お前ら二人だって、いきなりこんなことになって嫌な思いをしただろうが、なんとか耐えてくれねーか?」
「はい!俺たちは坂崎さんに着いてくっす!」
「僕らは大丈夫です。だから、坂崎さんの足手まといにはもうなりません!」
「ははっ。おめーらは若いなぁ。その威勢、俺は好きだからな?こんな俺に着いていく宣言してくれるなんて、可愛い後輩め」
「は、はいっ‥!」
「うっす‥!」
また照れる。そして先輩二人からの視線が痛いな、後輩二人にとっちゃ。
「あっ、そうだ!お菓子たーくさん今あるので、好きなだけ食べてもいいですよ~!」
「え、マジっ!」
「坂さーん!サーティワンのギフト券ゲットしたんでこれが終わったら食べに行きましょーっ!デートデートっ!」
「デートとか言うなキモい」
「でも行くんでしょー?」
「‥‥行く」
とか言ってると、高見沢も「えー!俺も行きたーい!!」と騒ぎ出す。
そんなことで、もう暫くは自由時間を俺たちは過ごしていた。
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