秘密警察-Secret Police- - 32/39

SP28

シュッタッと降り立ったビルの屋上には、憎いアイツが待っていましたと言わんばかりの態度で俺と正将を見やる。

コイツの目付き、マジでムカつくんだよねぇ。あと気持ち悪いし。ホントに警察だったのかよ?って感じだ。いや、そしたら坂崎の目付きもアレだが。

そしてそんな黒いマスクをした相手は嬉しそうにしながらこう言ってきた。

「私たちの仲間になったようですね」

「あぁっ?」

「貴方たちも変えられたのでしょう?体を」

「らしいな。あんま自覚ねーけどよ」

「まだ坂崎は貴方たちのリスクについて話してないのですか」

「リスク?」

「貴方たちにだって何かしらのリスクがあるはずですよ。私たちと同じく体が爆破するのか、それともまた別の何かが起こるに決まってる」

「‥‥。」

「おや?坂崎に聞かなかったのですか?」

ニヤついた目でそんなことを聞いてきやがる。なんなんだよコイツは‥

てか‥やっぱりそうなんだ。俺たちの体、コイツらと同じ風になっちまってるんだよ‥な。そんな都合のいいことある訳ないもん。薬だけ打っていればいい、なんてことないよな。

だけど、それを改めて聞かされた瞬間の恐怖といったらそりゃあもうハンパなかった。俺の体はどうなる‥?他の三人も同じなんだよな?

そんな考えごとをしていると、正将が「なんとなく気付いてましたよ」と奴に反論していた。

「気付いておられましたか」

「坂崎さんの目が一瞬だけ哀しそうにしていましたから」

「坂崎の奴が?アイツが仲間に対して哀れみを持つとは」

「坂崎さんをバカにしないで下さいっ!あの人はとっても凄い人です。冷徹に見えますが、誰よりも熱い思いを胸に秘めてる人です。そんな人のことを悪く言える資格なんて貴方になんかない!」

正将‥

坂崎が聞いたら恥ずかしがりそうなセリフだな。

そう思いながらも正将が坂崎のことが大好きだっていうのを改めて知れた瞬間だった。俺たちもそうだが、坂崎に一番認めて貰いたいもん。

「そうだ!坂崎のことだから、俺たちのことを考えて敢えて何も言ってこなかった可能性だってある! 別に騙してる訳じゃねーだろ!」

「それもそうですね」

「つーかこんな体になった大元はお前らがあんなもん仕掛けるからだろ!?今日という今日は絶っっ対に許さねーからな!?いくぞ、正将!!」

「はいっ!」

。。。

美人さんが一人で突っ立っては俺たちを警戒している様子だ。

いや、もしかしたらマスクの下はブサイクかもしれな‥‥

そんなことを考えていると、相手もそんな俺の考えに察知したのかいきなり睨んできやがった。おー、怖いじゃんかさ。

「んなツラしてたら美人が台無しなんじゃないのか?」

「冗談言える暇があるとでも思ってるのか、お前たちは?」

「じゃあ何。ブスなの?」

「女に向かって堂々と聞くことか?」

「あ、もしかして坂崎のこと好きだったりして」

「‥えっ?」

一瞬ビックリしたかのような顔で俺を見やる相手。え、今の態度なんなの?なんだったの?

隣にいる太郎と目を合わせては驚いていると、相手はどこか顔を赤くしながら「ふざけるな貴様ッ!」と突然怒り出してきた。

「あんな男を好きになるはずがない!!第一坂崎は私たちを見捨てたんだ。そんな奴相手を好きになるとでも?」

「ふーん‥。けど坂崎って、もしお前たちが生きてると知ったら助けようとしてたと思うぜ、きっと」

「そんな訳‥!」

「現に俺たちのことをアイツは助けてくれた。仲間を切り捨てることの覚悟はあったとしても、俺たちのことを見捨てなかったし、切り捨てたりなんかしなかった。今までアイツの考えに納得いかなかった部分もあるが、今はもう違う。俺はアイツの言っていることは正しいと思う」

「あの男は仲間を仲間だなんて思っていないじゃないか!」

「そう思うのは自分たちの捉え方次第だろうね。坂崎のことだから、自分の口からそんな風に仲間仲間って連呼するような奴じゃないの分かってるでしょ?」

「っ‥」

「俺はアイツと仲間になった時から坂崎の凄さには感心させられっ放しだったよ。めちゃくちゃ怖いし、自分が気に入らないこととかイライラしてる時とかはよく殴ってきたりもするけど、それは俺たちが悪いせいであって、坂崎はなんの意味もなく暴力を振るう奴じゃないのも知ってる。

そりゃ信頼されたい気持ちは今でも変わりないけどさ‥。でも、アイツが仲間を切り捨てることの意味を教えてくれた時に俺は自分も覚悟を決めた。仲間一人を救うより、お前たちのようなヤバい奴らを捕らえる方を優先させると。

一億人の命と仲間一人の命、どっちを取るかなんて俺たちにはもう迷ってる暇はない。俺たちの仕事は国を守ることだ。仲間の一人や二人犠牲になろうとも、心を鬼にして立ち向かわなきゃいけない敵が目の前にいるのなら俺は戦う方を選ぶ。‥選択を間違えない為にも、迷う心を捨て去る。

今はまだそれが上手く出来なくても、いつかは俺や太郎も坂崎や棚瀬のような鋼の心を手に入れてみせるさ。だろ、太郎?」

「はい。坂崎さんや棚瀬さんのように俺もなりたいっす。あんなにも凄い人たちが他のチームにいるはずがない。俺、このチームになれて心から良かったと思ってますから。自分の命を犠牲にしてまでこの国を守り抜くその姿勢がとてつもなく格好いいっす。‥だから坂崎さんに惚れても分からなくはないんですけどねぇ」

急に太郎が振ってくるもんだから、相手は更に顔を赤くしては太郎に向かって「うるさい!」と言い放っていた。こりゃ確実に坂崎のこと好きだっただろアイツ。

「隠さなくったっていいじゃん!俺たちも坂崎のこと好きだよ?なぁ、太郎よ?」

「うっす!俺も坂崎さんのこと大好きっす!」

「それとこれとは別だ!覚悟しろッ!!」

「同じじゃんっ。よし、いくぞ太郎!」

「はいッ!」

。。。

「一発で片付けるぞ、棚瀬ッ!!」

「了解っ!」

俺の掛け声と同時にシュパッと一瞬で奴の背後へと回った棚瀬。相手が棚瀬に気を取られてるうちに片付ける。

気付かぬ内にシュンッと相手の間合いに入り込めば、あとは蹴りを顔面に入れるだけだ。こんな奴に時間を取ってるほど暇じゃねぇんだよ、こっちは!

「いつのまに‥っ!?」

「オラァァアッ!!」

「ふがっ!?」

ゴシャアッという鈍い音が足から伝わってきた。気持ち悪い。

俺が奴の顔面を蹴りつけ、そして後ろから同じタイミングで棚瀬も相手の後頭部を狙って思いっきり蹴りを入れてしまえば相手は一発で倒れ込む。

はい、終わり。

だから言っただろ?一発で片付けると。

ドシャッとまた呆気なくぶっ倒れるコイツを見たあと、無線で四人に「こっちは終わったがそっちはどうだ?」と尋ねてみせた。

すると四人ともが「はやっ!?」と声を合わせて驚きの声をあげているのが聞こえる。つーことはまだ戦ってる最中か。

そんな四人と無線を取り合ってる中、何やら棚瀬がぶっ倒れてる相手に対して何かやっている。

「は!?なに、どうやったらそんな早く終われるの!?」

「靴底に鉛を仕込んどいた」

「卑怯すぎて草も生えない」

別に卑怯じゃねーよ。これはやり方だ。タイマンなんかじゃあるまいし。何を真面目に戦う必要がある?

「ド畜生めが‥‥」

「それって安全靴なのか?」

「いいや。ただ単に靴底に鉛仕込んでおいただけ、俺も棚瀬も」

「鉛なんか仕込んでて俺たちと変わらないスピードで移動してたってのか?‥‥やべぇな、お前ら」

すると棚瀬が嬉しそうに「できたっ!」と言ってはニッコニコ笑顔でこちらを振り返ってくる。

「坂さーん!出来ましたよ亀甲縛り!見て下さいよ、初めてにしては上手く出来てませんか!?」

まだ無線が繋がってるせいで、向こう側からまた「ハァ!?」みたいな驚きの声が届く。‥うるせーな。

「亀甲縛り!?なんでそんなことしてんの棚瀬!!お前そんな趣味あったの!?」

「いや、やってみたかっただけ」

「おい坂崎!お前なんか言えよ!」

「‥綺麗に縛れてるな」

「あざーっす!」

「そうじゃねーだろオイ坂崎ぃ!!」

「お前までも悪ノリすんなッ!」

「‥それよりお前らはどうなんだ?終わったのか?」

そう質問すれば、高見沢も桜井も「まだだけど‥」と控えめに呟く。ったく、しゃーねーなぁ。

「棚瀬、お前は桜井んところへ行け。俺は高見沢たちの方へ行ってくる」

「はーい!」

棚瀬に縛り付けられたコイツは放っておいても大丈夫だろう。こんな格好で逃げ出せるとは思えんし。しかし棚瀬は何をやってんだ‥

そう心の中で思ったが、口には出さずに俺はすぐに高見沢たちがいる方へと駆け出し、逆に棚瀬も何も気にすることなく桜井たちの方へと向かって行った。

さて、こっちも一発で片付けるてやるからな。

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