秘密警察-Secret Police- - 36/39

SP32

嫌な顔して電話に出れば、向こう側から「幸ちゃーん!」と気持ちの悪い声で俺の名前を呼びつける親父。だから何度その呼び方をやめろと言えば済むんだ‥

ツッコミたかったが、ここにはあの後輩四人がいるからやめておこう。クソが。

「‥‥なんだ?」

「ねぇ!秘密警察の本部に戻ってきてよ!パパ今ここに来てるからさ~」

「なんで来てるんだよ!?」

「幸ちゃんたちにお礼を言いたいからだよっ。ね、いいでしょ?他の五人のあの子たちもちゃんと連れてきてよ~?」

「アイツらもかよ。俺らアンタのこと守ることで精一杯だったし、疲れてるんだから早く終わらせろよ」

「うん、分かった。だからこっち来てね」

「‥‥。」

コイツのこの喋り方どーにかならんのか。キモすぎて適わん。

電話を切れば、桜井が「誰?」と聞いてくるので親父とだけ即答しといた。俺の親父ということは総理大臣、つまり今の俺の会話を聞いている限りでなんとなく今からうちの親父に会うと理解出来たのだろう。桜井が若干緊張した面持ちに変わった。

「まさか‥今から会うのか‥?」

「お前らもな」

「やっぱり‥」

「えっ!?俺たちも!?総理に会うの!?てか会っていいの!?」

「親父がお前ら五人を連れて来いって言うからな。ほら行くぞ。誰でもいいからコイツら三人抱えて運べ」

「死体なんか運びたくねーよ」

「文句言うな」

は~い、とテキトーな返事をしている高見沢と桜井。棚瀬も一緒になって、一人一体ずつ運ぶことになったらしい。流石にまだ吉田と鈴木にはこんなことさせられないと、先輩二人が仕方なく担ぎ上げてはここから離れることとなった。

。 。 。

ようやく組織の屋上まで辿り着けば、そこには俺たちを今か今かと待ち構えていた様子の親父が外に出てきて待ってるじゃねーか。

周りにはSPが何人もおり、かなーり厳重に守られている。んっとによく総理になんてなれたよな、あんな奴が。

すると俺を見つけた途端に、親父はいきなり大声で「幸ちゃーーーん!!」なんて叫んでは手を振ってきやがる。あの野郎‥!!

イラッとしている俺に対し、背中からは四人が声を小さくしてヒソヒソ話しをするかのように、「幸ちゃん?」「幸ちゃんだって?」なんて囁いていやがった。更にイラつき度が増したせいで、ギッと四人を睨むと全員が一瞬で口を閉じたが。

だが今はコイツらよりも、怒鳴らなきゃいけない奴がいる‥っ!

ズカズカとソイツの目の前までやってこれば、言いたいことをあとは言うだけ。ムダに終わるかもしれんが‥

「あ、幸ちゃん!結構早くに戻ってきてくれたね~!パパ嬉し‥」

「何っっっ度言えば分かるんだ!?俺のことをその名前で呼ぶなっつってんだろおぉぉお!?」

「んもー、怖いよ幸ちゃん~‥。パパ泣いちゃいそう‥」

「泣けよッ!!お前ホンット鬱陶しいよな!?」

「なんでこんなに恐ろしい子に育っちゃったんだろ。昔はもっと笑顔も可愛くて‥」

「黙れ、それ以上言うと殺すぞ」

「も~!マジな目にならないでよ幸ちゃん~!」

誰がマジにさせてると思ってんだよ!!

イライラがハンパない状態でいると、横から棚瀬がいきなりひょこっと現れては親父に「お久しぶりですね総理!」と挨拶してきた。なんっか、それだけでも腹が立つ。今は全てにおいてムカついている‥!

こんのクソ親父め!!

「あぁ!棚瀬くんだっけ?久しぶりだね。いつも幸ちゃんがお世話になってるよ~」

「いえいえ!坂さんの暴走を止められるのは俺くらいしか居ませんしねぇ!」

「そーだよね。幸ちゃんがこれから暴れた時は、棚瀬くんを頼りにしてるよ!」

「はいーっ!」

親父も棚瀬も初めて会った時から意気投合したせいでやけに仲が良いから、それもまた俺をイラッとさせてくる原因の一つ。ノリや喋り口調が似ている分、見ていて眉間にシワが寄りまくるんだっつーの。

そして、こんな総理大臣だとは思っていなかったであろうあの四人からしたら、今ここで見ている光景が信じられないといったツラしている。ぽけーっとしながら、親父をガン見。そりゃそーだ、テレビで観るコイツはこんなんじゃねーからな。

そんなぽけーっとしている四人に気付いた親父が、ハッとしながら慌てて姿勢をビシッとしては顔の表情も一気にキリッと整えた。しかも声も低くして威厳を保っているかのようにしてさ。なんかウゼー‥

「初めまして諸君。私が‥」

「知っていますよ、言われなくとも‥」

「まさか‥総理大臣にお会い出来る日が来るなんて、思ってもみませんでした‥」

「そうかね?私は君たちにとても会いたかったよ。息子の幸二と仕事をしている仲間というものを、一度目にしておきたくてね」

「あ、あの‥キャラが変わりすぎじゃ‥」

「あっはっは。そうかね?本来の私がこっちだから‥」

「んな訳ねーだろ!!」

「あ、痛いっ!」

一発頭を引っ叩いた途端、親父がまたさっきの本来のデレっとした親父に変わった。

「んもー‥!幸ちゃん、ダメでしょ!今喋ってる途中だよっ?」

「うるっせぇなぁ!!いいか、自己紹介してる暇なんてねーだろ親父は!?」

「もっと俺のことこの子たちに知って貰いたいの!」

「はああぁーーー??どんだけ気持ち悪りぃんだお前はッ!!」

「あ、それより幸ちゃん。この子たち四人の紹介して」

「人の話しを聞けえぇえええッ!!!」

親に対してこんな風に全力でツッコミ入れる子供がどこにいる?しかも総理大臣に向かって。

棚瀬は見慣れている光景なので、なんとも思っていなさそうだが他の四人がさっきから口が開きっ放し状態だ。俺がこんな風にツッコミを入れてるという時点で驚きだろうし、一国の総理が気持ち悪りぃ奴だしで‥‥

ハァーーーと盛大な溜め息をついている中、親父が一人ずつに挨拶し始めた。ったくよーー‥!

「よろしくね、名前はなんて言うの?」

「さ、桜井です。桜井賢です‥っ」

「桜井くんね。じゃあ君は?」

「吉田、太郎です‥!」

「吉田くんか~!じゃあ、お隣に居る髪が長い君は?」

「高見沢俊彦‥です」

「高見沢くんね。はい、最後は君!」

「鈴木正将です‥!」

「鈴木くんね。よし、全員覚えた!桜井くん、吉田くん、高見沢くん、鈴木くん。これからも幸ちゃんのことを頼んだよ?あの子、ホントはもっと可愛くて心優しい子だった‥」

「おい、くぉら親父‥ええ加減にしろよ‥」

「あっ、ちょっと待って幸ちゃんっ‥そんな黒いオーラ出して拳でグリグリしないで‥!」

「じゃかーしぃ。とっとと用件だけ言って帰れ」

親父を最大限に脅してみせると、慌てた様子で親父も俺から離れては「分かったよぅ‥」なんて言っているくせに、しゅんとしながら落ち込んでやがる。なぜそこで落ち込む?

謎すぎる親父だが、急に俺を見つめてきては「守ってくれてありがとね、幸ちゃん」と礼を述べてきた。‥キモい。

「幸ちゃんだけじゃないよ。君たち五人にはとっても感謝しているんだ。そこに転がってるのが今回の犯人なのかな?よく捕まえてくれたねぇ。そんな君たち六人には、また今度何かお礼がしたくてね」

「お礼っすか?」

「棚瀬くんは何か欲しいものとかある?」

「あー‥。食べるもの?」

「食べ物?」

オイ、と棚瀬に肘で突っつくもコイツは笑ってるだけだった。総理の前ですらこんな調子だから、ある意味すげー奴なのかもしれんが。

親父が言葉をまだ紡げていく。

「そうそう、ここの秘密警察の組織ってさ、もう上の人たちが今居ない状態なんだよね?」

「え、えぇ。なんだか坂崎が総理に頼んだかなんかで綺麗さっぱり全員クビにされたとか‥」

「そうなの。幸ちゃんからの頼み事が嬉しかったから、すーぐに片付けさせちゃったの」

「ホントに総理は坂崎のことを愛してるんですね‥」

「だって可愛い息子だもん!あ、でね、俺からの提案なんだけどぉ‥今日からうちの幸ちゃんが秘密警察の最高責任者になって貰おうかと思って!」

「はっ?俺が!?」

「ダメだった‥?」

突然すぎねーかソレ!?

驚いたのは俺だけじゃなく、他の五人だって同じだ。全員が「えっ!?」なんていう反応と声を見せ、ビックリしてるじゃねーか。

ちょっとだけ心臓がドクドクしているが、俺なんかよりもっと他になるべき人物がいるだろーが‥!

「ぼ、ボスは!?関口の方がぜってー務まるって‥!」

「さっき関口くんにね、メール送ったんだ。まだ返って来ないからあの人のことだろうし、棚瀬くんの方に送ってると思うんだ。ちょっと見てくれない、棚瀬くん?」

「はっ、はい」

外に出る時はよく左腕に着けている簡易パソコンを開き、慌ててメールを確認している棚瀬。来ていたメールの中にボスのもんがあったのか、指で操作しながら「ありました」と答えてきたあとは、メールの内容を読み上げてくれる。

「えっとー‥。“責任取りたくないから、坂崎やって♡”‥ですって」

「あんにゃろぉ~~~‥!楽な方に逃げやがってーー‥!!」

「じゃあ、幸ちゃんに決まりっ!」

「勝手に決めんなよオイッ!!」

「嫌なの?これからは幸ちゃんの思った通りの組織に変わるかもしれないのに‥」

「‥‥それもそうだが」

だから親父は俺に最高責任者を任せたってことなんだろ?

それは分かっちゃいるが、流石にコレは荷が重すぎねーか‥?俺は今やっている仕事が好きだし、組織の中に引きこもってるつもりもない。

最高責任者になっちまうと、コイツらの面倒だって見切れない可能性だって出てくるかもしれん。そしたらリーダーとして失格だ。

第一、コイツら‥棚瀬を除いた四人はまだまだ俺が付いていなきゃチームもまとまらん。桜井と高見沢に任せたいっちゃ任せたいが、コイツら二人だって到底俺たちには実力でじゃ追いつけない。しかも吉田と鈴木は新人だしで、どう考えたって四人だけなんてムリだろ。

‥なんて考えながら四人が居る方へ振り向けば、高見沢が「やれば?」と軽い口調で促してくる。

「え‥?」

「坂崎ならやれるって。不満だらけだったんだろ、この組織が?やっと綺麗になったんだから、今のこの綺麗な内にお前の持つ考え方や正義感を下の奴らに教え込めよ。そしたらもっともーっと優秀な人材が出てくる」

「高見沢の言う通りだ。俺たちも出来る限りのことは協力するよ。今よりもっとすげー組織にしてやろーぜ。な?」

「そうですよ!坂崎さんなら出来ますって!僕たちも変わらず坂崎さんにどこまでも着いて行きますから!」

「今ここで変えなきゃ意味がないっすよ!坂崎さんのその考え方、俺たち秘密警察にとってはめちゃくちゃ大事なことじゃないっすか!」

「‥‥俺がなっても、いいのか?」

少しだけ弱気になっていると、隣に居た棚瀬が背中をポンと叩いては後押ししてくれた。

「坂さんならやれますよ。キツい時があれば、俺がサポートに入りますから。あの子らの言うように、この組織をもっともっと良いものにしていきましょうよ」

「けど、最高責任者なんてやってたら、今のチームにずっといられんくなるかもしれんのだぞ‥?」

「なーに言ってんすかぁ!坂さんのことだから、何がなんでもこのチームから離れることはないでしょー?あの子たちが俺たちのようになるまで、ちゃんと見届けたいんでしょ?」

「そりゃあ‥そうだが」

「このチームが好きなんだったら、坂さんはこのチームの為にも最高責任者になるべきです。俺たちの動きやすいよう、仕事しやすいように変えていくのが貴方の仕事じゃん?‥ほら、やってみなきゃ分かんないんすから!なんでも挑戦挑戦!」

「あ、あぁ‥」

棚瀬の勢いに押し負けて頷いてしまったが、親父はそんな俺を見て「じゃあ、今日から幸ちゃん頑張ってね!」なんて言ってきやがる。あのなぁ、全員軽く言うけど最高責任者って、すげープレッシャーなんだぜ?分かってるのかよソコ?

とは思いつつ、五人が五人とも俺が最高責任者であるべきだという声を聞いたせいか、少しはやる気が出てきた。

そうだよな。コイツらの仕事しやすいように俺がこの組織を変えていかなくちゃならねぇ。ここでまた他の奴に譲れば、どんなことが起こるか分からんしな。

だったら‥‥

「分かった。なら俺が最高責任者になって、この組織を変えてやろうじゃねーか。必ずここを優秀な奴らで埋めてやる。そして、今と変わらずに五人が俺に着いてきたいと思えるリーダーでもあり続けるように頑張ってみるわ」

「それでこそ坂さん!」

「言われなくても着いていくぜ、リーダー!」

「坂崎かっこいーー!!」

「いつまでもどこまでも着いて行くっす!」

「そしていつか、僕たちも坂崎さんのような秘密警察になりたいです!」

「‥‥ありがとな、おめーら」

こんなにも俺は慕われている。

そう思えた時、傍に居た親父が物凄く嬉しそうな顔して俺たち六人を眺めていた。

‥親父。

「幸ちゃんはホントに自慢の息子だよ」

「‥けっ。用件はそれだけか?もう帰れ、変態親父」

「えぇ!パパそんなに変態じゃないよ!」

「おい、SP!サッサと連れてけ!」

「あ、待ってってば幸ちゃん~!ちょっと離して、まだ幸ちゃんと一緒に居たぃ‥」

「今日も国会で仕事せにゃならんのだろ?早よ行けや」

「あぁ~ん、幸ちゃーーん!」

俺の名前を叫びながらSPに連れて行かれた親父。あー、鬱陶しかった‥

そして親父がいなくなったあとのこの場の空気。棚瀬以外の四人がジトーーッと俺をジト目で見てくるのが分かる。

‥言いたいことは山ほどあるだろうが、もういい。聞きたくねぇ!

「あ、逃げるな坂崎ぃ!!」

「坂崎‥じゃなくて、幸ちゃーん!」

「その呼び方やめろぉおおおッ!!」

「坂さーん、じゃなくて‥幸ちゃん待って下さいよーっ!」

「こ、幸ちゃっ‥」

「幸ちゃん‥‥いや、坂崎さん待って下さい!」

「うるせえぇぇえええ!!!」

あぁああーーーー!!!

だから嫌なんだよこの呼ばれ方はーーー!!!!

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