SP27
「あーー!寒いっ!!」
「そりゃ11月のこんな時期だもん、寒いに決まってるわ」
「高見沢さん、もう少し中に着てきた方がいいですよ」
「そうっすよ。風邪ひきますよ?」
「俺は風邪ひかない!」
「バカだもんな」
「桜井に言われたくない!」
自分たちの体がどうなったかも知らない四人がやはり呑気な会話を続けている。
この間と同じ場所と同じ時間帯でビルの屋上から様子を窺って待っている今のこの状況。いつものメンバーに加え、棚瀬も追加されているのでもっと賑わい感じになっているし緊張感は全くないしで‥いや、それはそれで別に構わないんだが。
にしても爆破してしまった建物、いつ直るのやら。ここまで失敗してしまったのは俺のせいだ。なるだけ一般人には危害も加えたくないし、奴らの暴走を傷付いて死んででも食い止めるのが俺たちの仕事。
だが、もうこれ以上犠牲なんか出したくない。コイツら四人がここまで復活出来たのは、紛れもなく奇跡と運のお陰。あの実験施設の存在を知らなければ今頃ここに立ってはいなかっただろう。‥ま、その施設も俺が消し去ってしまったがな。
‥‥しかし殺し屋もあの施設で世話になってたとか。俺たちは相当因縁めいた関係なんだろう。
誰にも気付かれないように溜め息をついたはずなのに、棚瀬にはバレてたみたいで「どうしたんすか?」なんて尋ねられてしまった。桜井と高見沢ならまず俺が溜め息ついたことすら分からんから、こんなこと聞いてこない。
「どうもしねーよ」
「‥あの四人のことが心配っすか?」
「バカ言え。アイツらは薬がなくったって生きてけるようなバカな体してんだろ」
「それはどうかなー?」
チョけた言い方でヘラッと笑っている棚瀬。その後に言葉を続けようとした彼だが、何かの異変に気付いたのか顔をフッと俺から逸らして周りを確認し始めた。
俺も棚瀬と同じタイミングで気付いたので、目を凝らしながら辺りを見渡してみせた。その数秒後にも四人が何かに気付いたのか、会話をピタッとやめては視線をあちこちへと移している。
そして、左側から気配を感じたので顔をそちらに向けてみせると、そこにはやはりあの三人が立っていやがった。こちらの様子を見ているのかなんなのか。話してくる気もなさそうか。
すると右と左に立っていた奴らがバラバラに分かれたので、俺は四人に指示を出す。
「いけお前ら。ケリをつけてこい」
「言われなくったって分かってるさ。いくぞ太郎!」
「はいっ!」
「アイツは返り討ちにしてやるからな!来い、正将!」
「は、はい!」
シュパッと一瞬でこの場から離れていった四人を見送ったあとは、ただ一人残ったアイツを睨みつければ俺たちはそこへ向かうだけ。
「いくぞ、棚瀬」
「えぇ。ぶっ殺してやりましょう」
「そのつもりだ」
物騒な会話をしているが、本当に殺すつもりである。罪を償わせたいところだが、奴らの心臓に宿っている危険なブツがあるせいでそうはいかないんだ。例え頑丈な壁に囲まれ、身動き一つ出来ないような拘束状態にしていても、何かしらの衝撃を心臓に力を加えてしまえば一発でアウトだ。
刑務所だって吹っ飛ぶし、そこで起きた爆発のせいで凶悪犯が逃げ出したりなんかしたら、日本は恐怖に陥る。それだけはまず避けたいからな。
そんな相手は殺す他ない。これは考えた結果だ。つーか日本を貶める奴らなんか死んだって構わないだろうしよ。
シュッとこの場から離れ、奴が居るビルの屋上までやってこれば、奴は俺にやられた時のケガが全て再生されたかのごとくピンピンしており‥ってか、怪我一つなくなってやがる。これも薬か実験で体を変えられたせいなのだろうか。
ほぼ同時にここへ降り立った棚瀬も不思議そうにしながら奴の様子を眺めており、眉間にシワを寄せては「ケガがない」なんて呟いていた。
「おい、なんでお前はケガが治ってる?ボコボコにしたはずだが?」
「ふんっ。知りたきゃ俺たちの体を変えた奴らに聞け。‥もっともソイツらに会えたらの話しだが。あの施設、解体させやがっただろ坂崎?」
「あぁ、解体させた。あんなもんなくていい。お前らみたいなのが続々出てきそうで怖かったからな」
「もう出てきてるんじゃねーのか?あそこを恨んでる奴らは多いはずだ。騙されて連れてかれた奴も多い」
「‥まだ出てきそうだな」
これが終わったらそういう奴らを一斉に探し出して片っ端から捕まえてくしかねーか。理由は聞いてやるつもりだが、もしこの国に恨みを持ってるような危険人物ならば即排除しなければ、こんなことが次々と起こってしまう。
それだけはなんとか阻止したい。
「よぉ、棚瀬。やっと出てきたか」
「うるさい。テメェなんかに俺の名前を呼ばれる筋合いなんてないぞ」
「カタイこと言うなよ。昔は仲間だっただろ?」
「昔の話しだ。俺も坂さんもアンタらと一緒に居た頃の思い出話しをするような性格してないんでねぇ。ましてや犯罪者相手なんかに。今の四人の仲間のがよっぽど優秀だ」
「死にかけた野郎共がか?笑わせてくれるわ」
「いや、アンタら人のこと言えんでしょ」
「‥‥。」
図星なのか、一瞬固まった相手。
しかし気を取り直しては俺たちにまた話しかけてきやがる。なんて精神だ、恥ずかしくないのか。
「だがお前はあの爆破を止められなかった。お前は頭がいいからな、解除コードは一瞬で解けるような生ぬるいもんにはしていないのさ」
「‥ふんっ。今日もどうせ仕掛けてあるんだろ?絶対に解除してみせる」
「どうだか」
「お前、棚瀬ナメてっと痛い目に遭うぞ。つーか昔もよく痛い目に遭ってただろうが」
「俺がサブリーダーだったのに坂崎は棚瀬ばかりに頼ってた。お前たちがもっと早くに俺たちの方に駆け付けてくれれば俺たちは死にかけたりなんかしなかった!こんな体になんてならなかった!!」
「なにおう!?テメェが勝手に独断で動くからだろうが!!俺はあの時忠告したはずだ、“行くな”と!だがお前はそれを振り切って他の奴らを引き連れて現場に向かった!俺と棚瀬が仕事終わるまでなぜ待たなかった!?」
「待っている時間なんてなかっただろ!?」
「あったはずだ!自分の評価ばっか気にして周りのことを考えてない奴が何夢みてんだ!?」
だが、そうは言っても俺たちはあの時仲間だった。コイツだけに限らず、他の奴らも現場で犯人たちと戦ってるのを知っていたので俺と棚瀬は自分の仕事が終わり次第、すぐそっちに向かった。
だけど間に合わなかったんだ。
しかし俺には俺の考えがあったし、そっちのが確実に犯人を捕まえられて、尚且つ安全な方法を選んだ。それを話したにも関わらずアイツは勝手に動いた。もうこれ以上はテメェなんかの面倒なんて見れなかったし、勝手にしろとさえ思っていた。
だから奴らがあんなことになろうとも、仕方ないという気持ちで片付けられてしまう程度。
「‥お前なんかよりも、今はもっと出来る後輩たちがいる。俺に反発しながらも着いて来てくれる優秀な二人がいる。心優しいまだ何も俺たちの世界を知らない二人がいる。だから助けたいと思った!切り捨てる覚悟もあったが、俺はアイツらを復活させた!!
それは俺がアイツらのことを大事にしたいと思ってるからだ!!‥お前なんかと違ってな」
「くっ‥!」
当たり前だろ。どこの世界にこんな奴を助けたいと思う奴がいるんだ。
生意気は生意気でも、桜井と高見沢には可愛げがある。だがしかし、コイツには一切それがない。むしろ俺を嫌っていると分かっていたので俺は何も思わずに、コイツが死んだと上から聞かされてもこんな思いでいられるのも当然だ。
隣に居た棚瀬も言葉を続けてみせる。
「そうだよ、アンタらなんかより今の四人のがずっと可愛いし、やっぱり助けたいって思っちゃうんだよね。正直あの子たちを爆破に巻き込んでしまったことはショックだったよ、自分の中では。だけどアンタが爆破に巻き込まれたところで“あ、ごめん”としかならないわ」
「言いたい放題言いやがって‥!」
「だって事実だからしょーがないじゃ~ん!」
「棚瀬テメェ‥っ!!」
ダッとこっちに向かってくる相手。
よし、始めるか。立ち話もつまらんかったし。
「一発で片付けるぞ、棚瀬ッ!!」
「了解っ!」
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