秘密警察-Secret Police- - 34/39

SP30

「高見沢、鈴木っ!」

「あ、坂崎!」

こっちに来てくれた坂崎。そんな戦っている最中の俺たちと敵を一旦分裂させたかったのか、相手を蹴散らしてしまう坂崎。

邪魔が入ったので俺たちから距離を取ってしまった相手が、静かに舌打ちをしているのが聞こえてきた。坂崎がウザいのだろう。でも俺たちにとっては強い味方だ。

相手と離れてしまえば、坂崎が俺と正将の間に着地するので二人して背の小さい彼を見やる。

「どしたの?」

「サッサと終わらせたいだろ?だから助っ人しに来た」

「助っ人というより、坂崎がもうパパッとアイツを殺っちゃった方が早い気がするんですけど」

「‥お前らの手でアイツに復讐したいんだろ?」

「!」

言われてみればそうだけど‥

向こうにいる正将と目が合うと、彼は俺を強い眼差しで見つめてきてはコクンと小さく頷く。そうだな、お前がそこまでいうんなら俺たちの手でアイツを片付けてやろうじゃねーか。

決意が固まり、俺も坂崎に対して「復讐したい」と口にすれば「そうこなくちゃな」とだけ返事をしてから、彼は離れた場所にいる元仲間に声をかけていた。

「お前らのクソ弱いリーダーは捕まえたからな!!」

「‥‥そうか。またお前にやられたのか、アイツは」

「あんな奴、俺の相手にもならん」

ふんっと鼻で笑う坂崎。しかしあの薄気味悪い野郎は冷めた目でこっちを見続けているだけで、何かを反論してくることはしてこない。

しかし、別の話題が奴の口から出てきた。

「坂崎、貴方の今の仲間は強いのですか?」

「まぁそれなりに強い方なんじゃねーの。棚瀬よりかは劣るが」

「そうですか。では私相手でも倒せる可能性は十分にあるということですね」

「うるせーな、今からの相手はこの俺だ!コイツらはもう二度とお前なんかに傷つけさせん!!」

すると坂崎は、急にガバッと俺と正将の肩を組んでは自分の方へと寄せてくる。背が違うから少し俺が屈む形になってるが、いきなりこんなことする坂崎にビックリして声も出て来なかった。

そして俺と正将の明るい髪をわしゃわしゃと撫でてくる坂崎は、何やら相手にこの様子を見せつけているようにも感じたが‥気のせいか?

また坂崎に頭撫でられたせいで少し照れてしまったが、俺以上に嬉しそうにしている正将を見た瞬間「コイツ可愛いな」と思ってしまった。分かるだろ、この嬉しい気持ち?坂崎に褒められるとすげー胸がぎゅううっとなるんだよ。言っとくが恋じゃねーからな!

なんて心の中で独り言ばっか呟いていると、坂崎が更に俺らの顔を引き寄せてはボソッと俺たちに指示を出してきた。

「いいか、お前たちは立ち去るふりをしてこっそり後ろから行け。バレたとしても俺が援護してやる。ボコボコにしてやれ」

「お、おう」

「はいっ‥」

「なら行け!」

坂崎の腕から解放された後は、俺も正将も若干演技に入ってみせる。

「やっぱ俺ら面倒くせーから坂崎にアイツ任せて桜井たちの方に行くわ」

「あっちに行くんかい」

「うん。ほら行くぞ正将!」

「え、あ、はいっ!」

という訳で、一旦正将を引き連れてこの場から退散してみせた。

ワイヤーを使ってシュパッと離れてしまえば、桜井たちの所へ行くふりをするだけ。相手が俺たちから目を逸らした後はクルッと旋回して、正将と一緒に奴の背後側へと回って行く。

その間に坂崎たちを見やると、彼はかなーり力を抜いて相手と戦っているのが丸わかりだ。そんな様子を正将と二人で見ていれば、正将が「坂崎さんって凄いや‥」なんて呟いていた。

「な、アイツには到底追いつけんよ」

「僕も自信ないなぁ‥。そしてさっき、頭撫でられたのが凄く嬉しかったです!」

「めーっちゃ照れてたもんな、お前」

「高見沢さんだって照れてたじゃないですかー!」

「う、うるせーな!お前ほど照れてねーよ!」

「泣くよりかはマシですよぉ!」

「そのことは言うなーッ!」

って、桜井みたいに正将と言い争ってる場合じゃない!

つーか俺たちって二組になると絶対言い合いしてるよな。俺と桜井は日常茶飯事だったけど、坂崎と棚瀬もよくこんな風に言い合いしてるのにさ、いっつも俺らだけが怒られてるんだもん。

‥じゃなくてぇ!

「よし正将、あそこで少し待機するぞ」

「はい!」

シュタッと降り立った場所は、もちろんさっきまで居たビル。しかし物陰に潜んでいるので、相手にはバレてはいないっぽい。

さて、どういう作戦でいこうか。

コソッと物陰から坂崎たちを確認した後、作戦の考えごとをしたかったのでタバコを取り出してみせたが、そこでハッとなった。

‥このタバコ、使えるか?

タバコを取り出そうとする仕草でピタッと止まった状態だったせいか、正将が首を傾げながら不思議がって「どうしたんですか?」と聞いてきた。

だけどその言葉には反応せず、残っていたタバコを全て取り出し‥‥いや、二本だけ残しとこう。また後で吸いたくなったら困るし。

‥よし、八本は使える!

急いでタバコを八本取り出せば、相変わらず正将が不思議そうにしている。そんなぽけっとしている正将に対し、指の間に全て挟んだタバコに火をつけろと命令してみせた。

正将に預けたライターからシュボッと火が灯されると、それが八本のタバコに全て煙が焚かれた。

「いいか、正将。俺が先に出て行くから、お前は俺の真後ろで隠れてろ。俺がタバコをアイツに投げつけるから、油断したその隙にお前がワイヤーで攻撃してみせろ」

「わ、分かりました」

「‥このどれか一本が、アイツの左目に命中するといいけどな」

「じゃあ俺は脇腹狙います!」

「いいじゃん!よっしゃ、これで最後にするぞ!」

「はいっ!」

行くぞ、と声をかけてからここからバッと飛び出してみせると俺たちの気配に気付いたのか、奴がこちらをチラッと視線で確認してきやがった。

あぁー!クソったれ!!

ここからの距離でもいけるか?いや、いける!やってやる!!

正将はちゃんと俺の真後ろに居るな?

「いつからそこにっ‥!?」

「さっきから居たよ!!」

「おら、テメェ俺の相手しながらよそ見とはいい度胸じゃねーか!」

「くっ‥!」

坂崎が援護に入ってくれて、相手が俺たちに気を取られた隙を狙っては奴の足許をガツンと蹴ったくってはバランスを崩してくれた。よし、今だ!!

「今タバコ高いんだからな、こんチクショーーーッ!!」

「‥!?」

全力で腕を振り切ると、軽いはずのタバコでもかなりの勢いがついて獲物目掛けて飛び付いてくれる。このままいけ!

相手は俺が何を投げたかが見えていなかったようで、タバコに当たるまいと必死に避けようとしているのがなんだか笑えてくるな。

しかしタバコが奴の左目に掠めることはなかったが、どうにか相手を怯ませることには成功した。顔には掠ったので、熱がっては驚いていやがる。こっからが出番だぞ、正将。いけッ!!

俺が横にズレてみせた時、後ろにいた正将がキツい表情をしているのが少しだけ見えた。コイツもこんな顔するのか。

「お前は許さないからなあぁあッ!!」

「クソッ‥!?」

ワイヤーを相手目掛けて放てば、見事に奴の脇腹を突き刺してくれた正将。その衝撃で相手も後ろに倒れかけていたが、後ろには坂崎が控えている為、まーた一発デカい蹴りを喰らわされていた。しかもあの靴、鉛入ってんだろ?いったそ~。

坂崎が蹴った瞬間、変な音が奴の体から聞こえてきたがどーでもいい。骨が折れていようがヒビ入ってようがそんなの知るか。

ドシャッと地面に倒れた相手が、すげー痛そうにしながら喚き叫んでいる。そして俺と正将が坂崎の隣で着地し終われば、「上手くいったな」と褒めてくれた‥のがまた嬉しかった。

「でも坂崎の最後の一発の蹴りが一番効いただろ」

「それはどうだか。鈴木が見事アイツの脇腹に傷負わせたことはすげーじゃんかさ。褒めてやれ、高見沢」

「おうっ‥。よくやったじゃねーか正将!」

「ありがとうございます!まさか当たるとは思ってもいませんでした」

「それでも集中してた時の顔は格好よかったぜ?いい相棒になりそうだ!」

「へへっ‥!」

また照れちゃう正将。なんっだろ、コレ。後輩ってめっちゃ可愛い‥!

なんて思いながら、満足してタバコを取り出しては口に咥えて火をつけた瞬間だった。坂崎にパッとタバコを奪われた‥

「あっ、おい!何するんだよ!」

「いつものアレに決まってんだろ」

「あー‥」

そう坂崎が俺に対して言ってくる例のアレ。アレの意味を分かっていない正将が、「アレ?」なんて言いながらワクワクしては坂崎のすることを見届けようとしていた。

‥ワクワクするもんじゃねーぞ正将。

坂崎はというと、タバコを一口すうっと深く吸い込んでいる中、うずくまっている相手の頭をガッと無理やり持ち上げては奴の顔面目掛けて、煙をフゥーーッと吐き出していた。目の前で煙を浴びせられた相手は、もちろんゲホゴホと咳き込む。

「な、何をするっ‥!」

「おめー、よくも俺の仲間の左目を奪ってくれたなぁ。お陰でソイツの左目の代わりに俺がなることになっちまったじゃねーか。責任取ってテメェも左目なくせ」

「おいっ!?ちょ、ちょっと待て坂崎ッ‥!」

「待たねぇ。さっき高見沢が狙い定められなかったから、代わりに俺がやってやるよ」

「ま、待て坂崎ッ!!」

抵抗しようとする相手だが、坂崎は平然としたツラで目の前に居る男の左目をタバコで‥‥

いや、もう言葉にするのやめる。

正将は一瞬固まっていたが、ソロ~っと顔を違う方向に逸らしてしまったし。

耳に残ったのは、アイツの悲痛な叫び声だけだった。

忘れてた訳ではないが、坂崎はこういう奴だ。犯罪者に対しては容赦なさすぎるからな。尋問という名の拷問をさせる男なんだ、これくらいは序の口‥かなぁ‥?

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